オジサマと青年
2026.02.25
大幅な改編してます。エピソード追加しました。
ラノベっぽく改変中。
「オイッ!メガネェ!!」
――鼓膜がビリッと震えた。
「テメー……俺たちのことナメてんのか!?」
……は?
俺、何かしたっけ?
「いや……」
俺は眉をひそめる。
「メガネをかけてるだけで“メガネ”呼ばわりっすか?」
冷めた目で男を見る。
第一印象で人を分類するタイプだな。苦手な部類だ。
男の顔には、縦横無尽に走る無数の傷跡。
いかにも歴戦の戦士――という雰囲気だが。
問題はそこじゃない。
その頭部。
丸い動物の耳。
ぴくぴく動いている。
……ハイエナ系、かな。
つまり――
獣人型ギフト保持者。
本土では殆ど見ないが、この島ではこのタイプの獣人の方が人口が多い。
エボに来たんだなぁーと、改めて思い知る。
「……んだぁ?その口の利き方は?」
男の目が細まる。
「ナメてんのか?アァ?」
声はドスが効いている。
普通の高校生なら腰を抜かしているだろう。
だが。
正直――
耳が可愛い。
怖さ半減どころか七割減である。
「ナメてませんよ」
俺は肩をすくめる。
「現状を確認してるだけです」
「ガキが……!」
男の背後では、武装した連中が半円状に俺たちを囲んでいた。
ざっと――三十人以上。
その多くが、犬耳、猫耳、狼耳、熊耳。
まるでテーマパークのカチューシャ軍団だ。
……いや違う。
コスプレじゃない。
進化の証だ。
進化の塔――エボリューション・タワー。
あの塔の階段を登ると、人は《進化》するのだ。
詳細は未公開。
だが結果だけは、世界中が知っている。
牙。
爪。
嗅覚。
筋力。
反射神経。
――そして《ギフト》。
犬型なら超嗅覚。
猫型なら俊敏性。
熊型なら圧倒的筋力。
猛獣系は特に当たりとされる。
そして、ごく稀に。
動物の枠を超えた――
常識外れの能力者も稀に存在する。
その殆が上位ランカーだ。
ステアーズ。
塔を登る者たちの総称だ。
俺たちが目指す存在。
「……で?」
傷の男が睨む。
「なんで侵入者が、警備の集合地点に降りてきてんだ?」
ああ。
それね。
俺も知りたいっす。
本来、セレモニーのルールでは、俺達侵入者役は島外縁から潜入するはずだった。
なのに今俺は――
警備役の詰め所のど真ん中にいる。
理由は一つ。
後ろの建物――公衆トイレ。
そこにいる。
元凶。
改めて自己紹介しよう。
俺の名前は――
天草天満17歳。
進化学園入試――第四席。
未来のSランクステアーズになる男だ。
そして現在。
武装した獣人三十人に囲まれているメガネである。
……人生、計画通りにはいかない。
ちなみに。
俺には秘密がある。
切り札。
だが――
今は使えない。
いや。
使わない。
理由は色々ある。
本当に色々。
だから――
時間を稼ぐしかないな…。
それが最優先。
「まぁまぁ」
俺は両手を軽く上げる。
「落ち着いてくださいよ、先輩方」
「先輩だと?」
「はぁ、同業者になる予定なんで」
余計怒らせた気がする。
酒臭いし。
この人たち、勤務中に飲んでたな。
「理由は後ろの奴に聞いてください」
俺は親指で背後を指した。
その瞬間――
ガチャ。
トイレの扉が開いた。
「あー……」
間延びした声。
「スッキリしたぁ……」
極楽極楽、と言いながら出てきたのは――
戦闘服のサラサラの銀髪の少年。
整った顔立ち。
中性的な美貌。
そして。
圧倒的な存在感。
猫柳二夜14歳。
進化学園――今年の新入生のトップ、首席合格者。
「なんで天満、こっち来たの?」
第一声がそれかよ。
この状況見てて言ってるだろう。
本当に外野が視野に入って無い。
「まぁ、お前が心配だったんだよ」
俺は言う。
「それに、四人でクリアする約束だろ」
「俺は、一人で平気だよ」
ニヤは微笑む。
「俺、強いし、何ならここで証明しようか? 」
……言い切った。
その言葉に。
周囲の空気が凍る。
「このガキ……!」
傷の男が顔を歪める。
ニヤは完全に無視。
むしろ観察している。
値踏みするように。
そして――
ため息。
「うん、ナメてるよ」
静かな声。
「この中にランカーはいないでしょ? 」
男たちがざわつく。
「だって装備バラバラ。当然、企業チームじゃない」
「平均年齢35〜40くらい、キャリア5〜10年ってところ」
ニヤは笑う。
無邪気に。
残酷に。
「つまり――」
一拍。
「万年Cランクのプライベーター、あぶれ者、余り物の寄せ集め」
完全にアウトだ。
俺は一歩下がる。
巻き込まれたくない。
男たちの血管が浮き上がる。
「「「ぶっ殺す!!」」」
真剣が抜かれる。
銃が向く。
三十人の殺意が一人の少年に向けられる。
普通なら。
結果は決まっている。
「遅いよ」
ニヤの声が。
男たちの背後から聞こえた。
「なっ!?」
全員が振り向く。
さっきまでいた場所には――
誰もいない。
「コイツ!ギフト持ちか!?」
ニヤの瞳が――
蒼く光り男たちを嘲笑う。
その瞬間。
男が宙を舞った。
「ぐあっ!?」
続いて、次々と男たちが突き飛ばされ飛んでいく。
最小動作。
最大効率。
音が遅れて届く。
ドガッ!!
バキッ!!
わずか――数秒。
三十人が。
全員、地面に倒れていた。
沈黙。
俺は息を吐く。
やっぱりな。
ニヤのギフトは――《神眼》。
超知覚、超演算、未来予測の身体強化を兼ねた、瞳術系の最高峰の魔眼と並ぶ最上位能力。
つまり。
チート級のギフト所持者だ。
「お前……何者だ」
傷の男が呻く。
ニヤは首を傾げる。
「何者って?」
笑う。
「今年の新入生だよ」
頼もしすぎる。
正直。
俺の生存率が爆上がりしている。
その時。
ニヤの動きが止まった。
ポケットを叩く。
もう一度叩く。
顔色が急に変わる。
「おい、大丈夫か?」
腹でも下してるんじゃないか。
「えっと……あれ」
嫌な予感。
「装備」
沈黙。
「装備忘れた」
……は?
「降りるとき安綱に蹴られたから!!」
安綱のせいか。
いや違う。
お前のせいだ。
「全員倒してから言うな!」
俺は叫ぶ。
「まぁ、大丈夫だよ」
ニヤは笑う。
「んじゃ……行こうか」
ニヤは歩き出す。
塔へ向かって。
無防備に、無邪気に鼻歌交じりで。
「待てよ!」
俺は慌てて追う。
巨大な影。
進化の塔が俺たちを待っている。
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