世界の常識、異世界の非常識
今回は、勝手な解釈がずらりと並んでいます。
不快な方はご遠慮ください。
「お父様?」
「い、いや。待て!多分何かの間違いだ」
「でも、こうしてお父様の娘だという人がいるじゃないですか」
リースが師匠に詰め寄って首をガクガクさせている。
「お、落ち着けって!子供を作るような・・・そういう行為は嫁さんしかしてない!」
「じゃぁどういうことですか!?」
「俺が聞きたいわ!」
ごもっともである。
そんな二人の姿をミリアは楽しそうに眺めていた。
「おい、ミリアと言ったな?嘘だよな?嘘だと言ってくれ!」
「はい、嘘ですわよ」
「噓なんかいっ!!!」
師匠が悲惨な声でミリアに確認したら、あっさりと嘘だと言って、師匠がまた驚いた声を出していた。
「はい、嘘です。ですが、母から貴方の娘だと言われて育てられたのは嘘ではありません」
ミリアは笑顔を消して、師匠を睨みつけている。
その目からは憎悪の感情しか見られない程、鋭くなっていた。
「私の母は魔族で遠い地の離れた所でも噂される程、容姿が整っていたと言われています。まぁ娘の私が他種族からそういう視線で見られるという事はある程度は本当の事なのでしょう」
ミリアは自分の身体を強調させるように体を抱きしめている。
確かに、ミリア自身かなり整った容姿をしており、ギルドの中でも男達が群がる程なのだ。
でも、ミリアの魅力はその整った容姿だけではなく、それがとても色っぽいのだ。
少女でありながら、妖艶な女性のような雰囲気がある。
「そんな母ですが、色恋事には全く興味がなかったと言います。ですが、ある時に一人の魔族に目を付けられました。母は、その魔族を相手にしていなかったのですが、とうとうその魔族が無理やり襲ってきたそうです。そこで、襲われていればまだ救いがあったのかもしれませんが、母はその魔族を返り討ちにしました。母は魔族の長の娘でもあったので、実力はあったのです」
ミリアから出た「魔族の長」という言葉に、僕も含め全員が驚いた表情になった。
魔族の長
その当時、魔族を統一していた唯一の存在。それが魔族の長なのだ。
昔は、魔族の長の事を”魔王”と呼んでいたが、魔物の氾濫を起していたのが別な”魔王”であったことで、識別するために別の名で呼ばれることになったのだ。
「魔女の娘」
師匠が何かを思い出すように呟いていた
魔族の長は女性であったことから、魔女と呼ばれるようになっていた。
「少しは思い出しましたか?返り討ちにされた魔族は母を諦めませんでした。それどころか、返り討ちにされた事に逆上して「愛していての間違い」ではなく、「母を犯す」その事だけを考え、仲間を募り、母の味方を脅し、とうとう母はその魔族”達”に捕まってしまいました。そこで何が起きたか想像ができますか?」
「・・・・・・・」
誰も何もいう事ができない。
師匠達は完全に思い出したのか、とても驚いた表情をしていた。
「”異種族達の種を同時に注ぎ込めば産まれてくる子供は何の種族になるのか?”そういう遊び感覚で弄ばれていた母から産まれた子供が私で、その母を救ったのが貴方達ですよ。母は精神を保つことができませんでした。母は日常を満足に生活することも困難で貴方達は祖母達に母を預けた」
「そうだ。魔女が何とかすると言ったから俺たちは魔女に託した」
「ですが、祖母でも一度壊れた精神を元に戻すことは出来ませんでした」
徐々に感情が高まっているのか、ミリアの周りからはどす黒い真黒な色をした魔力が漏れ出していた
「そんな母が正気、いえ、狂気ですわね。それに目覚めたのは私を身籠っていると分かった時でした。それから母は、今まで通りに生活することができるようになりましたわ。私を英雄である貴方の娘だと信じていた以外はですけどね」
「どうして・・・」
「貴方が救ってしまったからですよ。貴方が有名になり、賞賛されて、幸せそうだったから・・・・だから、母は自分を救ってくれた貴方と愛した偽りの記憶を信じて、自分も幸せになろうとした。乱暴にされたこと。その結果の子供を身籠った事。それらを封じ込める為にそれに縋ったのです」
光と闇の境界線
自分が今どこにいるのか分からないのに、近くの光だけは眩しく見えてしまうのだ。
そして、その光が眩しい程自分がいる場所が暗い場所だと自覚してしまう。
僕も経験がある。
同じような年頃の子供が親に甘えている姿を見た時、
僕は、鞭を持った大人達に脅されながら仕事をしていた。
元気に友達と遊んでいる姿を見た時、
僕は、同じ境遇の子供たちと固まり、恐怖と戦っていた
そんな時に、さし伸ばされた暖かい手に縋ってしまう気持ちは良く分かってしまう
「ですが、私は貴方に全く似ていません。それどころか、母のではない別の魔族の特徴が出てきました。母は混乱しました。どうして別の魔族の特徴が出てきてしまうのだと。それを考えるとあの時の事が思い出されたのかもしれません。だから、母は否定しました。英雄である貴方に相応しくない部分をすべて否定したのです。私は、母から産まれた子供ですが、母の子ではありませんでした。私は、母が貴方から愛されたと思われるだけの道具でした。色々な種族が混じった私には居場所がありませんでした。誰も私を見てくれませんでした。祖母は母の事しか頭にありませんでした。他の人達は、私を穢れた子供だと言って遠ざけました。そして、母を救った筈の貴方は、母の事を忘れてどこかに隠れてしまった!!」
ドォン!!
