護衛の依頼と気がかりな事
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森にミノタウロスが現れた事は、翌日には街中に広がり、王都にも伝わった。俺は商業ギルドの応接室で、ギルド長のマークさんに森での出来事を事細かく話した。マークさんは、テーブルに置かれたお茶を一口飲んだあと話し出した。
「王都から調査隊が派遣されるそうです。護衛の騎士と一緒に」
「調査隊は、森でどういう調査をするのですか?」
「ケンジさんが戦ったミノタウロスは、ダンジョンに生息する魔物と言われています。もしかしたら、森にダンジョンが現れたのかも知れません」
マークさんは過去にダンジョンが現れた事例を挙げた。リージョンド王国には、現在二つのダンジョンが有るそうだ、どちらのダンジョンも王都から離れていて、ダンジョンの近くに街が出来て栄えている。
ダンジョンで金を稼ぐ冒険者、物を売る商人、人が集まれば食堂も宿も必要になる。そうやって段々と街の規模を大きくしていった。魔物は人に害を与える存在だが、人も魔物を狩って、その恩恵を受けている。
「なるほど、しかし其だと、騎士達のレベルが気になりますね、ミノタウロスを倒す程の実力が有るのか」
俺のこの言葉を待っていたかの様に、マークさんの目が光った。
「実は、侯爵様からケンジさんに、調査隊の護衛に加わる様にとの御言葉が出ています」
ふむ、今日呼び出された理由はこれか。侯爵様には恩があるし、それに、『国の窮地には駆けつける』 なんてカッコつけたし、断れないな。
「解りました、調査隊の護衛を引き受けます」
「おお! ありがとうございます。調査隊と騎士の人選で、プレリの街に着くのは、五日後との事です」
マークさんの大袈裟な喜ぶ様に、少し照れてしまった。護衛を引き受けた後に聞かされたのだが、侯爵様が主導して、調査隊の派遣が決まったそうだ。調査隊が街に入ったら、連絡をしてくれる事になった。その後
、少し世間話をして、俺は商業ギルド出た。今日はどうしても行きたい場所がある。俺に取ってはこちらが本命。教会だ。
「ケンジさん、よくお越しくださいました」
「こんにちは、エリプスさん」
エリプスさんは、教会のシスターで孤児院の運営にも携わっている。銭湯で働いている子供達は、教会の孤児だ。
「今日はお祈りに来ました」
「まぁ、そうでしたか、ゆっくりとお祈りなさって下さい」
俺は内陣の前に跪いて目を閉じた。
『ケンジよ、良く来た、会いたかったぞ』
「ドラゴンを倒した時会ってますから、まだそれほど経っていませんよ」
創造神様に軽口を叩ける位には、親しくなったみたいだ。
『ケンジよ、今日はどう言った用で来たのじゃ?』
「はい、シェリーの事で相談に来ました」
俺は創造神様に、シェリーがミノタウロスを倒した状況を説明した。
『つまりじゃ、ケンジはシェリーに 【ヤクザキック】 は教えてないというのじゃな?』
「はい、俺の造った魔法は、クラントしてからじゃないと使えません、俺の魔法を真似て造ったとしか思えない」
以前のシェリーは、創造魔法を使えなかった。それが使える様になったのだから、理由が知りたい。
『……神格化かの?』
「…………はっ?」
『神格化じゃよ。あっ、言うの忘れておった、ケンジも神格化しておるぞ』
「…………えええっ!!」
俺は余りの驚きに腰を抜かしてしまった。
『ほら、ケンジが死んで、新しく体を造ったじゃろ、聖魔力が使えるハイスペックな体を、多分シェリーが神格化したのはそのせいじゃ』
俺の神格化にも驚いたが、今はシェリーだ。
「でっ、でも、俺の神格化とシェリーの神格化は関係無いでしょ?」
『大ありじゃよ。ケンジよ、シェリーと夜の営みで、魔力を流してなかったか?』
「っ…………!」
『どうやら、身に覚えが有る様じゃの、それとの、神格化したケンジと契れば、神とエッチしたに等しい、シェリーが神格化したのは、そう言う理由じゃ』
なんて事だ! 俺とシェリーは知らないうちに、人間を卒業していた!
「創造神様、もう普通の人間には、戻れないのでしょうか?」
『人ならざるものになったのじゃ、人間には戻れん』
どうしよう、シェリーになんて言えば良いんだ! とりあえず、俺は創造神様に思い付いた事を質問した。
「俺とシェリーの寿命はどうなりますか? 子供達の寿命はどうなりますか?」
俺のすがり付く様な姿を見た創造神様は。
『そう急くでない、順に答えるから、ケンジはワシに次ぐ神じゃ、まぁ、ワシと比べると、かなりの開きが有るがの、次にシェリーはケンジの眷族じゃ、ケンジもシェリーも人としての寿命は変わらん。人の生を終えた時点で、真の神になる。子供達はまだ普通の人間じゃが、この先ケンジがどう関わるかで眷族になる事もあるじゃろう』
創造神様に言われた事を聞いて、全てシェリーに打ち明ける決心をした。別の世界で死んで、この世界に来た事、元の世界の俺は、四十歳の冴えない独身のおっさんだった事を。
『ケンジよ、シェリーに話をしたら、一緒に教会に来るのじゃ。ワシもシェリーと話がしたい』
「解りました、二人で創造神様に会いに来ます」
創造神様の体が光に包まれ消えて行く。意識が離れる様な感覚が有って
創造神様と会っていた場所から離れた事を実感した。目を開けると、内陣の前で祈っていた時と同じ姿勢だった。教会を出た俺は、急いで宿に帰る。シェリーに全てを打ち明ける為に。
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