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師匠!何してんですか!?  作者: 宇井琉尊
第一章 再開編
9/86

師匠と再会・・・そして

「こんな所に出るのか」

「申し訳ありません。それ程遠くない所なのでもう少し歩けばすぐに着きます」

「いや、謝る必要はないよ。歩くことには慣れているから・・・でもやっぱり便利だなと思ってね。馬車の急ぎで二日掛かる距離を一瞬なんだからなぁ・・・因みに、街に直接行くことはできないの?」


 僕達はあの後、ジルが持っていた転移の魔道具で師匠達がいる街まで帰ることになった。村の復旧作業をしていたのは報酬のないただのボランティアだったので、村長さん達はお礼どころか手伝いまでして貰ってと恐縮しながら見送ってくれた。それだけならまだ良かったのだけど・・・


「そんな事も分からないのか?それでよくお師匠様の弟子を名乗れるな」

「・・・・貴方みたいに、自分から名乗ったつもりは無いのですけどね」

「ふん、ただ自信がないだけだろ?お師匠様の弟子を名乗る自信が」

「・・・・・・」


 図星を突かれて言葉に詰まったら、侮蔑の表情を隠そうとせず見下してくる。

 あの後、僕達が出ていこうとしたら同じ部屋にいた彼が自分達も一緒に行くと言いだしたのだ。

まあそうなるかな?とは思っていたけど、流石にギルドの依頼を打ち切ってでも来るとは思っていなかった。


 彼らが受けていた依頼の類は、別にノルマが決められている訳ではない。

魔物を多く倒せば倒す程、報酬が増えていくが、別に復旧作業中の村を襲ってくる魔物だけを倒すだけでも良いのだ。というよりもそういった冒険者は少なくない。

 彼らは、村を襲って来る魔物だけではなく、周辺の魔物も粗方倒したので、別にいつあの村を発とうが誰も文句を言えないのだ。


 本来なら、引き継ぐ別の冒険者なりギルドの役員が来るまで待つのが普通なのだが、彼はもう大丈夫と訳の分からない自信で言い切ったのだ。

 村長さん達は、大丈夫と言われても不安が残るのだが、彼らの倒してきた魔物の数を見て無理やり納得したような感じだった。

 ジルとノアが村長さん達に頭を下げて、すぐに別の冒険者を呼んで来ることを約束していた。


「はぁ・・・ケント様。先程からご主人様に対して無礼が過ぎるのではないですか。」

「・・・・ふん」


 勝ち誇ったような顔をしていた彼は、ノアに溜息をつかれてバツが悪そうに顔を背けた。

それでも、自分より僕を優先させている彼女達が不満なのかチラリと僕を睨んでくる。


「え、えっと、ご、ご主人様のご質問についてですが・・・・」


 ジルがこのギスギスした雰囲気をどうにかしたいのか、上擦った声で間に入ってきた。

因みに、ナナシさん達と彼の仲間は僕達の後ろに並んでいて、僕の両隣にジルとノア、そしてジルの向こう側に彼がいる並びで歩いている。


「一つは、城門の門番の確認を受けないといけない事があります。お分かりだと思いますが、門番の役目は驚異分子を街の中に入れない事です。それなのに、こういった方法で街の中に入る事ができるとバレてしまえば旦那様は囚われてしまいます。」

「でも、師匠が転移の魔法を使える事は皆知っているんでしょ?」

「その通りです。ですが旦那様は、昔からそれこそこちらの世界に来られた時から街の中に直接転移した事はないと仰っていました。ですので、世間一般的の知識としては、どういう理由か知らないが、街の中に直接転移は出来ない。という事になっています。それでも、旦那様は常に監視されていますが・・・」


