恋の斬撃
高速で剣撃を避けるワーウルフを追従する。
自分の動きの無駄を最小限にして、供給される魔力の消費を意識して最短距離を最速で移動する。
刀を振るいワーウルフの肉体に刃が届く度、突き上げるような快感が波となって広がる。
この感覚は、ダメだ。
きっと、恋人とSEXする時、こういう感覚になるんだろか?
イヤ、違う。
これはもっとヤバい系のヤツだ。
ドラックがキマる?とか、中毒になる?みたいな違法系のエクスタシーだ。
人間辞めますか?的な…。
漠然とそんな事を想像しながら、私はこの麻薬的なエクスタシーと向き合い、背徳感を感じながらも無理やり力のコントロールを身体に覚えさせていく。
それにしても、ワーウルフになった天草天満は、どんなに負傷しても決して反撃せず逃げに徹して回復する。
優しいだけの甘ちゃんなのか、それともただの馬鹿なのか?
「はぁはぁーあっ・・くっ」
漏れる喘ぎ、自分の口からこんなエロい声を発するなんて、夢にも思ってなかった。
まぁ、目の前にいるのが二メートル以上の狼男だからなのか?自分がどんなエロい顔して刀を打ち込んでいたとしても、恥ずかしくないと・・・・相手は男性じゃなくて獣なのだと、無理やり意識を攻撃に集中する事ができる。
相手が普通に男の人なら、きっと顔から火が出るほど恥ずかしいなんてレベルじゃ済まされないだろう。
「私は恥ずかしさを、無視することを覚えたのだ・・・」
人間慣れてしまえば、どうにかなるのだ。
ただ、これだけ連続で打ち込む事を想定してなかったから。
彼を傷つけるたびに上り詰めるような快感が、再び私の意識を奪おうとする。
ダメ・・・。
もっと・・・。
さっきとは違う、まだコントロールできてる。
高速で逃げるワーウルフの姿を捕らえてる。
力が増して、私は更に人間離れしたスピードに達してワーウルフの懐に飛び込んだ。
振り切った刀身を逆刃に持ち替えて、振り上げる。
「虎切刀っ!」
光速で跳ね上がった刀身がワーウルフの右腕を両断、腕が宙を舞う。
振り上げた髭切を追うように、もう一刀膝切を体をコマの様に回転しながら振り上げる。
「影切っ!」
斬られた右腕の傷口を庇ってる狼男の左手を、今度は手首から切断。
「グアッ」
自身の回転を止めず、再び髭切の勢いそのままに右大腿部に深々と斬りつけ。
二刀目の膝切で両断。
ブシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!
足の付け根から鮮血を噴き出しながら、ワーウルフの巨躯は倒れのたうち回る。
噴き出した鮮血を浴びながら、私は震える。
あと、一刀!
あと一撃で・・・・。
イケそう…。
「あはぁっ」
頬が熱い。
下半身が小刻みに痙攣してる。
ダメ・・・・我慢できない。
刀を握った両手に力が入る。
倒れた、ワーウルフの頭部めがけて袈裟切りを放った瞬間――――――――。
「そこまでだっ!!」
私の攻撃を突然乱入してきた大人たちが、身を挺して飛び掛かって強制終了を告げる。
「えっ!何っ?」
刀を振りかぶったまま、数人の男にタックルされ転倒する。
「ちょっ・・・っ!何するんです・・か・・・」
邪魔されてイラついた私は抗議しようと起き上がる。
試合を続行しようと踏み出した私の視界に映ったのは、両腕を失ったまま血だらけの天満が意識を失い、女性教員に抱きかかえられていた。
「変身が強制解除されてるっ!!エリクサーだ!早く!!」
教員が慌てながら叫ぶ。
「なんで?天満に戻ってるの?」
「限界値だよ、いくらライカンスロープと言えど不死身ではないんだ、ギフト無しの君がここまでワーウルフを追い込むとは思わなかったよ」
私を制止した男性教員の一人が、鼻息を荒くして興奮しながら呟く。
「いや・・・私たちは・・別に」
戦っていたわけじゃない。
「おめでとう!君の勝ちだっ!!」
男性教員は立ち上がり、私の手首を握り引き上げると、そのまま腕を掲げて勝ち名乗りを挙げる。
「勝者 渡辺安綱ッ!!」
「私が三席・・・」
私の目の前で天満が担架に乗せられて運ばれていく。
私の勝ちなんかじゃない。
私はただ天草天満の優しさに甘えて、一人前にしてもらっただけじゃん。
あの日の彼のおかげで、私は「渡辺」なれた。
私は戦える。
二刀をちゃんと扱える。
もう、大丈夫。
私は、鬼を斬る。
418体の鬼を斬って、「渡辺」を私の代で終わらせるんだ――――――――。
―――――――― で、やっと獣界門。
私の目標は、はるか十階層上にある「地獄門」鬼が闊歩すると言われる階層。
「私には、力が必要、もっと高みを目指すために!」
ニヤ君より早く。
アリスより気高く。
そして、天満より強く。
「次、第三席 渡辺安綱ッ!」
ナインのアイザックに呼ばれる。
いよいよ私の番。
覚悟はできてる。私は大丈夫!裏返ったりしない。
巨大な朱色の鳥居を見上げる。
これが何なのかなんて知らない。
なんで人間にギフトを授けるのかとか関係ない、私は私の為に・・・。
深呼吸して、私は大きく一歩を踏み出す。
そして、暗転。
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