表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/28

7.ビッグになりたいッス!

「んー、んんん……っ!」


 転生女神のマニュアルの熟読を再び終え、俺は思い切り伸びをした。――ああ、気持ち良い。


 先日の小さい女神様、リーネの言ったことを受けて何度も熟読を重ねたのだが――特筆すべきはやはり虹色の魂のことだ。


 虹色の魂はあまりにも力が強すぎるため、仮に暴れられたりすると――女神スキル『魂の減退』を何発も撃ち込んで、弱らせてからようやく強制転生を行うことが出来るようになるらしい。

 その場合は虹色の魂も攻撃を仕掛けてくるということで、つまりそこでバトルが発生するのだという。

 転生の間においてはこちらに圧倒的な補正が掛かるため、負けることはほぼ無いらしいのだが――それでも確実に勝てるとは言い切れないようだ。


 ちなみに金色以下の魂については、暴れたところで女神スキル『女神の裁き』のひとつでも入れれば大人しくなるとのこと。



 それともうひとつ、虹色の魂は最も矮小な存在――『チリ』に必ず転生させる、というルールだ。


 仮に虹色の魂が善の存在であっても、それなりの生命体に転生させてしまうと世界のバランスを崩すほどの凄まじい力を得てしまうらしい。

 『チリ』に転生させたところで凄まじい力を得てしまうのは同じなのだが、『チリ』という存在が持ち得る力の許容量の関係で――大部分の力を消失させてしまえるとのこと。

 その後、力を大きく失った状態で転生先の世界で滅ぼす――というのが、虹色の魂への最善の対応らしい。


「少し可愛そうではあるけど、世界のバランス維持のためには仕方ないのかね……」


 人間に当てはめれば、『トラック事故で死んだらゴミに転生させられて、そのまま焼かれて殺される』――みたいなものだからな。

 魂の格が高かろうが、迷惑な存在は滅ぼされる。何とも色々と考えさせられてしまう。



 そんなわけで、ここ最近はそんな重大なことを知ったこともあり――女神スキル『女神の裁き』と『魂の減退』の練習を丹念に行っていた。

 『女神の裁き』は威力が凄まじく、遠くにある山があっさり割れるというとんでもない代物だ。

 女神の庭園の復元力ですぐに戻るから良いものの、地上に降臨でもして『女神の裁き』をかましてたら余裕で文明を滅ぼせるぞ。

 ちなみに『魂の減退』は対象に出来る魂が無かったため、効果がいまいち分からないで今に至っている。

 発動させるのはもう慣れたから、問題のある魂が現れたら積極的に使ってみようと思う。


 虹色の魂に出会うのがいつになるか分からないけど――いざというとき、しっかり使えるようにしておかないといけないからな。



 ――ガラーン…… ゴローン……



 どこか遠くから鐘の音が響いた。


 ふむ、丁度キリが良いところだ。

 今回も親切丁寧に、優しい女神の俺が素敵な転生ライフをプレゼントすることにしよう。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 俺が転生の間に行くと――