漏れ出した魔力が一気に爆発して空間ごと破壊された
師匠とミリアの前には深い大きな窪みができていた。
「魔女の力・・・」
「その通りです。母は他の魔族の特徴は否定しましたけど、魔女の力だけは私に教え込みました。他の魔族の特徴と混じってしまって満足に扱えない魔女の力を、何度も、何度も、できるまで、母が満足するまで、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も!何度も!!何度も!!!」
ドォン!ドォン!ドォン!
子供の癇癪みたいに、何度も大きな音とそれと同時土が削れ、空間が破壊される。
「・・・・・体中が痛いのに、チクチクと針を刺されているみたいに痛いのに、頑張ってできるようになっても、それができて当たり前みたいに言われて・・・・英雄の子供なんだからと・・・でも、その英雄は私を救ってくれなかった!父親だと信じていた人は、綺麗な奥さんを見つけてどこかに隠れてしまった!・・・その時の私の絶望を理解できますか?」
ミリアはずっと師匠を見つめていた。
師匠もミリアの話を聞き逃さないようにずっとみていた。
大きな音が鳴っても、すぐそばの土が削れても、空間が破壊されても、師匠は全く動かなかった
「私は全てを祖母から教えて貰いました。それから私は、母の目を盗んで私の身に宿った他の力も使えるように努力しました。すべてはこの時の為に。ただの八つ当たりだと理解しています。ですが、貴方が少しでも母を気に掛けてくれたのなら・・・私に会いに来てくれたのなら・・・とそう思って仕方がないのです!」
ミリアは魔力の籠った手を振りかぶって師匠に殴りかかる。
ドゴォン!
物凄い音がしたが、師匠はミリアから目を離さずに、片手だけでその拳を受け止めていた。
「・・・・俺は昔ある人に言われた事がある。”英雄気取りも大概にしな”ってな。力があるから、目の前で困った人がいたから、そんな理由だけで人を救った気になっていた頃に言われた言葉だ。誰も助けるなと言うことじゃない。覚悟が足りなかったんだ。救った人を最後までみるっていう覚悟がな・・・救って後は自分でどうにかしてねと放り出すことが無責任なんだと」
「それが分かっていて何で!貴方の考えとこの世界の考えは一緒のようで少し違います。貴方がこうだろと思うことが、こちらの常識と一緒だと思わないで下さい!」
「その間違った常識を変える必要が・・・」
「では、貴方が思っている常識が全て正しいのですか?例えばの話です。街のスラムに住んでいる人達は仕事ができません。身なりが綺麗じゃなかったり、粗暴だったりするからですわ。その人達を貴方が説得して、街の人達を説得して働けるようにしたとしましょう。貴方的には、それは正しい事ですか?それとも間違いですか?」
ミリアは師匠の手を打ち払って、いったん後方へ下がる
「それは正しい事なんじゃないのか?」
「ええ、決して間違いではありませんわ。ですが、真に正しいのかと言われるとそうではありません。何故なら、人の生き方や人を差別するという事はそう簡単に解決できないからです。仕事にありつけた人は一生懸命仕事をするかもしれません。仕事をしないかもしれません。街の人はスラムの人を受け入れる人がいるかもしれません。スラムの人だからと言って扱き使う人がいるかもしれません。結局、そこで上手くいかない人が集まればスラムに戻ることになるのです。そもそも、そう簡単に解決できるのならスラムなんて出来ませんわ。まぁ、物語であれば真に正しいと言えるのかもしれないですわね」
「じゃぁどうすれば良いんだ?」
「居座る事ですわ。誰かに任せるのではなく、自分自身で見回り、相談し、解決していく。もし、本当にそこの街の人達の事を考えるのであれば、そこまで責任を持ってするべきです。それができないのであれば、介入しない方がよっぽどマシです。街の人は我慢しなくていいし、スラムの人達希望を持たなくていいのですから」
「希望を持たせる事は悪い事なのか?」
「希望を持たせる事は良い事です。ですが、その希望が打ち砕かれた時の絶望は酷いものですわよ?」
