スタジオ・ステアーズ放送開始
2025.02.25
再編でスッキリとした文体を誤字脱字の修正中。
ほんの少しだけ手を加えるつもりが大掛かりな再構成になり、少し後悔してます。
殆ど、書き直しみたいな…。
前より良くなってますように。
――スタジオ。
「3、2、1――キュー!」
フロアディレクターの無言の合図。
カメラの赤いランプが点灯し、世界中へと映像が解き放たれる。
「さぁーっ!!今年も始まりましたっ!!進化学園新入生入学セレモニー、いよいよ開幕ですっ!!」
「放送は今年も我らがスタジオ・ステアーズがお送りしまぁーす!!」
ポップでカラフルな秘密スタジオ。
中央に立つのは、白いスーツを着こなした長身の金髪男性。そして、その隣――
アッシュカラーのショートヘアに、ぴんと立ったキツネ耳。
さらに、背後でふわりふわりと揺れる四本の尻尾。
キツネ獣人の美女が、カメラに向かって愛らしく手を振ると、尻尾まで同調するように左右へ揺れた。
「ここ、エボアイランド・シティのシークレットスタジオから、中継基地を経由して全世界へお届けしてますよぉー!みんな観てるぅー!?」
「スタジオ・ステアーズ!!おなじみ俺様が!ジェームズ・ギャラクシーだぁぁぁ!!」
金髪の男――ジェームズは、無駄にキラキラした笑顔で胸を張る。
「ちなみに俺、年中無休で彼女募集中だからな!!応募はここ!このQRコードから!ほらここ!ここな!」
画面右下を指差し、コミカルに腰を振る。
「出てませんけどねぇ〜?」
即座にツッコむキツネ美女――フォックスのミサト。
「というわけで!今夜もプリティーなアシスタント、ミサトでーす♪」
カメラ目線で、上目遣いの完璧な営業スマイル。
「マジかよ!?なんで出してねぇんだ!?スタッフぅ!!俺の彼女募集QRコード出せって毎回言ってるだろ!?」
――ガタンッ。
突然。
ミサトが無言で立ち上がる。
そして背後から――
どう見てもスタジオにあるはずのない、禍々しい巨大スレッジハンマーを軽々と持ち上げ、肩に担いだ。
「ジェームズ」
笑っていない。
「毎週毎週、そのくだり。ウザい」
バキッ。バキッ。
指を鳴らす音が、やけに重い。
「ファンからも苦情来てる案件なんだけど?」
「ご、ごめんなさい」
ジェームズ、秒速で謝罪。
「生放送で公開処刑はやめような!?そのハンマー置こう!?ね!?」
「寒いギャグを隣で聞かされる身にもなって」
「それ以上本音言うのやめて!?おじさんのHPゼロになるから!」
スタッフ三人がかりでハンマーを回収。
それを見送りながら、ジェームズはぽつり。
「……なんであんなの軽々持てるんだよ」
☆☆☆
「では、気を取り直して進行いきましょう!」
ミサト、即座に営業モード復帰。
「ゲート付近で動きがあったようです!こちらをご覧ください!」
背後の巨大モニターに映し出されるのは――
夜のエボ・シティ東口。
そして。
全速力で駆け抜ける、二人の少年。
「ねぇ見て見て……美男子が二人で寄り添って……汗が飛び散って……ああぁ……青春のBLの香りがぁ……」
頬を染め、モニターにすり寄るミサト。
「近い近い近い!離れろ!!」
ジェームズが必死に引き剥がす。
「いやーん、もっと近くで見たいのに」
「座れ!!ほら、ゲート通過するぞ!」
映像の中で――
二人がゲートを越えた瞬間。
――バンッ!!
巨大クラッカーが炸裂。
紙吹雪とリボンが夜空へ舞い上がる。
同時に――
ファンファーレ。
そして警報。
狼狽し、全速力で走り出す二人。
「可愛い!!」
ミサト、完全に観客。
「当然だ!ライセンス無し侵入者には警報が鳴る!ぎゃははは!逃げろ逃げろ!」
カメラが追う。
影から影へ。
建物の隙間を縫うように進む、忍者のような動き。
「無駄がない……まるで一流の暗殺者ね」
ミサトが低く呟く。
その時。
画面の後方に――
無数の影。
「来たぁぁぁ!!第一関門!!」
ジェームズが叫ぶ。
「九識製セキュリティ・ドローン《ガードボット》!!違法侵入者自動捕獲機だ!!」
四足。車輪付き。無音で迫る機械の群れ。
「逃げ切れるか!?」
少年たちは、市街地を駆ける。
まるで――機械の群れを引き連れたパレード。
「にしても!」
ジェームズが身を乗り出す。
「先に侵入したのは首席・猫柳二夜と四席・天草天満だけか!?唯一の楽しみの女子はどうした!?」
「唯一の楽しみとか言うな」
ミサトが呆れながら端末を操作する。
「……待って。東口って、Cランク警備が二、三十人いたはずでしょ?」
カメラがゲートへ戻る。
――誰もいない。
さらにルートを遡る。
駐車場。
トイレ前。
そこに――
武装した男たちが、二十人以上倒れていた。
「……」
スタジオが一瞬静まる。
「……二人でやったのか?」
ジェームズが低く呟く。
「……不意打ちでも、この人数は異常よ」
「まぁおっさんが何人倒れようがどうでもいい!女子は!?」
「まだ侵入してないか、警備を回避して潜入したか」
「どっちだ」
「私に分かるわけないでしょ」
沈黙。
そして。
「ぎゃははは!!」
ジェームズ爆笑。
「まぁいい!ここでセレモニーのルールをおさらいだ!」
巨大パネルに都市図が表示される。
「塔の直径は六キロ!市街地は二十キロ!外壁は高さ二十メートル!」
ミサトが続ける。
「外壁は高圧電流。監視塔多数。空中侵入も警報作動」
「そして塔の外壁十メートル以上に接近すると――」
ジェームズが笑う。
「対空防衛システムが起動する!ミンチだ!!」
軽口だが、笑えない現実。
「女子たちも外から侵入してるはず……女子ぃぃぃ!!どこだぁぁぁ!!」
突然カメラに顔面アップするジェームズ。
「世界が美女を求めてるんだよぉぉぉ!!」
モニターに映るのは――
まだ姿を見せない、アリスと安綱のプロフィール。
「……キモい」
ミサト、真顔。
「すまん」
即謝罪。
咳払い。
「今年は特別なんだ」
四人のプロフィールが並ぶ。
「天然ギフト持ちの入学が解禁された」
ミサトが目を見開く。
「……初期ステアーズの子供たち」
「そうだ!!進化の塔解放の生き残りの血だ!!」
そして。
ニヤの3D映像。
銀髪の少年。
「十四歳で首席。神眼系ギフト……レア中のレアだ」
次に――
天満の映像。
眼鏡の少年。
「父はSSランカー《真狼》……おぉ!あのレジェンドの息子か?」
ジェームズが続きを読もうとした瞬間。
――ドンッ!!
ミサトが飛びつき、口を塞ぐ。
「ダメ!!それ言っちゃダメ!!」
「フガッ!?」
窒息寸前。
「視聴者は知らないまま見るべきなの!」
「ムグッ……!」
顔が紫になる。
数秒後――
「ぶはぁぁっ!!」
ジェームズ復活。
「殺す気か!!」
息を荒げながら立ち上がる。
「……確かに、これは秘密にしておこう」
ミサトが微笑む。
「その方が面白いもの」
二人はモニターを見る。
そこには――
無数のガードボットに追われながら、それでも止まらず走り続ける少年。
天草天満の姿があった。
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