↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/89

フロア10 獣界門其の四 オヤジの口癖


 三色のフォトンソードがワータイガーの体躯を切り刻む直前――――――――。

「やめろぉぉぉぉぉぉっ!!!!」

 赤髪のパク・シフが喉が裂けそうな叫び声をあげて獣界門を走り抜け、フォックスたちの前に両手広げて立ちはだかる。

「あいつっ!!死ぬ気かっ!!」

 最悪のタイミングだ!生身で光刃の前に身を晒したところで、盾になるどころか無駄に命を散らすだけだ。


 しかし、パク・シフが両断されることはなかった。


 狐のお姉さまたちがフォトンソードを振りかざしたまま、空中で静止している。

「くぅぅぅ!」

「ぐぎぃぃぃ!」

「なんなんだよいったい!コレは!」

 三人が驚愕の表情で、空中から赤髪のパク・シフを睨みつける。

「こいつ、念動力を!?」

「クソッ束縛力が強いっ!動ません!」

 空中で縛られた様に身動きできない刹那さんといずなさんは、同様に拘束された銀子さんに目配せする。

「カッカッカッ!! 面白い!私らを止めたいって思いが、そのギフトを呼んだみたいだね」

 銀子さんは邪悪な笑みで艶っぽく舌なめずりして、眼下のパク・シフを値踏みするように睨む。

「さぁ、どうしてくれようかね?」

 


「天満君、あれって・・・止まってるわ・・よね?」

「あぁ、完全に宙に浮いてるな」

「わぉ、PKだよ!サイコキネシスでお姉さんたちの速攻を止めたんだっ!!」

 変身したキム・ヨンウを助けたいからって、獣界門通って得たギフトが念動力とか、そんなの都合良すぎじゃないか!それともギフトって、俺たちが知らないだけで、実はそんなものなのか?


「でも、あれだけじゃ、狐のお姉さんは止らないよ」

 ニヤの指摘通り、銀子さんは歯ぎしりしながら宙で身もだえる。

 力ずくで拘束を解こうとしている。

「ふっ・・ふざけんな!ガキども!!お前たち減点100だっ!!」

 減点100って、どんなペナルティがあるのかわからないが、力めるはずがない空中で、銀子は呪縛を力ずくで打ち破ってしまう。

 

 そして何事もなかったように着地すると、首をゴキゴキと鳴らし鬼の様に怒り狂った形相で構える。

 仕切り治すように、フォトンソードの切っ先をワータイガーに向けて、一直線に飛び込む。

 両手を広げたまま立ち尽くすパク・シフを完全に無視して、銀子さんはゆっくりと立ち上がったワータイガーに肉迫。

 新鮮な肉の触感を求めて、四本の光刃が高速で繰り出す。

「ヨンウはやらせない!!」

 両手を突き出して叫んだのは、パク・シフに続き獣界門を抜けた金髪のリ・ミンソン。


「なっ!!?」  


 ワータイガーに深々と突き刺さるはずの光刃の切っ先は、半透明の六枚の花弁によって阻まれた。

「なんだ!コレは!邪魔をするなぁ!!」

 眼前に展開された花の様な盾に向かって、光剣を何度も振るう。

「今度は守りたい思いで結界を生んだか!!?まったく女冥利に尽きるなーオラァァァァ!!そういうのいけ私ゃいけ好かないんだよっ!」

 獣のように息を吐いて、艶のある笑みを浮かべながら、光剣の連撃を半透明の盾に攻撃を叩きこむ。

 口調は荒いが、どこか機嫌が良さそうに見えるのは気のせいだろうか?口元が緩みっぱなしだし。

 


「見て!あの盾!フォトンソードを弾いてる、あれは結界?デフレクターかしら?」

 アリスは光刃の攻撃を防ぎ続ける、花弁の盾の強度に驚愕している。

 韓国組の二人の涙ぐましい防戦を見つめ、俺はある可能性を見出した。

 二人のギフトなら、あの技が決められるのではないないか?と。


「俺さ、アノ暴走止められるかも?・・・・止めると言うか、強制的に人の姿に戻せるかもしれない」

 パク・シフとリ・ミンソンのギフトがあれば、かなりの確率で成功するはずだ。


「天満!あの暴走虎人間を元に戻せるの?さっきの白狼はやらなかったのに?女の人だから助けてあげちゃうわけ?それは下心だね!」

「違うわいっ!!」

「何?男同士で面白そうなこと話してるのよ」

「天満が、アレ元に戻せるって」

 ワータイガーは受けたダメージからすっかり回復したようだが、必死に身を挺にして守ってた仲間に攻撃を繰り出す始末だ。

「完全に見境なしだな……アレ」


 大虎はパク・シフとリ・ミンソンを吹き飛ばし、次にフォックスの面々を相手に大暴れだ。

「天満ぁ、ホントにあんなの止められるの?」

「そうよ!それならなんで、さっきの白狼君助けてあげなかったのよ?天満くん、男は助けないって主義だった?」

「だから、違うって!!」

 どんな主義だよ!!アリスのかなり偏ったフェミニスト扱いに軽くショックを受ける。

 正直なところ、助けなかったのではなく、助けられなかったのだ。


 俺がこれからやろうとしているのは、俺が自分のギフトをコントロール出来てなかったガキの頃に、散々オヤジに喰らってた技だ。


 俺の場合ギフトから生じる破壊衝動、暴力衝動にしょっちゅう意識を支配されて、自我を失って暴れ始める度に、オヤジが俺の衝動をリセットするのに使っていた方法だ。


 はたして暴れるワータイガーにも有効かどうか?


