拠点にて1
ノゾムおじさんが創った家。
今はこの島を浄化する兼修行する為の拠点となっている。
まだ、他のチームは帰ってきている様子はない。
僕達が早く帰れたのは、浄化の力に優れているシェルムがいたからだ。
流石、次期聖女と言われているだけはある。
「ただいま、帰りました」
「あら、お帰りなさない。まだ、他の人達は帰ってきていないわよ?」
「僕達の方は、シェルがいましたから。予定の所まで早く辿り着いたんですよ」
「それは、流石ねというしかないわね」
「ありがとうございます」
出迎えてくれたアマルさんにシェルも笑顔で挨拶をしていた。
僕達が島の浄化や修行をしている時に、この拠点を守っているのが母親組とジルとノアの二人だ。
ジルとノアの二人も、僕に付いてい来るつもりだったのだけど、母親組の仕事が多くてその手伝いをしているのだ。
では、何の仕事が大変なのかというと
「流石に、島全体に浄化の魔法を掛け続けるのはきついわね。あ、これは瘴気を抜くことが出来るわね」
「そう言いながらも、それが出来る所が流石”聖女”という所か。次はこいつだ」
「はぁ~、早くシェルムちゃんに引き継いで貰いたいわ。それはダメね。瘴気を抜けても食べれられないわよ」
「む、そうなのか?昔、お爺様に連れられて山籠もりした時に、食べた記憶があるんだが」
「・・・・騎士の家系って、皆こんな感じなのかしら」
マリー様は浄化の魔法を掛け続けながら、ルミス様から渡されている薬草や果物などから瘴気が抜けないか試している。
ノゾムおじさんが創った杭のお陰で、簡略化したとはいえ、浄化の魔法を掛け続けるのは凄く大変な事だ。それなのに、普通に生活することが出来るだけではなく、他の魔法も同時に使うことが出来る。
マリー様も凄いけど、ルミス様も凄い。ルミス様が持ち帰ってくる食料の量が凄いのだ。しかも、一人で森の中に入って行くのだ。一人で、食料を見つけ、襲ってくる魔物を蹴散らし、散歩に行って来たと感じで普通に帰ってくるのだ。
「やっぱり、子供達にはお肉がないとね」
「でも、この島にいる魔獣のお肉って食べられるの?」
「今の所、誰も体調が悪くなった人がいないから大丈夫だと思うけど」
ファルさん、ネムさん、クーリさんが三人で狩ったと思われる、大量の魔物の肉を目の前にして悩んでいた。
「取り敢えず、保存に適した蔵を作ったからそこに入れておけば良いと思うけど。一応、浄化の魔法陣も刻んでいるし」
悩んでいる三人の傍にいたスミアさんが声を掛けて、四人で協力してスミアさんが創った特別な蔵に魔物の肉を仕舞っていく。
そう、見てわかる様に、この島で生活するために必要な食事事情を解決するために母親組は頑張っているのだ。
しかも、食べられそうな物には大概瘴気が侵食していて、そのままでは食べられない。
だから、ルミス様やファルさん、ネムさん、クーリさんが森で狩りや採取をして、マリー様やスミアさんが瘴気を抜いて食べられるようにしているのだ。
「アマル様、燻製の準備が出来ました」
「皆さま、お肉はもう沢山ありますので、お野菜の方を探して頂きたいのですが」
そして、そんな母親組にそれ以上の負担を掛けないように、アマルさんが料理を担当してその補助にジルとノアの二人がいるのだ。
「ありがとう。それじゃぁ私は料理を始めるから。リース達も暇なら手伝いなさい」
「は~い」
今帰って来たばかりだと言うのに、リース達は疲れた様子を見せずにそのままアマルさんと家の中に入って行った。
僕も初めの頃は手伝おうとしたのだけど、リースを始めとする女性陣から「やらなくていい」と言われて、食事の手伝いをさせてくれないのだ。
