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師匠!何してんですか!?  作者: 宇井琉尊
第二章 学園編(二人の少女)
14/86

学園案内・・・のはずが

15歳

この世界に来て、一番驚いたのがその歳で成人を迎える事だと師匠はいつか言っていた。

小説や漫画で知識としては知っていたけど・・・と最後に小さく呟いていたけど・・


 師匠が昔、話してくれた内容でいうと、師匠達の世界では20歳で成人を迎えるのだと言う。

だから、15歳はまだ義務教育の期間で、誰もが学校に行く事になっていたらしい。

 師匠はこの世界に来た時は16歳でまだ学校に通っていたのだという。

自分が最後まで学校に通えなかった事もあるのか、師匠はこの世界に誰でも通える学校を作ろうとした。

小さい子供が学ぶ小学校、その次に中学校、そして高校。

師匠が最初考えたのは、こういったモノだった。


 しかし、それを実現にするには、いくら英雄であった師匠でも無理だった。

一般の家庭の人達が子供達を学校に通わすお金がなかったからだ。

魔物の氾濫がある前からも貧困の差はあり、子供達は必死に大人たちの手伝いをしていた。

手伝いだけではとても足りないから、早く成人を迎え正式な仕事に就くのだ。

だから、いくら学ぶことが大切だと分かっていても、貴重なお金を、時間をそういう事に回せる人は殆どいなかった。


 それでも師匠は諦めなかった・・・と言えば聞こえは良いが、要するに意地になったのだ。

15歳で成人を迎えるというのであれば、それはその日から一人の大人として認められるという事だ。

という事は、その人が学校に通うと言えば誰にも止められない筈だと・・・


周りの反対を押し切って、冒険者という命知らずな職業に就職する奴が居るならば、

周りの反対を押し切ってでも学びたいという人は居る筈だと・・・

だから、師匠が作ったこの学園は入学資格は15歳の成人を迎えた人である。

15歳からは冒険者ギルドに加入する事ができる為、資金が足りない場合でもギルドの仕事と併用して通うことが可能であった。


それに、師匠はただ学ばすだけじゃなくて、学びたい事を自分で選択するという形を取った。例えば

冒険者になりたいのであれば、冒険科を

調理師になりたいのであれば、調理科を

鍛冶師になりたいのであれば、鍛冶科を

別に、一つの科だけ学べるのではなく、冒険科の人達が調理科の授業を聞いても構わないのだ。


 師匠が考えたこのやり方は、多くの事を学べるというだけじゃなくて他にも影響を与えた。

一つは、冒険者の死亡者数が減ったのだ。

冒険者としての基礎知識や魔物の生態、どう対処すれば良いのかなど、そういう事をしっかりと学び、ギルドの仕事で実施していくことでしっかりとした実力が付くことで死亡数が減ったのだ。


