最後に残るのは・・
ノゾムおじさんの話が終わって、僕たちのグループだけ岩砕きをしてないが、訓練は先に進むことになった。
何故なら、できるだけ人数が多い方がいいからだ。
「よしっ!今日も始めるぞ”勝者は一人!泥沼バトルロワイヤル!・・・・因みに優勝者特典もあるよ?”」
そう、何時も最後は皆で模擬戦をするのだ。
チームを組んでもいいし、一人で戦っても良い。最後の一人になるまで続く、泥沼バトル。
因みに、ポイント制で一週間の期間の内、ポイントが高い人が優勝となり、何でも命令することができるのだ。
僕はずっと最下位でポイントは少ない。
他の人は同じようなポイントで、接戦だ。
「アルトは最初の20分生き残れたポイントな」
「はい」
こんな感じで、徐々にハンディを貰っているが、ハンディを貰うたびに皆から集中攻撃を受けてしまう。
ヴォル以外、皆女性だから、男の僕が優勝してしまうと変な命令をされると思われているのか、この時だけは、皆真剣な表情で向かってくるのだ。
「じゃぁ・・・・開始だ!」
「え?」
いつもなら、ある程度皆がバラけた時に始めるが、今日は皆がまだ塊っているのにも関わらず、始めてしまった。
「ほら、いつまで惚けている。もう始まってるんだぞ?」
「っ!」
その言葉に、皆が咄嗟に行動した。
即ち、近くにいた人に攻撃をしてしまったのだ。
一気に乱戦になってしまった。
人が飛び、炎が吹き上がり、それを氷が鎮める。
金属がぶつかる音が鳴り響き、人が倒れる音も聞こえてくる。
誰か、一人脱落者がいるみたいだ。
どうして、そんな風に周りを見ていられるのかと言うと
「こういう時、実力がないと良いのか、悪いのか」
皆が咄嗟に実力のある人、若しくは、相性がいい人に向かって攻撃を仕掛けた事で、皆から実力が足りない僕はその攻撃の対象から逃れる事ができたのだ。
まぁ、嬉しくはないが・・・
でも、これで20分逃げ切る事が出来るかもと思ってしまった。
だが、現実はそこまで甘くは無かった
「イタタタ・・・あ~あ、負けちゃった、やっぱり近接戦闘は苦手だな・・・あれ?まだアルト君が残ってる」
死人に口無し。
だけど、これは訓練で倒されても意識があることもあり、自分で負けを認めたマリルが何時でも逃げれるように構えている僕の姿をみて、思わずという感じで声を出してしまった。
「!!」
その言葉に、生き残っていた三人、リース、サヤ、ナナシさんが同時に僕をみた。
マリルは、自分の口を慌てて閉じたようだが、間に合わなかったようだ。
ジリジリと僕は三人から離れるように動くが、それをさせないと三人も距離を詰めてくる
「ほら、あと一分でアルトのポイントだぞ」
「師匠!なにしてんですか!」
このまま、いれば目標時間まであともう少しだったのに、師匠のその言葉で状況が動いてしまった。
まぁ、簡単に言えば三人が猛攻撃してきたのだ。
リースが中距離で魔法を放ち、サヤがその間を縫って僕に近づいてきて、ナナシさんの姿は見えないが、多分僕の死角から狙っていると思う。
「さっきまで、敵対してたのに!なにこの連携!」
リースの魔法を避けると、それを予測していたサヤのパンチが来るが、何とか木剣で逸らす事ができた。
ガリガリガリガリ!