前の大陸では、門番なんておらず田舎村だったからか、家から直接何処其処転移していたのだ。


「・・・・師匠が自重を覚えている・・だから街の人に聞いても師匠の事が分からなかったんだ・・・」


 確かに強い力は驚異となるから、王都では軽々しくは使えないと思うが、師匠が行動を自重していたことに驚いた。


「え、え~と・・・も、もう一つは、転移の魔法は旦那様しか使えないということです。」

「・・・転移の魔道具があるのに?魔力をある程度操作出来る人であれば誰でも使えるのに?」

「争いの種にしかなりませんから・・」

「そういう事になっているのか」

「そういう事になっております」


 僕達は転移の魔道具がある事を知っているが、世間は知らない。知られてはならない。

誰でも、この魔道具が使えると知られると戦争が起こってしまう。

厳重な防壁だろうと、転移してしまえば意味がなくなるからだ。


「でも、それだと僕達がこのまま街に入ると問題になるんじゃ・・・」

「それは大丈夫です。旦那様が色々動いていたので・・・」

「・・・色々ね」

「・・・色々です」


 師匠の事だから、何をしても不思議では無いけど


「・・・・・流石に脅してはないよね」

「・・・・・・・」

「黙らないで!?」

「流石にそういった事は・・・・ないです」


 ジルが言葉に詰まったけど、その気持ちはよく分かる。

なんたって師匠なのだから

前居た村でも、”まぁ、師匠だからね”で納得できるような人なのだ。


「・・・さっきから君達は誰の話をしているんだ?」

「・・・誰って・・・師匠の話ですけど?」

「君の言う師匠っていう人は、マコト様じゃないのか?」

「そうですよ?僕の師匠はマコト・イノウエ様ですよ?」

「・・・・・・」

「・・・・・?」


彼が何を不思議がっているのか分からず、首を傾げるしかない


「ケント様は知らないと思いますが、旦那様は昔は今以上にお元気でしたから・・・」

「元気じゃなくてヤンチャって言うと思うんだ・・僕は」


そういう話をしていると、城門が見えてきた。


「確か・・・いました。あの方の所に並びましょう」


ノアがキョロキョロと門番さんを眺めて一人の門番さんの所に向かっていく。


「お、少年の事だったか」

「あ、どうも」


それ程待たずに、門番さんのチェックを受ける事になったのだが、その門番さんは初めに会った門番さんだった。


「それにしても・・・・なるほど。いや、何でもない・・・・よし、入っていいぞ」

「・・・・・」


 ギルドカードを見せると、何やら観察されるような視線を感じたけど、門番さんは首を振って何事もないように許可を出した。


「ご主人様、行きましょうか」

「そうだね」


 多分、あの人も何処かで師匠に助けられた人だ。僕を見る目、雰囲気が向こうの大陸で師匠が助けた人達が僕に向けるような感じだった。

向こうの大陸より行動を自重しているみたいだけど、やっている事はやっているみたいで何だか嬉しくなった。

 そのまま、ギルドに行って依頼の報告を済ませ、彼らの後始末の為の冒険者を探して、とうとうあの門の前まで来た。


「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」


 屋敷の門番さんは、僕を追い返したあの門番さんで二人共バツの悪そうな顔を向けて静かに頭を下げてきた。

 僕は二人になんて言って良いのか分からずにジルを見ると、ジルは少し笑って気にしないで良いという風に首を振った。


「・・・・・アルトです。宜しくお願いします。」


それでも、二人の傍を通り過ぎる時に頭を下げて自己紹介をすることにした。


「あの時は・・・」

「・・・いえ、お仕事頑張って下さい」


 何か言いたそうな二人の言葉を遮って、笑顔で通り過ぎる。実際、師匠の弟子じゃないと言われてショックを受けたけど、それは彼らが悪いわけじゃない。彼らは自分の仕事をしていただけなのだ。


