これが学園?
第二章が始まります。
今度は少し明るい話が多い・・・かな
あの模擬戦から一週間が経った。
最初の二、三日は身体を起こすだけでも大変だったが、その後は徐々に身体を動かせるようになった。
・・・・いや、無理やりしたのだ。
身体を動かせずに日常生活を送ることが困難な状態でいると、喜々としてお世話をしようとする人がいるのだ。
ジルとノアの二人だ。
勿論、二人だけではなく他の人達も色々世話をしてくれるが
二人はこの仕事だけは譲れませんという姿勢を崩さなかった。
まぁ、身体を満足に動かす事が出来ないから、お世話をしてくれるのはとても有り難いのだが
それが、シモの世話や入浴までとなれば話は別だ。
・・・・結局は、あれやこれやと言いくるめられ・・・・いや、これ以上思い出すと精神的によろしくない。
そういうことが続いてしまうと思えば、無理矢理にでも動けるようにしないといけなかったのだ。
身体というのは案外丈夫で、慣れるものなのか、無理矢理にでも動かしていたら、それなりに動けるようになった。
そして、今日は師匠から許可を得て久しぶりに外に出ることができたのだ。
「アルトが何か遠い目をしてるっす。多分、あの時の事を思い出しているっすね」
「・・・・分かっているなら、口に出さないで貰えます?凄く恥ずかしいんですよ」
「どのことっすか?裸を見られた事っすか?それとも、タオル一枚で恥ずかしそうに「お、お世話します!」と迫られた事っすか?」
「なんで知っているんですか!?」
「皆知っているっすよ?あの後、魔女裁判的な事があったっすから」
「・・・非常に気になる言葉が出てきましたが、何か怖いので無視します」
「懸命な判断っすね」
身体の調子の確認と気分転換としての外出に付き添いとしてついて来たのがナナシさんだった。
リース達は何やら学園に用事があるらしく、ジルとノアもそれの付き添いだ。
ヴォルとミンクは、リース達の母親達に可愛がられて一緒にお菓子を食べている。
僕は一人でも良かったのだけど、ナナシさんが暇だからとついてきてくれたのだ。
まぁ、その有難かった存在に弄られているのだけど・・・
「・・ところで、何か外に用事があったのですか?僕はただ外をブラブラ歩くだけですよ?」
「私も特に用事はないっすよ?ただ、アルトに付き添っているだけっす」
「・・・そうっすか」
「そうっす」
今までも、動けない程の怪我をした時はナナシさんがずっと傍にいてくれた。
この街で過ごし始めてすぐは、皆に遠慮してか一歩引いた場所にいたけど、それもすぐになくなった。
偶に、一人でふらっと出て行く事があるけど、それ以外はしっかりと皆と打ち解けていた。
「そう言えば、何かこの街は他の街とは違って学園区っていうものがあるみたいっすね」
「・・なんでも、師匠が昔魔法で吹き飛ばしてしまった区域に学園を立てて、その周りに学園生を対象にした店を出し始めたのがきっかけとか・・」
「あれま、知ってたっすか?」
「今度編入する予定の学園ですからね・・・ジル達に頼んで色々な資料を読ませて貰った時に知りました・・・・見たくなかったですが・・」
因みに、この王都は大きく分けて5つの区域に分けられる。
王城がある北区
貴族やそれと同様の富豪達が住んでいる東区
冒険者ギルドや一般の店が並ぶ中央区
旅の人達や一般の人達の家がある西区
学園がある南区
細かく分けるともっとあるが、大まかに分けるとこのようになる。
そして、今僕達がいるのは中央区から南区に向けて歩いている。
明後日から通う、学園とその周辺を見ておきたかったからだ。
「・・・・思ってたよりもかなり広いっすね・・・」
「師匠の魔法で城壁まで壊してしまって、師匠が城壁を直したらこうなっていたとか・・・・」
「・・絶対、このために城壁壊したっすね」
「反論ができないです」
因みに、どれくらいの広さと言うと
街の中にもう一つ街があるぐらいだ。
ここから遠くに見える大きな建物がその学園だとして、その間にずらりと店が並んでいる。
食べ物系や嗜好品、武器屋に道具屋など様々な店が並んでいる。
それに
「これが寮っすか」
「寮は多分学園の近くにあるやつだと思うので、多分アパートというものじゃないでしょうか?」
宿屋とは別に二階建ての家がずらりと並んでいる場所があった。
これは、部屋を一日ごとで借りる宿屋とは別に、月に決まった金額を払えば住むことができる小さな家みたいなものらしい。
「これのお陰で浮浪者がいないって有名みたいっすよ」
「・・・そうですか」
勿論、アパートを借りるにはある程度の資金が必要だが、それが足りない人達でもある条件を満たせば格安、若しくタダで借りることができる。
身体を休めている時に師匠が説明してくれたけど、いっぱい色々な事を言われてあまり覚えていない。
