第4話 炎上
私は、ひいらぎについて情報を集めるため、
「モスピグレット」に、プレイヤーとして参加することにした。
まなの情報がないということもプレイヤーになった理由。
まなの両親は、まなが自殺した直後にどこかへ引っ越してしまい、
まなのその後を知る術がなくなってしまった。
世の中には、どれだけの数の未解決事件があることだろうか?
私はまるで、未解決事件を追う刑事のように、
ひいらぎ=まなにつながる手がかりをかぎまわっている。
ネットの住人となって、
現実の世界もネットの世界も大差ないじゃんと思った。
それというのも、ネットの世界にも人間関係が存在するからだ。
お互いに、ハンドルネームで呼び合い個人情報を開示しない
関係であったとしても、派閥やグループは自然と成立している。
誰がリーダーだということもだんだん、わかってくるものだ。
中学時代、私とまなは、どこのグループにも属していなかった。
クラスの中では、浮いた存在だったかもしれない。
そんな2人がある日を境に、分裂してしまいソロになった。
まなの方は、うまくやっていたとばかり思い込んでいた。
私と絶交した後、ちゃっかり、おとなしめの子たちが集まる
グループに収まっていたし、それにひきかえ、私はと言うと‥‥ 。
がんこにも、卒業する日までソロを貫き通した。
母親が心配して、学校に相談しに行ったことを後日知った。
母親には悪いことをしたと思う。
だけど、あの時は、私は、まな以外の親友を持つ気になれず、
ひとりぼっちになりたくない一心で、
気が合わないクラスメイトたちとつるみたくなかった。
まなは、私と違うと思っていた。
ある日の休み時間。
「そう言えば、まなって、あんたのグループにいたよね? 」
私は、スマートフォンとにらめっこしている棚橋に話しかけた。
「まな? 誰ですかその人? 」
棚橋が視線をスマートフォンの画面からずらすと訊ねた。
「え、信じられない!
中学時代のクラスメイトのこと忘れたの? 」
私は思わずのけぞった。
(まだ、そんなに時が経っていない。
しかも、あんな衝撃的な事件があったというのに‥‥ 。
よりにもよって、誰?だなんて聞く?? )
「すみません。あんまり、教室にいなかったもので、
誰がいたとか記憶が曖昧なんです」
棚橋がすまなそうに告げた。
「そっか。そう言えば、そうだったね」
私はそのセリフを聞いてハッとした。
もしかしたら、地雷をふんでしまったかもしれない。
棚橋はたしか、理由はよく知らないけれど
夏休みの後ぐらいから、あまり、教室に姿を見せなくなったんだ。
噂では、教室に入れなくて保健室登校していたらしい。
「私のあとがまに、まなさんが加わったんですね」
棚橋がぽつりとつぶやいた。
「そういうことになるかな? 」
私が言った。
まなはたぶん、ひとりぼっちが嫌で、
自分と性格が正反対の子たちの輪に加わった。
私と絶交することがなければ、一生、縁がなかったタイプの子たち。
「ところで、最近、私に隠れて何かやらかしていませんか? 」
棚橋が訊ねた。
「人聞きの悪いこと言わないでちょうだい」
私がそっぽをむくと、棚橋が、
スマートフォンの画面を突きつけた。
「これが動かぬ証拠です。いつ、モスピグレットの
プレイヤーのオフラインに参加したんですか?
ひいらぎの正体をかぎまわる犬扱いされて炎上していますけど‥‥ 」
「ウソ? マジ? 」
私は心当たりがあったため驚きを隠せなかった。
「ネットの世界は、現実より
残酷だということ忘れていませんか? 」
棚橋が身を乗り出すと言った。
「たしかに‥‥ 。秘密主義者が多い集団の中で、
カリスマについてあれこれ聞き出して
情報集めようとするのは無茶過ぎたかもしれない」
私はどっぷり反省モードにつかった。
「ひいらぎは、彼らにとって神的な存在なわけです。
神秘性があるからこそ、ひいらぎはカリスマになれた。
それを新参者に台無しにされて、
彼らが黙っていると思いますか? 」
棚橋が静かに怒りをぶちまけた。
「これには、深い理由があるのよ」
私が告げた。
「アカウント変えるか、退会した方が身のためです。
放っておいたら、ネット警察にボコボコにされて、
現実世界でもおびやかされることになりかねません」
棚橋が冷静に言った。
「そうだね。考えてみる」
私は曖昧に返事した。
それと言うのも、私はすでに、数名のプレイヤーたちと
個人的にコンタクトを取っていて、
彼らと会うことが決まっていたからだ。
「真剣に考えてください。
これからは慎重に行動するべきです」
棚橋がそう言ったところで、
始業のベルが鳴り強制終了と相成った。