「有難う御座います。何かありましたら声をお掛けください」

「俺は、ヴォルって言うんだ!」


 彼らが頭を下げてくる感じがしたけど、それと同時にヴォルが元気よく自己紹介をしているのが後ろから聞こえて来て口元が少し緩んでしまう。

ヴォルの元気さにはいつも助けられている気がする。


「後ろの邪魔になるっすから早く中に入るっす」

「だって、門大きいよ!村の門より大きい!」

「確かに大きいっすけど・・・早く入らないとお菓子がなくなるっすよ?」

「お菓子!」

「そうっす。さっきノアが準備してくるって言ってたっす。美味しいみたいっすよ?」

「食べる!」

「じゃぁ早く中に入るっす。じゃないと皆食べられるっすよ?」

「行く!」


・・・・・後でしっかりとお菓子で知らない人について行かないことを教えておこう

そんな事を考えながら、ジルとノアが玄関の扉の前で待っている所まで歩く。


「改めて・・・お帰りなさいませ、ご主人様」

「お帰りなさいませ、ご主人様」


二人が同時に開けた扉の向こう側にあの人がいた。


「あ・・」


黒髪、黒目の細身の男性。

態とらしく手を上げて、照れているのか少し目が泳いでいる。


「よっ!元気にしていたか?」

「・・・・・師匠」


二年ぶりにやっと師匠に会うことができた。



 師匠の家は少し改造したのか、少し変わっていたけど凄く懐かしい感じがした。

ジルとノアが入れたお茶とお菓子を食べながら、師匠、僕、彼の三人で机を囲んでいる。

他の人達は少し離れた所で、こちらの様子をチラチラと見ている。


「それでお前まで来たのか」

「・・・・お師匠様」


師匠の元から離れた二年間の事を報告しようとしたら、彼が師匠に説明を要求したのだ。

彼曰く、僕の事を聞いていない(それは僕も同じだ)

彼曰く、僕の実力が低い(余計なお世話だ)

彼曰く、何で僕なんかを弟子に取ったのか(僕の方が先に弟子になったけど)

彼曰く、どういう関係なのか(師匠と弟子ですが?)


 まぁ、僕も何で僕の事を黙っていたのか知りたかったので黙っていたけど

彼が僕の事を話すたびに師匠の機嫌が悪くなっている事に気付かないのかと

そっちの方に注意が向くようになってきた。

 そして、話を終えた彼に師匠が発した言葉がそれだった。

流石にその言葉に何かを感じたのか彼は、伺うように師匠をみていた。


「お前な・・・・いや、これも俺が悪いのか」


師匠は何か言いそうになったけど、首を振ってため息をついた。


「迎えに行ったのが、そこの二人で良かったな。娘達だったらお前今頃立っていられないぞ?」

「は?」

「分からないか?あいつらの前でアルトを馬鹿にするとお仕置きされるぞ?って言ってるんだよ」

「な、なんで」

「それぐらい大切なんだろ?こいつの事が。もう分かっていると思うが、確かにアルトはお前の兄弟子にあたる存在だ。アルトが13歳の時に俺が弟子にした。それから、二年間一緒に過ごしたんだ。そんな奴を悪く言う奴がいればムカつくのもしょうがないだろ?逆に俺はそっちの二人がよく我慢できたなと関心したぐらいだ。アルトに向ける忠義心はあいつらより上だからな」

「・・・恐縮です。ですが、それは旦那様がちゃんと説明していなかった事が原因と分かっていましたから」

「だ、そうだ。俺が悪くなければどうなっていたか・・・」

「・・・・・・」


彼は、師匠とジル達の目を見て、冗談でない事を理解したのか黙り込んでしまう。


「師匠」

「なんだ?」


彼の話が一段落着いたと判断して、師匠に話しかける。

僕だって聞きたいことは沢山あるのだ。


「師匠、僕は二年間頑張って此処に辿り着きました。最初は一人でしたが、大切な仲間ができました。色々な人に助けて貰いました。」


それでも、まず聞いておきたい事があった。それは


「師匠・・・試験の結果は合格ですか?」


僕が二年間旅をしてきた目的。

師匠の弟子である事を認めて貰うための試験。

その結果を知りたいのだ。


「・・・試験か・・」


師匠は僕の質問にすぐには答えてくれずに何やら考え出した。


「そうだな。ミサンガも壊れてないし、ちゃんと此処まで辿り着いた。だから・・」

「ちょっと待ってください!お師匠様!」


師匠の言葉を遮って、彼が大声を上げた。


「なんだよ、ちょっと黙ってろ。な?」

「いいえ、黙りません。私は認めたくありません。彼はお師匠様の弟子を名乗る資格もなければ、実力もない。そして何より覚悟がない。そんな彼を私は認める訳にはいかないのですよ!」