「うひょー! マジ、すっげー!! 何ココ、チョーすげーんスけど!!」


 ――何やら賑やかな男がいた。


「星空とか、マジでキレーじゃね? あー、やべぇ。これチカにも見せてぇー」


 誰だよチカって。


「んん? あ、そこのオネーサン! チョー可愛くねッスか? うわ、マジ天使? つか女神様?」


 ……控えめに言って、なんだか心底かなり超絶にウザいぞ。


「ちょっ! オネーサン、無視ッスか? とりあえず名前教えてくんねッスか!?」


「――『魂の減退』ッ!!」


「はぎゃ――――――――――――――――――――――――――――ッ!?」


 女神スキル『魂の減退』を食らった男は吹っ飛んだ。

 ついでに何か、力というか存在感が思い切り弱まった気がする。

 なるほど、こうなるのか。とても参考になった。お前の尊い犠牲は忘れないぞ、多分。


「……ちょぉ? ま、マジ勘弁……ッス。オネーサン、ちょぉ痛いッス……」


 ちっ、まだ生きてたか。

 まぁ少し静かになったから進めるか。


「ここ、転生の間。生まれ変われるけど何か希望ある?」


「……お、オネーサン……? 何かちょっと……投げやりじゃないッスか……?」


「そんなことないです。ほら、早く希望」


「き、気のせいッスかね……。ちょっと俺、マジ死にそーなんスけど、回復とか……してくれねッスか……?」


 早く終わりたいのだが。


「ちっ、『魂の充填』」


 女神スキル『魂の充填』は『魂の減退』と逆のスキルで、魂の力を回復させる効果を持つ。

 使った瞬間、男の力と存在感が回復した。こんなヤツに使うのはもったいないのだが。


「ちょ……。オネーサン、回復ありがてーッスけど、さっき舌打ちしたッスよね!?」


「――『魂の減退』ッ!!」


「はぎゃ――――――――――――――――――――――――――――ッ!?」


 回復させるとうるさいから、やっぱり弱めたままで良いや。


「舌打ちなんてするわけ無いでしょう? ほら、早く希望」


「お、オネーサン……。か、回復お願いッス……」


「うるさくするからイヤ。ほら、早く希望。転生したら元気になるから早く」


「オネーサン……、マジ半端ねぇッス……。えぇっと……希望ってーのは、何か……お願いを、叶えてくれるってことッスか……?」


「出来るだけね。あと他人様に迷惑を掛けない程度でね」


「そうッスね……。そういや俺……、こんなトコロにいるってことは――死んだってことッスよね……。俺、まだ夢を叶えてなかったッス……」


「夢?」


「そうッス……! 俺、ビッグになりたいッス!!」




 時間を止めて、転生の設定して、時間を動かし始める。




 男の身体が光り始めた。


「じゃ、これから転生するから頑張ってね」


「え! も、もうッスか!? やっぱりテキトーじゃ――」


「良い来世を!」


 男は何やら騒ぎながら光の中へと消えていった。あー、すっきりした。




◆ ◆ ◆ ◆ ◆




 ――俺の名前は田所佳大(たどころけいた)

 恋人のチカとデートしてたら何か急に事故って――気が付いたらスッゲーところにいて、そこでチョー可愛いオネーサン……女神様に出会ったッス。


 何だか生まれ変わりだの転生だの言ってて――そんで、何か願い事を聞いてくれるってんで俺は言ってやったッス。


 『俺、ビッグになりたいッス!!』


 でも女神様、何かこれ……違うッス……。そういうことじゃ無かったんスけど……。




 ってゆーか俺、なんかでっけー石のモンスター? ってやつになってるみたいッスよ?


 すっげー遠くまで見えるのは気持ちイイんスけど、身体をビッグにしたかったんじゃなくて、ビッグな人間になりたかったんスけど!!


「ヴォオオオオオオオ! ヴォオオオオオオオ!!」


 ――それにほら、言葉も喋れないッスよ?

 これでどーやったらビッグになれるんスか……。



「――む、やはりこの声……ストーンゴーレムか!」


 ん? 何だか足元で声が聞こえるッスね……。

 おっさんと女の子がいるッス。親子ッスかね? 女の子はチョーかわいいッス!


「ヴォオオオ? ヴォオオオオオオオ!!」


「――下がって。ここは俺に任せてもらおう」


「クサハエル様、頑張ってくださいっ」


 ――は? クサハエル様? ちょ、なんスか、その名前! 草生えるんスか!? マジでウケルんスけど!?


「喰らえッ! 我が新しき力――『リターンズ・アース』ッ!!」


 ザシュッ……!!! バガァアアァンッ!!!!


 は? ちょ、ちょおっと待つッスよ!? 今このおっさん、剣で斬ってきたッスよ! しかもなんスか、この威力!!

 マジやべぇ! に、逃げるッス!!


 ――……いや、ちょっと待つッス! 俺もこんなでっけー身体してるんスから、何か反撃できねッスかね?

 ほら、視界のすみっちょにゲームみたいなボタンあるッスよ?

 ここを見れば――ほら、何かスキル? そんなんを1個見つけたッスよ!


 これで反撃するッス!!!!!

 効果は――


 ----------------------------------------

 【自爆】

 (通常スキル/アクティブスキル)

 自身は絶命し、使用時点の生命力に応じたダメージを敵に与える

 ----------------------------------------


 ――って、コレ! 使っちゃダメなヤツじゃないッスか!!?


 こ、ここは全力で逃げるッス!!!


 俺、こんなことじゃめげないッスよ!! いつかはなるッス! ビッグな人間に――!!!!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 設定 [気になる点] 主人公の被害者が可哀想すぎる [一言] 主人公屑すぎじゃない?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