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童話集  作者: 清ピン
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地球のこえ 〜ルルと青い星のものがたり〜

「民主主義・社会主義・共産主義・資本主義といった“人間のしくみ”を超えて、地球そのものを大切にする“地球主義”を描いた」

ほのぼのとしながらも深いメッセージを持つ 5000文字前後の童話 をお届けします

 むかしむかし、宇宙のはてに、小さな青い星がありました。

 その星は「ちきゅう」とよばれていました。

 森があり、川があり、海があり、風がうたい、鳥がまい、虫がひそひそと話し、そして……人間という生きものも住んでいました。

 ちきゅうはいつも、やさしい声でつぶやいていました。

「みんな、なかよく生きてね。水をわけあって、空を大切にしてね」

 けれど、その声は、あまりにも小さく、だれにも聞こえませんでした。

1.風の子ルル

 ある春の朝、森のはずれの丘で、一人の少女が風とあそんでいました。

 名前は ルル。年はまだ八つです。

 ルルは風と話すことができました。

「ねえ、風さん。きょうは海のにおいがする」

「そうだよ、ルル。海のむこうでは、たくさんの人たちが話しあっているんだ」

「何を話しているの?」

「“だれが一番えらいのか” “どうすればお金がふえるのか” ってね」

 ルルは首をかしげました。

「どうしてそんなことばかり話すの?」

「ふふ……人間は、いろいろな“しくみ”を考えるのが好きなんだよ」

2.四つの国

 風にみちびかれて、ルルは旅に出ました。

 最初にたどりついたのは、「みんしゅの国」。

 そこでは、みんなが大きな広場に集まって、大声で話しあっていました。

「わたしはこう思う!」「ぼくはこうだ!」

 だれもが自分の考えをはなしていました。

 でも、話がまとまらず、空にはどんどん黒い雲がたまっていきました。

 やがて雨がふり、広場はぐちゃぐちゃになりました。

 ルルは、みんなが空を見あげるひまもなく、言い合いをつづける姿を見ました。

 つぎに行ったのは、「しゃかいの国」。

 ここでは、みんながきっちりと列をつくって、同じ服を着て、同じごはんを食べていました。

「みんなで力を合わせるのです!」と、先生のような人が言いました。

 でも、その目は少しこわく、こどもたちは自由に笑えませんでした。

 つづいて行ったのは、「きょうさんの国」。

 そこでは、全員が同じ歌をうたい、同じ方向を見つめていました。

 空は赤くそまり、森はしずまりかえっていました。

 さいごに行ったのは、「しほんの国」。

 ここには高いビルと、きらびやかな光があふれていました。

 でも、川は黒くにごり、鳥の声は聞こえません。

 お金を持つ人たちは高いビルの上で笑い、持たない人たちは下の影でうずくまっていました。

 ルルの胸はきゅうっと痛くなりました。

「どの国も……なんだか、ちきゅうの声を聞いていない」

3.ちきゅうのなみだ

 夜になると、空いっぱいの星がルルを見おろしていました。

 森の奥から、ふしぎな声が聞こえます。

「……ルル……こっちへおいで」

 その声にみちびかれ、ルルは古い木の根元へいきました。

 そこに、透きとおるような青いひかりがふわりとただよっていました。

「あなたは……?」

「わたしは、この星“ちきゅう”のこころ」

 青い光は、やさしくルルをつつみこみました。

「わたしは、みんなの母。森も、海も、空も、風も、虫も、動物も、人間も……ぜんぶ、わたしのこどもたち」

 ルルの目に、青いしずくがうつりました。

 それは……ちきゅうの涙でした。

「みんな、わたしの声を聞かなくなってしまったの。

 “民主”だとか、“社会”だとか、“共産”だとか、“資本”だとか……人間が自分たちのことばかり考えて、星そのものを見ていない」

「でも、みんなちきゅうに生きてるのに……」

