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【連載版】学校一の美少女だった”元”後輩と同級生になった。〜先輩って呼ばれなくなったのに、前より距離が近いのはなんでだ!?〜  作者: 西城 有瀬


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20/20

最近できたカフェ

 ◆ 蘭すずな


 この調子で大丈夫なんだろうか……これでは勉強会という名のお遊びになってしまっているのではないかという疑問が生じていた。


 私は目の前に運ばれてきた、美味しそうなふわっふわのパンケーキに対してその不安な思いと同時に固唾を飲む。


 これを見せられて、じゃあ三段パンケーキのお供に勉強を、早速テキストを開いて、と──など出来るはずがない。


 それでも、勉強しないといけない、と統制する感情と食べたいと逸る感情が入れ乱れ、交錯する。


 ……なんでこうなってしまったんだろう。

 私と花嶋さんはパシャリ、もう一度パシャリとインスタグラムに載せる写真を撮っていた。


 ……ハッシュタグつけて早速、投稿投稿と。


「えへへへっ……おいしそー! ……なにこれ、極厚ふわふわで上には粉砂糖、ハチミツとホイップクリームがー!!」


「だよね、だよね! 昨日、開店したらしいっていうのを見つけたから早速行こうと思って」


「そうなんだ、ありがとー!」


 意識せずとも、声の調子は上がってしまう。

 前提として、


 ────私は甘いものには目がない。


 それに、東京に行かなければ食べられないようなこのスイーツたちを今食べなければいつ食べると言うのだろうか。


 駅近でない、学校付近に開店した理由はインターネットを上手く活用して稼ぐ算段なのかもしれない、というのも実際に私たちもインスタグラムに写真を投稿するわけだし、また写真を見た人が来店する。


 そうして経済的に活性化させるのは紛れもない事実だ。

 しかし、学校の帰り道に……加えて定期考査一週間前に開店するのは無情を否めない。


 すると、成瀬くんが口を衝いて出た。


「おい……別に今日来なくても良かったんじゃないのか? テスト後にでも食べにこれば良い気がするけど……」


「今日食べてモチベーションを高めるんですよ、それにこの後ちゃんと勉強しますし!」


「ほんとか? なんか、このまま食べて帰りそうな雰囲気が漂ってるんだが」


「ほんとですよっ!」


 、と無理にでも言い聞かせないと他に正当化する言葉は見当たらない。これでも一応、罪悪感はあったりもする。


「ほんとかよ……にしても、カフェで勉強ってやるものなのか? 俺の想像では図書館とか行くのかと思ってたんだけどさ!」


「……学校の図書室は人気で空いてない。あと、ここらじゃ行くとなると少し離れた図書館しかないけど──つっても遠いからな……じゃあカフェってなるだろ?」


 蓮先輩は行儀悪く、フォークを向けて目を細める。

 その様子を見た成瀬くんもまた、眉を顰めて私たち3人の方を見た。


「スターバックスでノートパソコン開いて、カタカタ作業する社会人とか見るけど、あんまいないだろ。しかも蓮も普通に食ってるしさ……」


「いや、マジで美味い。これヤバイわ!」


「勉強しろ、生徒会役員!」


「あとでな〜」


「……っ、はあぁぁ……!」


 親指で英単語帳をパラパラと捲るのを何回も繰り返しているけれど、たぶん頭に入っていない気がする。

 でも、私も私でノー勉でのこのことやってきているわけではないのだ! 


 2週間ほど前から休日や平日の夜、合間合間に成瀬くんと勉強をしていたので残りはケアレスミスをしないように、とほぼ完璧と捉えても差し支えないくらいには仕上がっていた。


(……だからちょっと休憩してもいいよね!)


 ナイフでパンケーキを一口サイズに切る。

 ホイップクリームにつけて、と……そのまま口に運ぶ。


 口いっぱいに頬張ると鼻腔を甘い香りがくすぐり、甘美な味わいが広がる。

 ……うわっ、なにこれっ……おいしすぎるっ! まさに東京の味だというのか!


 私が幸福の時間を体現していると隣の成瀬くんから横目で見られていることに気がついた。


「ん、どうしたんですか?」


「いや、なんでもない……匂いが」


 訊ねると、そっぽ向いたように単語帳に目線を落とした。


 いったいどうしたんだろう……。

 もしかして──


「──食べます?」


「………………え?」


 私はフォークでパンケーキを取ると、成瀬くんに訊ねた。


「……いや、いいよ別に!」


「食べたいんじゃないんですか?」


「まぁ……そうなんだけど……」


「じゃあ食べましょうよ、はいどーぞ!」


 私と口に運ばれたケーキを交互に見る。


「────じゃなくって……もうっ!」


 若干語気を強めると、


「なぁ……蓮、ちょっと分けてくれないか!」


「……はぁ、なんで? 別に良いけど俺のフォーク使うなよ、そこの新しいヤツ使えって! お前と関節キスとか考えるだけで……おぇぇえぅ!!!」


「わーってるっての! んなの、こちらからお断りだわ!」


 決まりが悪くなったのだろうか、私から逃げるように、それでいてやっぱりちょっと焦った様子で慌てただしい。


 え……な、何? ちょっと悲しい。


 私が状況を飲み込めないでいるところに、目の前の花嶋さんは口角を上げて、ニヤリと微笑む。


「天然だね〜! すずなちゃん!」


「……え、天然? あんまり言われたことないんだけど」


「いやいやぁ……これを天然と言わなければ何を天然と言うのか、可愛いなぁーこのこの!」


 ……あまり理解できない。

 小学校の頃、周りから優等生とは言われたことはあるが、天然と言われたのはこれが初めてだった。


「ほらほらー、見てみなよあれ!」


「……え、なに?」


 相変わらずのニヤけた表情はつゆ変えず、男子組の方を指差した。


 首を回し、促されるようにその方向を見ると行儀悪くスマホをいじり眺める蓮先輩と、


 ──どこか冷静さを崩し、紅潮した、その場で固まる成瀬くんの姿があった。

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