と、手と木剣が擦れたような音では無かったけど・・・
焦ったためか、力んでしまったサヤの身体が僕に逸らされてしまって、運良くナナシさんが狙っていた所に誘導することができた。
「!!」
サヤとナナシさんは、急な状況に体を固くしてしまい、そのまま二人共ぶつかって倒れてしまう。
「っ!」
咄嗟に頭を下げると、火球が頭上を通り過ぎて行った。
魔法を放ったリースに向き直そうとして
「え?」
身体が動かない事に気がついた
「”影縫い”っす」
倒れていたナナシさんが僕の影に剣を突き刺して笑っていた。
影縫い。
ナナシさんが使う技で、影を地面に縫い付ける事ができる・・・みたいで、それをされると動くことが出来なくなるのだ
「勝負ありです」
リースの方を見ると、持っていた剣に炎が集まりだして、強大な炎の剣になっていた。
「・・・ナナシさん。離して下さい。じゃないと、ナナシさん達も巻き添えになってしまいますよ?」
「・・・・・まぁいいんじゃないっすか?まだ、私の方が勝ち越していますっし」
「・・・まぁしょうがない」
一応、未だに倒れている二人に尋ねるが、二人共もう既に諦めているみたいだ。
「残り10秒」
「行きます!」
リースが炎の大剣を振り下ろしてきた。
普通なら、横に逃げればいいけど、ナナシさんの影縫いで動けない
「補弾は禁止だからな」
最終手段であった、補弾は、ケントとの模擬戦の後師匠から禁止されてしまった。
理由は、補弾は元々は外部の魔力を補助として使う技なのだが、僕は外部の魔力を感知することができなくて、体内の魔力を使って補っていた。
そのことで、補弾を使った後に魔力が残らず、そのまま魔法を使うと怪我をする可能せがあるからだ。
まぁ、可能性じゃなくて、大怪我をしてきたのだが・・・
だから、外部の魔力を感知できるまでは禁止されてしまったのだ。
「だからと言って!」
僕もやはり男だからなのか、意地はある。
しかも、今回はポイントに手が届く残り10秒程度なのだ。
この一撃を耐える事ができたら、初のポイントになる。
そんな気持ちを、持って両手に持っている木剣に魔力を通す。
「はぁぁぁあぁ!」
僕は力がない為、手数を多く使う戦い方をする。2剣流もその為の物だし、常に動き回るのもそのためだ。
だけど、今回は影縫いで動けないから、腰を落として待ち構えるように立つ。
そして、炎の大剣と黒い二つの木剣がぶつかりあった。
今まで、攻撃を逸らす事しかしておらず、真正面から受けた事がなく、両手や身体に強い負荷が掛かり顔を顰めてしまう
「うぉぉぉぉぉぉ!」
声を出して必死に耐えようとするも、腕力はともかく、武器に纏わせている魔力に差がありすぎて、数秒も持たずに均衡が崩れてしまった。
炎の大剣がゆっくりと迫ってくる様子を見ながら、やっぱり負けたと思ってしまった。
だけど、その瞬間、僕の後ろに倒れているナナシさんとサヤの存在を思い出してしまい、咄嗟に炎の大剣に唯一動ける頭を突き出してしまい、その瞬間目の前が暗くなってしまった。
目を開けると、鬼・・もとい、怒鬼がいた。
うん、普通に怖い
「・・・・・・・」
しかも、皆黙って僕を見下ろしている。
そう、皆なのだ。
見上げる天井をみると、自分の部屋に戻っている事は分かり、あのまま気を失ったのを誰かが此処まで運んでくれたのだろう。
そこまでは、分かるが。
なんで、皆が僕のベッドの周りにいて、僕を睨みつけているのかが分からなかった。
「え、え~と?おはよう?」
「はい、おはようございます。ご自分から武器に当たりに行ったお体は大丈夫でしょうか?特に頭何ですが」
何か頭は大丈夫ですか?って聞かれると、二通りの意味に聞こえてしまうのは僕の自意識過剰なのだろうか?