 ただ、可能性があるのなら、成功する確率を可能な限り上げておく必要がある。


「いいかニヤ、俺は今から狼男に変身するから、パク・シフとリ・ミンソンの二人に伝言頼む」

 変身したら喋れないからな。

「正直、今からやる技は俺一人じゃ決めれない中途半端な物だ。溜めに時間がかかるうえ、対象の動きが止まってないと決められない、だから、お前たち二人も俺に力を貸してくれ、頼む!」

 アリスは俺の申し出に少し驚いた顔を見せた後、表情を綻ばせながら、俺の顔をいたずらな瞳で見上げる。

「ふーん、いいじゃない、自分に何が足りてないか理解し、素直に助けを求められる天満くんのそういうところ、私好きよ」

「なんかよくわからないけど、天満がやる気出してるなら、面白そうだし、俺何でも手伝うよ!!」

 ニヤはまるで、いたずらを企む少年のような瞳をキラキラさせて快諾する。

「すまん、助かる――――――、まずは、だな・・・・」

 

 

 アリスとニヤに、大まかな流れを説明する。

 これで成功率は更に上がったはずだ。これが成功すれば、さっきの白狼も同じ様に戻せるかもしれない。

 まだ確率の話しだけどな。


 ふと、クソオヤジの口癖を思い出す。


「狼の強みってのは、類稀なスピードや、鋭利な牙や爪じゃねーんだ。狼の強みってのは《群れ》だ!どんなに優れた個でも、統制と連携の取れた群れには敵わない。だから弱ぇお前はまず仲間だ!エボで生き残るには、未熟なお前をフォローしてくれる《群れ》を作れ」

 とにかく《群れろ》と、いつも一匹狼気取ってた群れとは無縁のオヤジは、口を酸っぱくしながら俺に言い聞かせていた。

「無敵の俺様は一匹狼でいいのさ、お前は弱っちいから《群れ》でまず必要とされる男になるんだな…まぁ、自分のギフトもろくにコントロールできてないうちは、ただのお荷物だけどよ」



「アレは、お荷物って言うより、完全に脅威になってるけどな」

 完全に復活したワータイガーは、フォックスにシャオロンやナインの面々を相手にたった一匹で大立ち回りだ。

 時折、例の黒いレーザーが放出されると、石材でできた舞台を溶解しながら曲線を幾重にも描いた。

 先行したニヤは黒いレーザーを掻い潜りながらパク・シフとリ・ミンソンと接触する。


「ホント、そういうところキッチリしてるわよね」

 アリスは正座して脱いだ服を畳んでる俺を見て、クスクスと笑う。

「笑うなよ、ワーウルフに変身するためのこれは通過儀礼みたいなもんなんだからさ…」

 伸縮スパッツ一枚になり、メガネを外す。

「アリス、後は頼むな」

「任せて!天満くんも頑張って!」

 俺の背中をポンと叩いて、アリスは舞台上に上がる。


「さて、始めるか…」

 俺は自らの中に潜む、暴力と破壊の衝動と向き合う。

 俺はこの野生の塊をコントロールして初めてライカンスロープとなるのだ。コレが出来なければ、キム・ヨンウ然りそれはただの《獣人》として大人たちに処理されてしまう。

 俺は運良く先天的にギフトを得て生まれ、ギフトの扱いに長けたオヤジがいたからこそ、幼少期くら試行錯誤出来たわけだから、朝の講堂でシャオロンが言っていた《運》ってのが、まぁ俺にはあったんだろうと思う。

 今日、運悪く《獣人》になってしまったキム・ヨンウにとってさ、俺がここに居たおかげで元に戻れるのなら、それって《運》が良かったって事になるんじゃないかな。

 ワーウルフに変身が完了して、改めてワータイガーを観察する。

 明らかに俺よりデカいな。

 まぁ、良いけどさ……。


 さて、手筈は整った。


 俺ひとりなら全く無かった可能性を、仲間が可能な限り成功により近い形に持って行ってくれる。

 そう仲間を信じて準備を整える。


 両足を開き、腰を落とし全身の筋肉に力を溜める。

 筋肉繊維を振動させ、その振動が繊維から筋肉組織へと共鳴し振動が波動に変わりそれが全身へ波となって広がる。

 

 技の名前は《ゆらぎ》。


 全身の筋肉の超振動で発生した超音波で、鋭利な爪は超音波振動カッターとなり、握った拳は相手の肉体の内部から破壊する衝撃波を発生する。

 狙いは、ワータイガーの頭部。

 《ゆらぎ》でできた衝撃波を両手で左右から打ち込み、脳を高速でシェイクしてドロドロに溶かす《虚心合掌》という《ゆらぎ》からの派生技で、破壊した後に超回復でリセットするライカンにしか使えない超荒技だ。


 人間なら即死は免れないが、バンパイア並みの再生力があるライカンスロープなら、例え脳を溶かされたとしても死ぬ事はなく、首さえ繋がっていれば高速で再生される脳は暴走する前の正常な脳に戻る。


 脳が正常に戻れば《獣化》は解除され、彼女は元の姿に戻るって寸法だ。


 キィィィィィィィィン と耳を劈く高周波が発生し始めたら溜めは十分だ。

 行くぜ、キム・ヨンウさんよ!


 ワーウルフに変身した俺は、躊躇わずワータイガー目掛けて跳躍した。



読んでくださってありがとうございます。続きが気になった方はブックマーク、広告の下の☆☆☆☆☆から応援していただければ励みになりますので、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。