確か、なんちゃら保険制度というものらしいのだが・・・
そういう話をしながら歩いていたら、目的地についた。
「・・・着いたっすね・・」
「・・・着きましたね・・・・」
「・・・・・・此処はどこっすか?」
「・・・・・・学園じゃないんですか?」
「・・・・・・・・・森が見えるっすよ?」
「・・・・・・・・・川も見えますね・・」
「・・・・・・・・・・・・・草原が広がってるっす・・」
「・・・・・・・・・・・・・岩山も見えますね・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・学園っすか」
「・・・・・・・・・・・・・・・・王都中央専門学園って書いてますね」
街の中なのに、山や川、森などが見えるこの場所は今度から僕が通う学園で
「・・やっぱり師匠が作ったんでしょうか?」
「・・あの人以外には考えられないっすよ・・」
「ですよね」
絶対に師匠が面白半分で考えて、ノゾムおじさん達の力を借りて作ったと分かる。
ただ、まぁ一言言わせて貰えば
「師匠!何してんですか!?街の中に街どころか、領地作ってますよ!?」
やっぱり、師匠はまともじゃなかった事を再確認したのであった。
おまけ
「珍しいですね。休みの日なのに皆様揃って・・何か学園に用事ですか?」
「シェルムとファミルは相変わらず休みの日も此処に来ているのね」
「私はシェルムがここに行くと言うから、護衛だ」
「私はいつも通り、先生達のお手伝いです。それで、皆様は?」
「・・・敵情視察」
「こら!・・・いえ、ただ今日も二人共ここにいるのかな?と思って」
「私達に用事ですか?」
「用事というか・・・様子を見に来ただけなのだけど・・・・迷惑だった?」
「いいえ!嬉しいです!」
「そっか、良かった」
「では、少し休憩にしましょうか」
「お茶の準備をして参りましたので」
「まぁ!ジルさんが作ったお菓子はとても美味しいですから楽しみです」
「・・・私は甘い物は・・・」
「・・・・嘘吐き」
「ぐっ!」
「ファミルさんが甘いものに目がない事はここにいる人は皆知ってますよ?」
「あぁそうだ!私は貴族で騎士なのに甘いものや可愛いものに目がない!それが悪いか!」
「誰も悪いとは言ってないですよ?それとも、貴族様や騎士様は甘いものや可愛いものが好きだといけないのですか?」
「いけない事は無いけど・・・ファミルの場合は度が過ぎているというか・・・」
「ルミス様に怒られた事があるから、あまり表に出さないようにしているのよ」
「~~~~~~!」
「はい、ファミル様。少し甘くしております」
「ノアさんが淹れた紅茶も美味しいです」
「恐縮です」
「・・・・・ふん」
「まぁまぁ、そんなに拗ねないの・・・・それで少しは気が晴れたかな?」
「・・・・誤魔化されませんか?」
「あれで誤魔化してたつもりだったの?」
「・・・目の下の隈」
「多少化粧をしているのでしょうけど、バレバレよ?」
「・・・・・・・」
「ねぇ・・やっぱり・・」
「すみません皆さん。でも、これだけは・・」
「ファミルも一緒の考え?」
「・・・皆が心配してくれるのは嬉しいけど・・・」
「・・・・しょうがないかな・・・お父様はこういうことにだけは敏感なのですから」
「おじ様が一人しか妻を迎えないって事が広まった時に大勢の女性が涙したと言われていますよ?」
「止めてマリル・・・」
「・・・でも、本当にギリギリ」
「ですが、本当に大丈夫なのでしょうか?」
「なにミヤ?信じられないの?」
「そんな事ないよ!・・・でも・・」
「大丈夫ではないでしょうか」
「そ、そうですよ!き、きっと大丈夫です」
「あの・・皆さん一体なんの話を・・・」
「この顔が一体どう変わるのか確認しておこうと思って」
「へぇふ・・・なんでほっぺたを揉まれたんでしょうか?」
「くすっ!自然に笑える日が後もう少しでくるわよ?楽しみにしておきなさい」
「だから、先程から一体なん・・」
「はいはい、その話はもういいから、早くしないとお茶が冷めるわよ」
「・・・っ!」
「・・・サヤ?何処に行こうとしているのかしら?ミヤとアヤも」
「・・・・ちょっと忘れ物すぐに戻る」
「私は少しトイレに・・・」
「ミヤと私は二人だけ学年が違いますし・・・席を外そうと・・」
「まさか、三人ともジル達みたいに抜け駆けするつもりじゃないでしょうね?」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「よろしい。皆で一緒に帰りましょうね?」
「・・・・・マリルさんの笑顔が怖いです」
「・・・騎士団長のプレッシャーより強い・・」
「何か?お二人共?」
「い、いえ!何もありません!」