「取り敢えず、怪我はないようだけど・・」
まぁ、元々怪我をさせるような魔法では無かったのだろうけど、ぶつかった瞬間は木の棒で頭を殴られたように痛かった事を思い出してしまった。
「・・・やっぱり、神倒術はアルトは覚えないようが良い」
「俺も兄ちゃんには教えない」
「いや、あれは咄嗟にというか、無意識というか・・・」
「無意識であんな事をするなら尚更です」
「・・・・はい」
まぁ確かに、僕も他の立場だったら、自ら武器に当たりに行く人に文句を言うかも知れないけど・・・
「聞いていますか?それから・・・・・」
「良いですか?あの時は・・・」
「いつもいつも心配している身に・・・・」
流石に長々と説教されると、気持ちも落ち込んできてしまう。
「お~い、まだか?流石に腹が減ったんだが」
「その辺のお菓子何か食べていて下さい」
「何か酷くないか!?」
永遠と説教される僕を助けようとしたのか、それとも本当にお腹が減ったのか師匠が声を掛けたきたけど、リース達は気にしなかった。
でも、僕は師匠の顔を見てしまって嫌な気を感じ取ってしまった。
あれの表情は、昔、リース達を叱りたいけど、強く叱れない時にお仕置きを考えている表情で
「お前らいい加減にしろよ?訓練と言ってもある程度は危険もあるし、怪我もする。まぁ、アルトの最後の行動は褒められたもんじゃないが、そのお陰で、後ろにいた二人を助けることができた。説教しても良いが、今後にどう繋げるか考える事だろ?それなのに、愚痴愚痴言いやがって、しかも、親である俺に対してあの態度・・・いい加減プッチと来るぞ」
流石に、リース達も師匠が怒っている事に気付いて師匠の方を振り向くが師匠の方が早かった。
「今から、飯なのに嫌な雰囲気で食いたくない。だから、全て水に流してさっぱりしてから来い。俺も頭を冷やしてくる」
師匠が手を振ると、床に大きな魔法陣が現れた。
この魔法陣には見覚えがあり
「師匠・・・どこに飛ばされるのでしょうか?」
「言っただろ?水に流して来いって。まぁ飯もあるし敷地外には出さねえよ」
その言葉と同時に、師匠を除いた全員が転移されてしまった。
特別おまけ
ザブン!
「ぷはぁ!つ、冷たい!」
転移された場所は風呂場だった。
いつもは、暖かいお湯が張っているけど、師匠が何かしたのか、そこには冷たい水が張ってあった。
「皆、だいじょう・・・ぶ?」
同じ転移魔法陣から別の場所に飛ぶことはない。
だから、みんなも一緒に飛ばされただろうと、心配して周りを見渡して言葉を止めてしまった。
「もう、髪も服もぐしょぐしょよ」
「早く脱がないと風邪を引いてしまいそうですね」
「・・・寒い」
「アヤ火で水を温められないの?」
「どれだけ時間がかかると思っているのよ」
「お姉ちゃん、ヴォル君がすごい勢いで水から出て行ったよ?」
「ヴォルは冷たい水が嫌いっすからね。まぁ、ヴォルじゃなくても早く出たいっすけどね」
僕と同じように冷たい水の中に転移された、皆がいたのだけど、その姿が目に毒、いや、保養になるのだけどあまりにも刺激が強すぎた。
特に、アヤの自己主張している、学園生からも指を指されるぐらいの部位が、濡れた服が張り付いてすごい事になっていた。
師匠の家の風呂は、とにかく広いが何十人も入れるぐらいはない。
何が言いたいのかというと、結構近い状況でそういう風景が見えてしまうのだ。
「兄ちゃん!早く出ようよ!ここ寒い!」
風呂場の隅で、寒そうに縮こまっているヴォルが僕に声を掛けた瞬間、今まで喋っていた皆が静かになり僕と目が合ってしまった。
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・・・もう、一人で出るからいいよ」
ヴォルは動かなくなった僕らを放って、一人で風呂場から出ていった。
「・・・・水も滴るいい女?」
「きゃぁぁぁぁぁぁ!」
結構近くに居たのに、やっと僕の存在に気付いた、皆が一斉に悲鳴を上げてのを最後にまた僕の意識は落ちるのであった。