皆が頑張っているのに、自分だけ何も出来ないのは、居心地が悪いけど、どうやら、皆は僕の身体の事を僕以上に知っているみたいだ。
「・・・・早く、強くなりたい」
魔力残量が少なく、体力と気力もギリギリ、今立っているのもやっとの状態で、食事の手伝いをしますと言われても、それは皆が止める筈だ。僕もそう言う人がいたら、止める立場にいると思う。
だから、それ以降は何も言わないけど、やっぱり自分の未熟さを感じてしまって気持ちが落ち込んでしまう。
皆の隣に立てるのは、まだまだ先だと言われているようで・・・・
「・・・アルト、もう帰って来てた。ただいま」
「お帰りサヤ、皆も早かったね」
リース達が家の中に入って、身体を休める為に座ってからまだそんなに時間は経っていない。
いつもなら、皆が帰ってくるのはもう少し後なのだけど
「マリルさんが頑張り過ぎまして・・・」
「ふん、私だってあれくらい簡単にできるのよ」
「それで動けなくなるぐらいなら、無理はしてほしくないのですけど」
「それは・・・・ごめんなさい」
ミヤとアヤの二人の肩を借りながら立っているマリルは申し訳ないような表情をしている。
「・・・シェルムに対抗するから・・・向こうは”聖女”。競うこと自体が無謀」
「グッ」
「サヤお姉様、それ以上は・・・」
「自業自得だけど、その気持ちは私達にもあるから」
「・・・っという訳で、ノルマは達成したけど、マリルが使い物にならなくなったから早めに戻ってきた」
「くぅ~もういっそうの事一思いに・・・」
「・・・じゃぁ、遠慮なく。マリルは馬鹿」
「・・・・・・・・」
サヤに遠慮なくバッサリと斬られて、頭を下げたまま何も言わなくなったマリルを三人が家の中まで連れて行った。
その姿を見て、少しだけ苦笑してしまう。
いけない事なのかもしれないけど、自分以外にも”そう言う感情”を持っている人がいたと知って、少しだけホッとしてしまったのだ。
その後、そのまま外を眺めていたら、ミリアとクーナ、ルックさんが帰ってきて
それからしばらくして、ミリルを背負ったケント達が帰ってきた。
「少し無理をし過ぎただけだ」
と一言そう言って、ケント達も家の中に入って行った。
僕も、段々と身体が楽になってきて、そろそろ家の中に入ろうかと思った時に、ヴォルやミンクちゃん達が帰ってきた。
「また、お前は外で待っていたのか?家の中でも良いだろ」
ついでに、師匠も一緒だった。
「・・・・なんで、師匠の方がボロボロになっているのですか?」
「腹が黒い、化物に襲われたからだ」
「そんな魔獣がいたのですか」
「あぁ、すぐ近くになッ!」
「・・・・どうかしましたか?」
急に師匠が後ろを振り向いたので、気になって尋ねると
「何でもないっすよ。ね?お師匠様」
「あぁ、何でもねぇよ。だから、お師匠様と呼ぶのは止めろ」
何でもない様な雰囲気ではない、師匠とナナシさんの二人に首を傾げていると、ノゾムおじさんが僕の肩に手を乗せて来た。
「気にすんな。いつもの事だ」
「そうなんですか」
ノゾムおじさんはやれやれという感じで、二人をみてミンクちゃんとヴォルを引き連れて家の中に入って行った。
師匠とナナシさんもそのまま家の中に入って行く。
「浄化は済みましたか?」
今度こそ、家の中に入ろうとしたら、ルミス様が持ってきた食料を選別していたマリー様がすぐ近くに立っていた。
「・・・・ばれていましたか?」
「多分、皆さん知っていますよ。知っていて何も言わないのです」
「少し複雑な感じがします」
その僕の答えに、マリー様は何も言わず笑顔のまま僕の頭に手を乗せる。
「まだ、少し残っていますね・・・・浄化」
シェルに掛けて貰った浄化より、力強く、そして温かい感じがして、それが終わったと思うと体の中にあった違和感が全部抜けていた。