「ケント様!」

「待て!」


流石に我慢の限界だったのか、ノアが一歩踏みだそうとした時に師匠が鋭い声で止めた。


「ですが・・・」

「ちょっと待て、待ってくれ。・・・お前自分で何を言っているのか分かっているのか?認めない?お前はいつから俺が誰を弟子と認める事にまで口出しできるほど偉くなったんだ?ん?」

「お師匠様・・・ですが」

「・・はぁ~・・・どうしたもんか・・・アルトお前の事だぞ?なんかいう事ないのか」


師匠はため息を付きながら、傍観者となっていた僕に聞いてきた。


「いえ、話が進みそうになる度に口を挟まれてしまって、感心した方が良いのか、呆れた方が良いのか分からなくなりました」

「貴様!」


 彼が怒って睨んでくるが、彼が一々口を挟んで来るから話が進まないのだ。

まだ、聞きたいこと、言いたことが沢山あるにも関わらずだ。


「・・・分かりました。では、こうしましょう?」


 多分、こうしないと彼は僕の事を認めてくれないだろうし、僕も彼の事を気に入らないままだろう。

同じ弟子同士なのに。


「確かに僕は師匠の弟子を名乗る勇気がありませんでした。貴方の言う通り、実力が足りない。才能もない。そういう僕が師匠の弟子を名乗って良いのかいつも不安でした。だから、僕も少し変わろうと思います。貴方に認めて貰う為じゃありません。僕が、僕自身が師匠の弟子であるという事を胸を張って言えるように・・・」


 僕の中で彼の印象は最悪に近い。

リースと仲良く歩いていた事も少しは関係がない訳じゃないと思うけど、まず第一印象が最悪だった。

僕から名乗っても自己紹介をした事すら覚えていない程、彼は僕の事を見ていなかった。

そんな人の事を良い意味で感じる人は少ないと思う。

 

 それでも、彼から学んだ事がある。

それは、自信を持って弟子を名乗る事が出来る姿勢だった。

彼と色々比較して、僕が羨ましいと思ったのはそれだった。

今までは、師匠が弟子にした。周りから師匠の弟子だと思われていた。

僕はそれが普通だと思っていた。

 けれど、全く知らない土地に着いて、僕と師匠の関係は誰も知らなくて、目的地まで辿り着いても誰も知らなくて、僕の心は折れそうになった。


でも、本当はそれじゃ駄目なのだ。

周りからどう見られているじゃなくて、自分から胸を張って言えないといけなかったのだ。

だから


「貴方が言う、資格というのが何かは知りません。だけど、実力と覚悟であれば僕は示す事ができます。・・・・・・勝負をしましょう。貴方と僕との一対一の模擬戦です」

「君が僕に勝てると思っているのか?」

「さぁどうでしょう?」


彼が睨んでくるが、僕はさも自信がありますと言うようにニヤリと笑った。


「お前ら・・」

「すみません、師匠。でも多分これしかないと思います」

「だが・・・」


師匠は心配そうに僕を見てくる。多分、僕が彼に勝つ事が出来ないことを理解しているのだろう。


「・・・分かった。ルールは俺が決める。良いな?」

「分かりました」

「それで構いません」

「なら、練習場に集まれ、アルトは・・・」

「私がお連れします」

「私は、もうすぐお嬢様達が帰ってくる頃なので迎えに行ってきます」

「なら、試合は一時間後だ。二人共準備をしておけよ」


師匠はそう言うと、何やら考えるように部屋を出て行って、彼も仲間と一緒に部屋を出て行った。

ジルは、リース達を迎えに行くと言って部屋を出て行った。残ったのは、ノアとナナシさん達だけになった。


「大丈夫っすか?」

「やるだけの事はやりますよ」

「兄ちゃん頑張れ!」

「頑張って」


心配そうな年下組の頭を撫でながら、彼とどう戦うかを考え始める


「お怪我だけはなさらないようにして下さい」

「・・・それはちょっと無理かもしれませんね。それ程、彼とは実力差がありますから」

「そうすっすね。一発当てるのが精一杯じゃないっすか?」

「その一発もかなり確率が低いと思いますけどね」

「では何故?」

「彼がどう思っているかは知りませんが、この試合は勝ち負けじゃないんですよ。僕は、彼に認めて貰いたい訳じゃない。師匠には認めて貰いたいけど、どっちかと言うと僕が自信を持ちたい、という気持ちの方が強いです。だから、全力で彼と戦います。僕が自信を持って師匠の弟子であることを言えるように」