そしてもう一つは、各専門職の技術が向上したのだ。

鍛冶師を例に挙げれば、

鍛冶師を目指すのであれば、どこかの工房に出向き、弟子にして貰い、一から知識や技術を教えて貰い、実践して・・・という流れになる。

しかし、師匠が立てた学園には、鍛冶科があり、基本的な知識や技術を学ぶ事ができる。

だから、工房の人達も一から教える必要がなく、その分自分の技術を磨く時間が取れるようになったのだ。


 それに、学園には多くの生徒がおり、お互いに知識や技術を磨くことで、新しい技術が発見できたりと今までにない勢いで、技術力が発展する事ができたのだ。

師匠の世界では、そういった学校の事を専門学校というらしく

王都に作れれたこの学校を”王都中央専門学園”という名前にしたのだった。



 そういう話を師匠から聞いて、今日も目の前にいる学園長先生から同じ内容の話を聞かされている。

いや、師匠がいかに優れているのかを間に入れて話すので少し内容は違うけど・・・


「なので、君は明日からここに通う事になりますが、この学園に相応しい生徒になるように心掛けてください」

「分かりました。精一杯頑張ります」


 何が分かって、どう頑張れば、相応しい生徒になれるのか分からないけど、取り敢えずは師匠達に迷惑を掛けないように頑張ろうと思う。


「よろしい。では、必要な物品を受け取りに行ってください。受け取ったらそのまま帰って良いですよ」

「分かりました。明日から宜しくお願いします」


 頭を下げてから学園長室を出て、明日から必要な荷物を受け取りに向かう。

僕は、二年の冒険科に通う事になった。

色々な科があるけど、一番人数が多いのは冒険科だった。


リース達も冒険科ではあるが、ミヤとアヤは学年が、リース達は教室が違う。

冒険科は人数が多いのもあるが、ある程度実力で教室を分けているらしいのだ。

因みに、ジルとノアは奉仕科でメイドとか執事とかの仕事を学ぶ所にいる。


・・・・どういった授業をしているのか気にはなるが、二人から絶対に来るなと言われているのでまぁ行くことはないだろ。残念だが・・・・本当に残念だけど


そういう事を思い出していると後ろの方から、タッタッタと誰かが走ってくる音が聞こえてきた。


「ちょ、ちょっと待ってください!そこの貴方です!周りを見渡しても貴方しかいませんよ」


綺麗な声が聞こえて、誰に向かって言っているのかキョロキョロ見渡しても僕一人しかいなかった。


「すみません。それで何か御用ですか?」

「御用ですかって・・・・貴方は何処に向かおうとされているのですか?」

「何処って・・・明日からこの学園に通うことになったので、荷物を受け取りに行こうかと・・」


僕の目の前で止まった人は、息を整えてから首を傾げて聞いていくる。


「ですから、荷物を受け取りに何処に向かおうとされているのですか?」

「え~と・・確か、そこの階段を下りて右に向かって、二つ目の通路を左に曲がって、すぐ階段があるから降りて、今度は左に曲がって・・」

「ちょ、ちょっと待って下さい・・・いつも無意識に歩いているので、口で説明されると分からなくなります・・・・・あっ!合ってますね」

「それは良かったです」


 師匠から迷いやすいと聞かされ、リース達からは地図を書いて貰い、学園長にも場所を確認したので合ってないと困るのだけど、目の前の人は何だか複雑そうな顔になった。

・・・どうやらこの人は僕に迷って欲しかったみたいだ・・・こんなに可愛らしい人なのに


「あっ!すみません。私はシェルムと言います。私もここの生徒なんですけど、先生から貴方を案内するように頼まれた者です。此処は広くて迷いやすいですからね。っと言っても貴方には不必要だったみたいですが・・・」


・・ていう訳でもなかったらしい。

どうやら僕は、僕を待っていたらしい彼女を素通りして歩いてきてたみたいだ。


「気が付かなくてすみません。僕はアルトと言います。一応、知り合いに場所は教えて貰っていたのですが、不安なので案内をお願いしてもよろしいですか?」

「アルトさんですか?」

「はい、僕はアルトです・・・何か?」

「いえ・・何処かで聞いたことがあるような気がしまして・・・」

「まぁ珍しくない名前ですからね」


 何かが引っ掛かるのか首を傾げている彼女であるが、僕も彼女の名前に聞き覚えがあるような気がしている。

だけど、こんなにも可愛らしい人と知り合ったなら忘れる訳がないと勘違いだと思うことにした。

ただ気になる事があるのだけど・・


「っとすみません。では、行きましょうか」

「・・分かりました。宜しくお願いします」


 出会ってすぐの人にしかも男の僕に言われるのは酷かな?と思い何も言わずに彼女の後をついていく事にした。

すぐ近くにあった階段を下りて右に向かって、二つ目の通路を左に曲がって、すぐ階段があるから降りて、今度は左に曲がって・・・そして


「・・・広いですね・・・」

「そうですね。創設者で英雄でもあるマコト様が空間魔法で広げたとか・・・土地の広さだけで言うと王都よりもあるらしいですよ?」

「・・この建物は・・」

「こちらは、同じ英雄であるノゾム様が作られたとか・・なんでも震度8の地震にも耐えられるとか・・」

「・・・・それは・・凄いですね・・・震度8の地震っというのが分からないですけど・・・本当に・・・凄い」


 本当に凄い事なんだけど、師匠だけじゃなくてノゾムおじさんまで張り切っていることに少し不安がある。

例えば、こうした何も変哲のない壁を押してみると


「あ、それとノゾム様が遊びを取り入れたと言われて、色々な所に罠を作ったみたいで・・・私達生徒一同、特に冒険科の人達が全て暴いて見せると言って張り切っているのですよ」

「・・・因みに、この辺りに罠とかありましたか?」

「そうですね・・・この辺は学園長室も近いので、まだ殆ど捜索できていない筈ですけど・・・まさか」

「・・・・すみません・・・」


はっとして振り向いたシェルムさんが驚いた表情で僕が押してしまった壁をみている。


「は、早く逃げなくては!ノゾム様が考えた罠は、命を奪うものはありませんが、落とし穴だったり、ヌルヌルした液体が飛んで来たり、天井に逆さ吊りにされたり・・・特に女子生徒には嫌な罠が多くて・・・・スカートなので・・」