「ありがとうございます」
「いいえ、それが私の役目ですから」
ニコニコと笑顔のまま、マリー様は僕の横を通り抜けてそのまま家の中に入って行く。
瘴気は人の身体にも悪影響を与えてしまう。
この島に来てすぐにアマルさんが倒れてしまったのはこのためだ。
魔力抵抗が強い人や光の属性、浄化魔法が使える人はある程度、瘴気に耐性があるけど、
僕やアマルさんみたいに、魔力が無い、或いは少ない人には、この島の瘴気は強すぎるのだ。
この島の魔獣は、浄化された領域には何故か入って来れない。
だから、この拠点で安心して過ごすことが出来るのだけど、良い事だけではない。
僕達は、浄化する範囲を広げる為、修行をする為に魔獣を倒さないといけないからだ。
だから、実際に魔獣と戦う場所は瘴気の中という事になる。
瘴気は、呼吸や皮膚からも直接身体を侵食してしまう。
呼吸が乱れたり、長時間の戦闘になってしまうと、瘴気を取り込んでしまい体の中に瘴気が溜まってしまうのだ。
僕が帰ってきてすぐに家の中に入らないのは、家の前にあるノゾムおじさんが創った特別な杭からマリー様の浄化の魔法が放たれているからだ。
身体を休めるついでに、身体の中に溜まってしまった瘴気を浄化させていたのだ。
その事を隠すつもりはなかったけど、皆に言ってなかったのは、僕も少しは意地があったからだ。
でも、そんな幼稚な事は皆にはばれていたらしく、少しだけ恥ずかしくなってしまう。
「頑張りなさい、男の子なのだから」
そんな僕の肩を叩きながらルミス様が
「あんまり無理をしたらダメよ」
「ミヤ達が心配しているからね」
「私達も心配しているのだからね」
ファルさん、ネムさん、クーリさんが僕の頭を撫でながら
「そんなあなたを見てるから、あの娘もあんな無茶をするのかしらね」
少し苦笑しながらスミアさんも僕に手を振りながら、家の中に入って行った。
「・・・敵わないな」
師匠やリース達にも敵わないけど、母親組にはそれ以上に敵わない気がした。
「ってことで、本来の目的であった海水浴&バーベキューを明日開催することにした!」
「どうして、そう言う事になったんですか師匠!」
「ケント達が、浜辺を解放したから!」
「だからと言って、まだこの島が安全になった訳ではないのですよ!」
「だからだよ。今日まで休みなしでこの島を探索して浄化の範囲を広げてきたしな。丁度、休憩する必要があったんだよ」
まぁ確かに、島に着いてからずっと働き続けていたから、休みがあった方が良いけど・・・
「それに、反対しているのはお前だけみたいだぞ?」
師匠が指さす方を見ると、僕以外の人はワイワイと楽しそうに準備を始めていた。
「別に、僕も反対している訳では・・・ただ」
「心配するな。俺は遊ぶためには全力を尽くすタイプだ」
「・・・・そうでしたね」
皆で海水浴やバーベキューをする為に、一年前から島を隠し持っていた人だ。
師匠のその言葉に、何故か凄く説得力があるような気がした。
「ひゃほーい!遊ぶぞ!」
僕達子供以上に楽しみにしている師匠を、アマルさんがまた説教していた
「師匠、何してんですか・・・」
そう呟いた、僕もやはり楽しみなのか、少しだけ口が緩んでいるような気がした。
おまけ
「マ・オウ様から許可は頂いた。明日、攻め込むぞ」
「私達だけでですの?」
「そうだ。マ・オウ様の命令はこうだ」
「・・・・・少し、納得できない所がありますが、マ・オウ様のいう事でしたら」
「明日が私達の理想の為、マ・オウ様の為の記念すべき一歩となる」
「えぇ、この狂った世界を戻す為に、そして何よりマ・オウ様の為に」
「あぁ、マ・オウ様の為に」