師匠の考えはとても良いもので、僕たちに希望を見させてくれる。
その希望の光に縋って、皆が集まってくる。
それが
英雄
でも、その希望の光から追い落とされて、暗い闇の中に戻ってしまう人達もいる。
僕も、師匠の弟子という立場から追い出されたと思って、絶望したこともつい最近ある。
師匠の希望の光は、その光が強い分、落とされた時の闇も深いのだ。
「成程な」
「・・・・何をされているのですか?」
ミリアが不思議がるのも間違いじゃない。
師匠はミリアから目を離さないのは一緒だけど、もう魔力も練っておらず戦う姿勢をみせていないのだ。
「ん?確かにこの問題は俺には解決できないな。とね。」
「ふざけているのですか?」
「これがふざけているように見えるか?」
手をフラフラさせている師匠の姿は、正直ふざけているようにしか見えなかった
「ふざけているじゃないですか!馬鹿にしないで下さいまし!」
「だから、ふざけてないって・・・お前が言ったんだぞ?俺の常識は正しくないってな。そんな奴と喧嘩しても意味がないだろ?無意味、無駄、ただ遺恨を残すだけだ」
「喧嘩ではなく決闘、若しくは死合。私は貴方と戦う為にここまで来たのです!それを無駄だなんて・・」
流石に無駄たと言われて頭に来たのか、すぐに師匠に殴り掛かろうとするミリアだったけど
「誰かずっとそばにいて欲しい」
「ッ!」
その師匠の言葉にビクリと体を震わせた。
「唯、自分を受け入れて欲しい。自分を見て欲しい・・・違うか?」
「な、なにを」
「俺の世界の漫画や小説も為にはなるだろ?お前みたいなキャラの攻略の仕方だよ」
師匠は視線を上に上げて、僕と一瞬目を合わせたような気がする。
「ただ、お前は厄介な性格をしているから普通ではないと思うが・・・・・」
「さっきから一体何の話を」
「お前を救う方法だよ」
「私を救う?何を馬鹿なことを」
「偽善者上等。そもそも、俺は英雄になろうとしたわけじゃない。周りがそう言って囃し立てているだけだ」
「それは逃げて」
「逃げて何が悪い?こちとら、向こうの世界では逃げて、隠れて、何もしなかったただの臆病者だぞ?それこそ、急に変われるものか。でも、力を手に入れた事でできるようになったこともある・・・・・誰かを助けることができる」
「それは、貴方の自己満足を満たすだけで」
「俺は、英雄であって聖人君子ではないからな。自己満足上等だね。だから、俺の自己満足の為に救われてくれ」
ミリアは師匠の言葉に絶句していた。
「要するに、お前は子供だ。助けて欲しい時にいなかったから、自分が苦しい時に俺が幸せそうだったから、親からちゃんと見て貰えなくて、周りも誰も助けてくれなくて、だから同じことをする。その原因に八つ当たりをする。・・・・ああそうか、やっぱりあいつが必要だな・・・・・ちょうど来たみたいだしな」
そういって師匠が振り向くと、その先には
「一応、連れてきましたけど、周りの視線がかなりきついですよ」
「ああ、悪い。なんかこいつが必要な気がしてな」
イサオ様とイサオ様に担がれている僕がいた。
・・・・僕がいる!?
「あはははハハハハハ!」
その僕の姿をみてミリアが狂ったように笑いだす
「その人が私を救う?私に手も足も出なかったその人が?なんか変な精霊も同じことを言っていましたけど正気ですか?まだ、目も覚ましていないですわよ」
「正気も正気大本命。こいつならできるさ。なんたってこいつは」
師匠は、本体の僕の頭に触れて
「俺の一番弟子なんだから」
その言葉と同時に、また視界が切り替わるのが分かった。
おまけ
「ノゾムおじ様?」
「何だい?」
「お父様が言っているキャラとか攻略とかは何のことですか?」
「・・・・聞かれるんじゃないかと思ったけどなんて答えれば良いものなのだろうか」
「あぁ、前にお父様が言っていたハーレムとか何とかと同じですか?」
「何てことを教えてるのあの人!?」
「サヤ達も知っていますよ?」
「人の娘に何てことを教えているんだあの野郎は」
「??良い事なのではないのですか?お父様もノゾムおじ様たちの事を例に出して説明していましたよ」
「・・・・そうだった。俺嫁さん三人いたわ」