 僕の決意を感じたのか、ノアはそれ以上何も言うことはなく、僕の準備の手伝いをしてくれた。

と言っても、準備するものなんて何もないのだけど。


師匠の流儀は、何でも使えだ。

剣があるなら剣を

剣がなければ拳を

拳が作れなければ脚を

それでも足りなければ魔法を

だから、特別に準備するものなんてない。

でも、やっぱり使い慣れた武器という物はあるのだが


「それは・・」

「二年間ずっと使っていたからね」


 ノアが絶句して、僕が手入れをしている武器をみていた。

師匠から貰い、家探しで見つけた、立派に加工された二本の木の棒を


 ノアは更に心配しそうな表情になるが、気付いて欲しい。

唯の木の棒が二年間折れずにいることの不自然さを

 そして、あの師匠が態々唯の木の棒を渡す訳がないという事を(まぁギャグ要素で渡してくる可能性は否定できないが)


 ナナシさん達は、僕のこのスタイルを見慣れているから何も言わない。

彼も、僕がこれを使っての戦闘は見たことがない。

逆に、僕は彼の戦い方を少しだが見ている。

この差をうまく利用しなくてはいけない。


「ご主人様・・・お時間です」

「・・・行こうか」


 時間になり、ノアの後について行く事にした。

一度、家を出て(よく見ると家が3軒同じ敷地にあった)、大きな庭を横切って(噴水が・・)、地下に向かって(え?)


「ここが練習場です」

「・・・・なんか変なところを通ったすよね?」

「ここ何処?」

「俺の鼻でも分からないぞ!」

「・・・・・気にしないで下さい。仕様ですので」

「そうっすか・・もう何でもありっすね」

「恐縮です」

「いや、褒めてないっすよ?」


 後ろでいつもの遣り取りをしているナナシさん達のお陰で変に緊張しないで済んだ。(ノアがいるけど違和感がない)


