スタジオ・ステアーズ放送開始
2021.1.24
再編にエピソード追加しました。
ほんの少しだけ手を加えるつもりが大掛かりな再構成になり、少し後悔してます。
殆ど、書き直しみたいな…。
前より良くなってますように。
3、2、1、キューで番組スタッフがカメラ前のMCに合図を送る。
「さぁー! 今年も始まりましたっ!進化学園新入生入学セレモニーいよいよ開始ですっ!! 」
「今年も放送はスタジオ・ステアーズがお送りいたしまぁーす!」
ポップでカラフルなスタジオで、金髪を一つにまとめ、スラっとした体型で白いスーツを着た金髪の中年男性と、オレンジ色の入ったアッシュカラーのショートカットのキツネ耳の美女がカメラに向かって手を振る。
キツネ美女に限っては4本の尻尾も手とリンクして、可愛らしくフリフリして見せる。
「スタジオ・ステアーズはエボアイランド・シティ内にあるシークレットスタジオから、中継基地を経今夜も全世界に向けて放送してます!皆さーん観てますかぁー?」
「スタジオ・ステアーズ!!俺がおなじみのジェームズ・ギャラクシーじゃぁぁぁぁっ!!!今夜もヨロシクッ!!あ、ちなみに俺ってば年中無休で絶賛彼女募集中だから、じゃんじゃん応募待ってるぜ!応募先はここな!ここのQRコードからな!応募待ってるからさ!」
コミカルな動きでココな、ココ!と画面右下を指す。
「んなもん出てませんけど〜!と、ツッコミを入れつつ!今夜もプリティーなアシスタントのフォックスのミサトでーすぅ〜」
慣れた感じでジェームズをスルーして、ミサトは可愛らしく上目遣いでカメラを見て自己アピール。
「マジか!出してねぇーの?なんで?スタッフ!いい加減俺の彼女募集のQRコード出せって言ってるだろー!ホントに募集してんだからさ!頼むって」
ガタンッ
ミサトは無言で立ち上がり、背後からその女性らしい身体に不釣り合いな凶悪で禍々しい巨大なスレッジハンマーを軽々と持ち上げ方に担ぐ。
「ジェームズ、毎週毎週そのくだりウザい!ファンからも苦情来てる案件だからいい加減ヤメようか?」
鬼の形相で、ハンマーを担いだまま指をバキバキと鳴らしてプレッシャーを与える。
「うっ、ご・・・ごめんなさい、生放送で公開死刑は勘弁な・・・うんうん・・・そのスレッジハンマーは置いておこうね、ね…」
「寒いギャグを側で聞かされる身にもなってよねぇ、面白いんならまだしも…」
「分かったから、それ以上本音を吐露するのやめようね。おじさん凹んじゃうからさ、あとスタジオに武器持ち込むの無しな」
スタッフが3人がかりでミサトからスレッジハンマーを受け取ると、重たそうにスタジオの外へはけて行く。
それを、なんであんなものを軽々と持てるんだろうね?と呟きながら見守るジェームズだった。
「ではでは、気を取り直して番組進行始めようかね!!」
「早速ですが、ゲート付近で動きがあったみたいですね!こちらをご覧ください!」
背後の巨大モニターに、エボ・シティの東口のゲートから猛ダッシュする、ニヤと天満の姿が映りだされている。
「ねぇ見て見て!美男子ふたりが寄り添ってぇぇぇん・・・汗が飛び散るぅぅぅっぅ!嗚呼ぁ青臭いBL臭がたまらなく唆るわぁ〜」
頬を赤らめ、モニターに映る二人にすり寄ってうっとりなミサト。
「ミサト、モニターに近づき過ぎな。ちょっと離れようか・・・ほらっ・・離れろってっ!!」
背後のモニターにしがみつくミサトを、両手で力いっぱいを引きはがす。
「いやーん、もっと近くで見させてよ」
「いいからさ!座ってろって!ほら、二人がゲートをくぐるぞ!いよいよセレモニースタートだ!」
二人はまるでテーマパークの入り口の様な門をくぐり、改札口を警戒しながら進んでいく。
ゲートの柵を乗り越えた所で、バンっと巨大なクラッカーが紙吹雪とリボンを吐き出しながら炸裂し、派手なファンファーレとけたたましい警報音が同時に鳴り響く。
爆音に驚いた二人は、狼狽した様子で大慌てで走り出す。
「驚いてる顔も可愛い!」
うっとり顔でモニターを見つめるミサト。
「ライセンスの無い彼らがゲートを抜ければ警報が派手に鳴るのは当然だ!ぎゃはははは!さぁ、驚いた二人はすごいスピードで走り出したぞ!追え追えカメラ!」
天草天馬と猫柳二夜は人目を避け、忍者さながら建物の影から影へと進化の塔を目指して高速移動していく。
「無駄の無い良い動きね、まるで一流の暗殺者みたい」
ミサトが見つめるモニターは、エボ・シティ内に仕掛けられた無数の隠しカメラを駆使して、次々と画面を切り替えながら二人の動きを追跡していく。
すると、高速で移動する二人の背後を追う様に無数の影が迫る。