「ええ。人間はとてもかしこい。でも、かしこすぎて、森の音や、風のうたを、忘れてしまったの」

4.ルルの約束

 ルルは、青い光のなかで両手を胸にあてました。

「ちきゅうさん、わたし、あなたの声をひとに伝える!」

「ルル……それはむずかしいこと。でも、できないことではないわ。

 “地球主義”――それは、国でもお金でも力でもなく、この星そのものをたいせつにする心のこと。

 ひとりが気づけば、やがて百人、千人、そして……すべてのこどもたちが気づくでしょう」

 ルルはうなずきました。

 青い光が小さなビー玉のような姿になり、ルルの胸にすっととけこみました。

「あなたのなかに、わたしの声をのこします」

5.声をきく人たち

 次の日、ルルは村にもどり、大きな木の下に立ちました。

 ルルの声は風にのってひろがりました。

「みんな、聞いて! 森が、海が、ちきゅうが、泣いてるの!」

 最初はだれも信じてくれませんでした。

「ちきゅうが泣く? そんなことあるもんか!」

「政治の話かい? そんな難しいこと、子どもにわかるか!」

 でも、ルルが地面に耳をあてると、不思議なことがおきました。

 人々の足元から、かすかな音がきこえてきたのです。

「……ごうごう……ざわざわ……」

 それは森のうめき。海のささやき。空のため息。

 ひとりのこどもが耳をあて、つぎにまたひとり、やがて大人たちも耳をすませました。

 みんなの胸に、なつかしい音がひびきました。

 雨の日のしずかな音、草のそよぎ、鳥のねむる音……。

6.ちいさな地球主義

 村の人々は気づきはじめました。

「お金よりも、まず森を守ろう」

「争うよりも、水をわけあおう」

「国とかしくみとか、そういうのも大事だけど……この星がなければ、何もできないんだ」

 村に新しい風がふきはじめました。

 畑にはいろいろな人たちが集まり、知恵を出しあって食べ物をそだてました。

 海をきれいにしようと、国境をこえて手を取りあう人もふえました。

 ルルはにっこりと笑いました。

 その笑顔は、空高くのぼり、ほかの国のこどもたちにもとどきました。

 やがて、青い星のあちこちで、「地球をたいせつにしよう」という声が、花のようにひろがっていきました。

7.しくみをこえる星

 むろん、世界にはいろいろな“しくみ”がのこりました。

 民主の国も、社会の国も、共産の国も、資本の国も。

 でも、どの国の人たちも、まず空を見あげ、地面に耳をあて、星の声をきくようになったのです。

 ある日、ルルはふと空を見あげました。

 大きな青い光が、やさしく輝いていました。

「ありがとう、ルル」

 それはちきゅうの声でした。

「あなたたちがしくみをこえて、わたしといっしょに生きてくれること――それが、いちばんのしあわせ」

8.そして未来へ

 ルルはもう、ひとりぼっちではありませんでした。

 世界中のこどもたちが、地球の声を聞けるようになったからです。

 森には歌がもどり、海には魚が泳ぎ、空には鳥がまい、風はやさしくルルの髪をなでました。

「これが……地球主義なんだね」

 ルルがつぶやくと、足元の草花がそっとゆれました。

「うん、それは“しくみ”ではなく、“こころ”なんだよ」

 そして星は今日も、しずかに、やさしくまわっています。

 だれかをえらんで照らすこともなく――ただ、すべてを包みこんで。

おわり



メッセージ

この童話は、政治や経済のしくみを否定するためではなく、

それらよりももっと根っこにある「地球そのものへの思いやり」を描いています。

民主主義 → 話し合いが大切

社会主義 → みんなで支え合うことが大切

共産主義 → 平等を目指す心

資本主義 → 努力や自由も大切

でも、それらの土台に「地球」がなければ、なにも成り立たない。

だから「地球主義」は、国や思想をこえた「みんなで星をまもる心」です


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