「じゃぁ行ってくるよ」

「頑張るっすよ」

「兄ちゃん頑張れ!」

「お兄ちゃん、頑張って」

「ご武運を」


此処まで付いて来てくれた人達をみて、僕は彼が待っている所まで歩いていく。



おまけ


「それで、どうして私達はこんな所にいるんですか?」

「予防策」

「なんのですか!」

「乱入予防だよ」

「リース凄いわよこれ。一見普通の檻に見えるけど、魔力も精霊も全部遮断している」

「マリル!貴女なんでそんなに冷静なのよ!」

「騒いでも仕方ないでしょ?ノゾムおじ様が本気でこれを作ったのであれば私達にはどうやっても壊せないわよ?」

「だから、ノゾムおじさんそこに倒れているのね」

「だぁぁ!急に来たと思ったら変なの作らせやがって!」

「相変わらずすげぇな。魔神を封じ込めた時より頑丈じゃないか?」

「魔人って」

「ちょっと違うぞ?魔人じゃなくて魔神な?」

「どうでもいいですそんな事!ではなく、なんで私達はその魔人を封じ込めた以上の檻の中にいなくてはならないのかということです!」

「だから乱入予防と言っているだろうが」

「確かに、アルトが模擬戦をすることになったのは驚きましたけど、普通に見てはいけないのですか?」

「いや、何かね?ケントの奴が少し暴走していてな?ちょ~とお前らが聞いたら暴れそうだから、その予防だ」

「因みに、どれくらい暴走しているんだ?」

「なぁに、ノアが一歩踏み出して、ジルを牽制したぐらいだ」

「結構やばいな!おいっ!」

「あぁだからジルさんも一緒にいるのですね」

「・・・・お恥ずかしい限りです」

「こら、ミヤそんな事言わないの。そんな事よりこっちに来なさい」

「そんな事って・・・アヤの方が酷いような気がするけど・・・」

「サヤ姉さんも隅っこでカリカリしてないで」

「・・・ん」

「失礼します」

「なんっすかここ?」

「檻?」

「おお、来たか。ここは特別観覧席だ」

「初めまして、リースと言います。英雄マコト・イノウエの娘になります」

「初めまして、マリルです。ルックっと言っても分からないかな?英雄と一緒に旅をしたエルフの娘です」

「・・・初めまして、私はサヤ。異世界人の英雄のもう一人ノゾム・カミムラの娘。黒いけど猫の獣人。」

「娘にすらもう一人の方って呼ばれる俺って・・・」

「ま、俺が有名すぎるからな」

「お父さん達うるさいです!私はミヤって言います。お父さんはサヤお姉様と同じです。私も黒いですけど氷狼族の獣人です」

「私はアヤって言います。狐の獣人です。色は黒くありませんがお父さんはミヤ達と同じです。」

「凄いっすね。普通知らない人が来たら、誰?って聞かないっすか?」

「相手の名前を知りたければ、まずは自分から自己紹介をしなさいと教わったので・・・ところで?」

「っと失礼したっす。私はナナシと言うっす。此処までアルトと一緒に旅をしてきたっすよ」

「俺はヴォルって言うんだ!人狼族だぞ!」

「こら!ヴォル!」

「キャイン!」

「大丈夫ですよ。彼が私達と違う種族であることは分かっていましたから」

「この事は、内緒でお願いするっす。ヴォルも気を抜かない!」

「だって、ここの姉ちゃん達兄ちゃんと同じでホッとする匂いなんだもん」

「はぁ~、まだあっちの娘達に聞かれなかったから良かったっすけど・・・なんでケントの仲間は檻から離れているっすか?」

「あの二人は、この中に入ったら死ぬからな・・・殺気で」

「この中でバトルロイヤルでもするっすか?」

「はっはは!そん時は頑張って生き延びてくれ」

「否定無しっす!」

「安心しろ。その中では魔力も練れないし精霊も来ない」

「・・・猛獣扱いっす」

「魔人を封じたって言ってましたよ?」

「まさかの、神級!」

「あ、ジンって人じゃなくて、神だったのね」

「・・・何だか、ここの人達を見ているとアルトが普通に見えてくるっすよ・・」

「お姉ちゃん、私言って良いの?」

「ごめんなさいっす。言って良いっすよ」

「私はミンクと言います。唯の人族だけど力には自信があります」

「・・・・・なんでこの子達は、秘密にしないといけない事を喋りますかね・・・」

「うおぉ!すげぇ!ロリ怪力だ!体は小さいのに怪力とは!まさにファンタジー!」

「落ち着けノゾム!あれはまだあったか!」

「ふっ任せな!俺ですら処理できなったからな!まだあるぜ!」

「その言葉を聞いて安心したぜ!」

「ロリ怪力と言えば」

「言えば・・・」

「大つ・・」

「お父様達うるさいです!」

「すみません」「ごめんなさい」

「お父さん、お父さん」

「なんだい?娘達よ・・お父さんを慰めてくれるのかい?」

「人様の娘さんを前にはしゃいでいる父に向かって慰めろと?」

「・・・・うん、凄く反省した。めっちゃ反省した。だから、そんな冷たい目しないで下さい」

「アヤ!作戦ですよ」

「・・・仕方ないですね」

「ん?なんだい三人揃って?」

「せーの」

「・・・にゃん」「・・・にゃぁ」「・・・にぃ」

「がはっ!」

「ノゾム大丈夫か!すごい量の鼻血と吐血だぞ!」

「お父様も凄い鼻血の量ですけどね。確かに三人とも可愛らしかったですが」

「あぁ・・誠か・・俺はもう満足した。猫はともかく、犬系や狐系まで猫の鳴き真似とか・・・」

「お父さん、私ここら出たいにゃぁ?」

「ダメ絶対!もう、お父さん君達をここから出さないで飼うから!」

「逆効果!」

「・・・変態がいるっす」

「お姉ちゃん・・・なんか引っ張ったら取れたよ?」

「・・・・そっと戻しておくっす」

「うん、分かった」


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