「さぁ、第一関門!エボ・シティ内の至る所に配置されている四足型のセキュリティ・ドローンのお出ましだ!」
車輪が付いた四足型のドローンは列を成して二人を追尾する。
「九識製のセキュリティ・ドローン「ガードボット」ですね。違法侵入者の自動捕獲機です」
「さぁ!逃げ切れるか?大量のドローンが侵入者に追いすがる!!」
突然現れたドローンの集団に驚いた二人は、市街地を無数の四つ足のドローンに追い回される。
「まずは、セキュリティ・ドローンの「ガードボット」の追従をどうかわすかが問題だな!!セレモニー序盤で捕まると恥ずかしいぞ!」
まるでパレードの様にドローンの列を引き連れて市街地を逃げ惑う二人。
「にしても!先にゲートを通過したのは、今期首席の猫柳二夜と四席の天草天満だけのようだど、俺の唯一の楽しみのぉぉぉぉぉぉぉ女子はどうしたんだよ!?」
「唯一の楽しみとか言うな!――――――――。でも、そうね東口から彼らだけで侵入したようだけど…って!?ちょっ、待って東口って警備ステアーズがCランクが二、三十人配置してあったはずでしょ!?」
手元のモバイルで、二人のデーターを見ながら確認するミサト。
「カメラを!ゲート前から映して!」
ミサトの指示で、カメラ・ドローンが上昇して東口ゲートを俯瞰で見下ろす。
「オイオイ、あの二人、警備グループに先制攻撃仕掛けたのか?」
「不意打ちにしても、あの人数をふたりで!?まさか!」
さらに二人が通ってきたと思われるルートを遡ると東口ゲート前駐車場の看板と書かれた駐車スペース前の店舗やトイレがある辺りに、二十人以上の武装した男たちが倒れている様子が映し出される。
「みんな倒れてるんだから、ふたりでやったんだろうよ。見りゃ分かる!俺はおっさんが何人やられようがどうでも良いんだけどな!それより女子はどうしたんだ?美少女は⁉︎」
「そうね、当然女子チームもシティー内に入っていれば警報が鳴るはずなのよ、だからまだシティーに入っていないか?それとも警備に引っかからないで塔に潜入したか…のどっちかね」
「で、どっちなんだよ?」
真顔でミサトを見つめる、ジェームス。
「そんなの私に分かるわけないじゃん!」
真顔で見つめ返すミサト。
「だよなぁ、俺もわからねぇーし、ぎゃはははは!――――――――まぁーそれも含めて、ここでセレモニーのルールをおさらいしておこう!」
大きなパネルでシティーの見取り図を説明していく。
「進化の塔の直径は約六キロ、さらにその周囲を直径二十キロの市街地が囲んでいる。これがご存知エボ・シティだ。この市街地内のいたるところに侵入者対策は施されているんだな。まぁ、今から一足先に進入する天草猫柳コンビが詳らかにしてくれるだろう。でっ、出入り口のゲートは東西南北に四つ、高さ20メートルの外壁に囲まれているシティーに入り、二人は塔を目指す。塔も外壁同様入り口は東西南北にあるぞ!塔に侵入後、フロア1の中心部で各々のサインをして捕まることなく島から脱出、海上に停泊している進化学園所有のフェリーまで捕まることなく戻れたらセレモニーは終了だ。あと全員捕まっても終わりな」
ジェームスに続いてミサトがパネルの説明を続ける。
「しかし、塔に辿り着くまで侵入者に対してさまざまな防衛策がシティーには施されているの。外壁の上部は高圧電流が流れていて、100メートル間隔で監視棟が目を光らせているし―――――。」
「直接、空から市街地に潜入したとしても、着地した瞬間にライセンス未所持の不法進入は警報システムが必ず作動する様になっているなってるのよ。」
「さらに!空から塔自体に直接取り付くことが最も危険だぜ!高さ10mより上の外壁に接近すると塔独自の対空防御システムが作動する――――――――。こっちは人間が構築した防衛システムじゃないんから、侵入者は容赦ない洗礼を受ける事ぜ。ミンチだミンチ!まぁ、誰も肉片にはなりたく無いから、今時やる奴はいねぇーわな、エボ開拓当時は多くのバカが犠牲になった有名な話だ」
「そう考えると、男子チーム同様、女子チームも当然エボ・シティの外からの侵入を考えているはずよ」
「おおおぉぉぉーい!女子たちはどこ行ったぁーっ!? カメラ増やせぇぇぇぇ、島中探せよっ!!! 世界が美女を欲してるんだよぉぉぉぉぉぉ――――――――。男はもうお腹いっぱいだってよぉぉぉっ!!!!」
突然立ち上がり、興奮してカメラを掴みアップで叫ぶジェームス。
「美女がやられちゃうの、みんな期待してんだよぉぉぉぉっ!!!見ろよ、今年の新入生二席三席は美人だろぉぉぉっ!!!!違う意味で期待してんだよ、俺はぁぁぁっ!!!!!」