「・・・子供かあの人は・・・でもそういった系ではなさそうですよ?後、もう逃げられません」

「え?」


 シェルムさんは慌てていて、周りに気付いていなかったけど、僕の言葉でやっと状況を把握したみたいだった。

さっき曲がった曲がり角から、奥までの廊下が光っていて、もし逃げれるとしたら空を飛べる人だけな状況であった。


「多分、転移系の罠でしょ・・・離れたら戻れる自信がないので手を繋いでも良いですか?」

「あ、どうぞ。確かに転移系の罠で怖いのは、パーティーの分裂ですからね・・・・って、なんでそんなに落ち着いていられるのですか!?」

「・・・まぁ・・・慣れているので・・・昔から・・・」


師匠とか、師匠とか、師匠の魔法の実験や修行の一環としてだけど・・・

隣であわあわと慌てているシェルムさんを見て、少しホッとした。

 彼女と最初挨拶をした時、彼女は確かに笑顔だったけど、僕にはその笑顔が無理して作っているように見えた。

だけど、今の彼女は笑顔ではないけど、そんな仮面のような表情じゃなくて、本当の素顔のような気がする。

狙ったつもりはないけれど、ノゾムおじさんの悪戯に少しだけ感謝した。


「まぁ後は何処に飛ばされるかだけど・・・・変な所に飛ばされたらサヤ達に愚痴ろう・・・」


きっとノゾムおじさんを叱ってくれるだろう

そう思いながら、シェルムさんと逸れないように手を繋ぎながらどこかに転移させられるのであった。



おまけ


「へっきしぃ!」

「きたねぇな」

「・・・誰かが俺の噂をしている」

「良い噂じゃない事は確実だな」

「お前にだけは言われたくないわ!」

「・・・それはそうと、また誰かが学園の罠に嵌ったんじゃないか?」

「逃げたし・・」

「逃げてねぇし・・・それで、結局いくつトラップ作ったんだ?」

「いくつだったかな・・・108個までは覚えているが、正確の数までは・・」

「なんで煩悩の数だけ・・・」

「止めろ・・そんな目で見るな!確かにちょっとしたエロハプニング的なトラップは多いが、それだけじゃないぞ!」

「例えば?」

「アナタの本当の事を教えて・・・・そのガスを吸うと一分間だけ嘘がつけなくなる」

「・・・・・」

「ドキドキ!究極の二択・・・・赤い線を切れば右手が、青い線を切れば左手が吹き飛ぶ・・・幻影をみる」

「・・・・・」

「ま、まだまだ!鬼さんこちら手の鳴る方へ・・・・小型な爆弾が音がした方に向かって転がっていく、ぶつかれば爆発する」

「・・・・・」

「じゃ、じゃぁ・・・ドキドキ!究極の二択Part2・・・・自分の恥ずかしい過去を皆に暴露するか自分の恥ずかしい過去を皆に見せされる、それまでは結界の中から出られない」

「究極すぎるわ!トラウマになるわ!」

「あ、そ、そういえば、こういうのもあったわ」

「・・・真面目な奴か?」

「た、多分・・・あの子と一緒に逃避行!・・・・ほら、お前が作ってそのままにした丘があっただろ?そこに転移魔法で飛ばすって奴を確か学園長室近くの廊下に・・・」

「自分で作ってなんだが、あそこは確かに綺麗な所だからな・・・でも逃避行って・・」

「いいじゃないか!見つけた奴は気になるあの子とそこに行けばムードはばっちり!しかも邪魔する奴はいない!最高のシュチュエーションじゃねぇか!」

「あぁ・・お前の煩悩っていうか妄想が強いってことはよく理解した」

「・・止めろそんな生暖かい目で俺を見るな・・」

「ま、そういうトラップをアルトの奴が起動させてしまったら、どうなるんだろうな?」

「・・・・・・」

「最後の奴は別として、エロトラップに引っ掛かり、怪我をして、心に傷を負ってしまったアルト・・・それに気付いた子供達は・・・」

「・・・・・・・・・・・」

「元気出せ?応援だけはしておいてやるよ」

「・・・アルト坊にはトラップの場所を覚えているだけ教え込んでやる」

「必死だね~」

「必死にもなるわ!二年間も会ってないからか、あいつに何かあればお仕置きがキツいのよ?」

「まぁな~過保護過ぎるのもいけないんだがなぁ・・・ある程度すれば落ち着くだろ」

「そんなもんか?・・・・ところで、アルト坊遅いな?少し説明受けて、荷物取ったら終わりだろ?」

「その筈なんだが・・・まぁ街をブラブラ歩いているだけかも知れないしな・・お前のトラップに引っ掛かっていなければだが・・・」

「そんな不吉な事を言うな・・・それより明日から学園に通うのか・・・」

「そうだな、楽しみだな」

「アルトが」

「どんなフラグを立ててくるのか」

「編入の時はフラグが沢山あるからな~」

「どっちが先だと思う?」

「俺はシェルムかな?」

「そうか、なら俺はファミルにしとくかな」

「案外、二人両方だったりしてな!」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・何かありそうで怖いな」

「それもありかもな・・なんたって俺の弟子なんだから」

「弟子関係なくないか?お前モテた事ないじゃないか」

「チッチッチ!甘いな望君。俺が本気になれば・・」

「本気になれば?何かしら?」

「・・・いえ、なんでもありません」

「そう?ルミス様とマリー様がこちらに来られるみたいですよ?さっき、使者の方が来ましたけど」

「あいつらが?なんだろ?何か聞いているか?」

「いや、俺も知らないな」

「ま、話を聞けば良いだろ」

「そうだな」

「・・・・悪い話じゃなければ良いが・・・」

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