モニターには、まだ姿が見えない、アリスと安綱の等身大映像とプロフィールが映し出される。
「・・・・・・・・・マジでキモイから、そういうの」
冷たい目でジェームスを見つめるミサト。
「すまん、ちょっと興奮しすぎた・・・」
周りの空気を読んで、素に戻り着席。
「オッホン、それより今年の一年生は特別なんだってよ」
咳払いして、ミサトを冷めた目を避けるように話題を変える。
女子二人の映像に、天満と二夜の映像も加えて映し出す。
「彼らだけじゃなく、今年の十期生はいよいよ天然のギフト持ちの生徒の受け入れが解禁したのさ!世界中から要監視付きのギフト持ちが多数入学を決めてるんだ!」
「ギフト持ちってことは、当然御両親が!?」
「そうっ!!進化の塔、解放当時の生き残りっ!初期のステアーズの子どもたちなのさっ!!ぎゃははははは、産卵に戻ってきた鮭のごとく、進化の塔解放初期の生き残りたちが残した子種が、この進化の塔へ戻ってきたんだってよっ!!」
「ふふふふ、子種が戻ってくるとかちょっとエロくないですか? 私いろいろ想像しちゃうわ」
あふん、とか言いながら恍惚の表情でモニターを見つめる。
「ミサト、想像だけにしておけよ、一応全世界放送だからスポンサーが怒るようなこと無しでたのむわ、話し振ったの俺だけど…」
ジェームスは口元に人差し指を当てて、ミサトにウインクして見せる。
「んじゃ、今夜の主役の紹介だ、まずは十期第一席猫柳二夜、身長170㎝の銀髪の美少年はなんと年齢は十四歳!?オイオイ優秀だなぁー飛び級かよ。」
スタジオに等身大のニヤの3Dの映像とプロフィールが浮かび上がる。
「両親は不明って、親を秘匿にするってぇーと政府絡みか企業のワークスチームのトップランカー辺りのご子息か?で、ギフトは神眼系の身体強化類…ほぉ、神眼、魔眼系ギフトはウルトラレアなギフトだな、年少の彼が首席なのも頷けるな。神眼・魔眼系は桁違いに強ぇーんだわ」
「続いて、第二席アリス・リデルさんと第三席渡辺安綱さんは登場してからプロフィールを発表しましょう!」
スタジオに天満の映像が現れる。
「んじゃ、第四席メガネのイケメンクールガイ、天草天満だな。年齢17歳身長175㎝、得意なのはスピードを生かしたナイフの連撃が得意っと・・・父親SSSランカー《真狼》!レジェンド級ステアーズ!マジか!!俺知ってるよ!って事は当然親譲りの天然ギフトは?うがぁっ!!!!」
資料を読み上げていたジェームスに、突然襲い掛かる様に飛びつき押し倒すミサト。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!キターーーーーー、ジェームス、これ言っちゃダメ、視聴者は絶対予備知識なしで見たほうがいいってっ!!」
手にしていたタブレットを放り出し、ミサトは大興奮でジェームスの口を塞ぎ叫ぶ。
「フガフガァ」
鼻もふさがれて顔色が紫になり、悶絶しながらスタジオのテーブルの下に沈んでいくジェームス。
「こんな面白い事、お姉さん絶対に言わせないんだからっ」
「ムグッ・・・・・・・」
チアノーゼで真っ青な顔になり、ジェームスはぐったりと沈黙。
「あれ、ピクピクって?死んじゃったかな」
「ぶはぁっ!!!!殺す気かっ!!!」
ジェームスは飛び起きて、コミカルに突っ込みを入れる。
「はぁーはぁーはぁー、一瞬お花畑で死んだばあちゃんが見えたぞ!!・・・何度も言うがスタジオでの公開処刑はやめようなミサト、子供たちも観てるんだからなっ、なっ?」
セットのテーブルに這い上がるとタブレットを拾い上げる。
「はぁはぁ、まぁ確かに、この能力は誰もが知ってるメジャーなギフトだ、メガネ君も含めて十期生たちのギフトについての発表は、今ここでは止めておこう、番組の面白味が無くなっちまう」
「そうそう!親でギフトでバレちゃったり、ここでは興ざめよね、みんなも検索しちゃだめよ!」
「ただ、ひとこと言わせてもらえば、メガネ君のこのギフト、使い方次第じゃ第四席に甘んじる玉じゃねぇーぞ」
「それかギフトを駆使して四席なら、上位三人は天満君より強いって事でしょ・・・面白いわね」
ミサトも興味深い表情で、唇を手で撫でながらシニカルに微笑む。
「ってことで、俺たちも視聴者同様、楽しませてもらおうぜ」
「そうね」
期待交じり表情で二人が見つめるモニターには、警備ドローンに追いかけまわされてる天満の姿があった。
読んでくださってありがとうございます。続きが気になった方はブックマーク、広告の下の☆☆☆☆☆から応援していただければ励みになりますので、よろしくお願いします。