今日初めて会った女の子がこんなに可愛いわけがない 『可愛い』
一億五千万の借金を親から押し付けられたハヤテの元に現れたのは、将来の夢は王様になるという少年。
しかし、どこからともなく現れたタイムジャッカーに変な時計を体内に…!
アナザーライダーになったハヤテになすすべもなくやられるジオウとゲイツ。
そんな時、助けに入ったのは『マスク・ザ・マネー』と名乗る金髪の少女だった。
祝え!新たなる王の誕生を!!!
「何を買うの?」
「妹が肉じゃがを食べたいらしいのでその材料ですね。野菜とお肉、その他もろもろです。」
心なしかワクワクしている彼女と並びスーパーへ向かう。
今日の夜は朝作った天ぷらを使って蕎麦にしようとしていたので冷蔵庫にお肉がない。
野菜は少しあったが、人数も増えるので買い足しておきたい。
「そういえば叔父さんから生活費を預かっているわ。華織に渡してくれって頼まれたの。」
そこで彼女は鞄から封筒を取り出すと、僕の方へ手渡してきた。
まったくあの人は…。そういうところしっかりしてるというか。
今回は水仙も言ってたように世話になってるから、その恩返しの一つでいいのに。
まぁ貰えるものはもらっておくけどぉぉぉぉぉぉ!?!?!
「すいませんちょっとここで待ってて下さい。」
彼女に断りを入れてスマホを取り出す。電話帳から番号を探して電話をかける。二コール立ったの
ち、ヤツは明るい声で電話に出た。
「あなたの理事長、逆月理事長ですよー!どうしま
「もらっておけるかぁぁぁぁぁぁ!!!!」
バカか!あんな大金貰えるか!
ちょっと手に取っただけでビックリする分厚さだったぞ!
「ど、どうしました?雫ちゃんの可愛さにさっそく手を出してしまいましたか!?」
やかましいわっ!
「違うよ!生活費だよ!なんだあれ!」
さっそくってなんださっそくって。
「ああ!それですか。ちゃんと受け取っていただけましたか?」
「ちゃんと受け取れませんよあんな大金。百万ぐらい入ってんじゃないですか。馬鹿なんですか?」
「あっはっは!それでも少ないぐらいです。むしろこちらから頼み込んでいるので、受け取って頂かないと困ってしまいます。」
「いやいやだからさ、いつも世話になってんだから…。」
「度量の小さい人はモテませんよー。」
いらっ…。
「毎回言ってますが、華織クンも水仙ちゃんも気にしすぎです。私はあなたたちが大好きですが、好き嫌いで優遇したりしません。あなたたちが優秀だから評価しているのです。」
むぅ…。
「ですのでそのお金は受け取って下さい。このお金は理事長としてお渡ししているのではなく彼女の生活費を保護者として、雇用主としてお渡ししているのです。私というあなたの一人の友人からのお願いです。」
「うまく言いこめようとして、ぜんっぜん中身がないこと適当に話してないか?」
さりげなく雇用主とか言ったぞこのジジイ。
「あっはっはっは!まあまあ。そもそも華織クン?最近洋服とか買ってますか?髪型とか、オシャレに気を使ってますかー?」
「は?…洋服は買ってないけど、髪は気にかけているよ。仮にも生徒会副会長だぞ。生徒の見本にならないとだろ?」
逆月学園は校則が厳しくないとはいえ、さすがに僕が乱れまくってると示しがつかない。
「つまらない副会長だなぁ…。」
おぉぉい!お前がそれを言うのか!?
あんたのとこの副会長だぞ!
「いいんですよ校則なんて少し破るくらいで。校則のギリギリアウトを攻めてこその青春でしょう!?」
春先先生が聞いたら卒倒しそうなセリフだな。
「髪なんて自分のものです。ちゃんとやることをやってるのであれば染めようと伸ばそうと自由です!」
いや、あんたそれ言っちゃダメな立場だろ。
「アニメを見てみて下さい!『ゼロ〇使い魔』のルイ〇も!『ハヤ〇のごとく!』のナ〇も!『と〇ドラ!』の大〇も!みんな自由な髪色をしています。かわいい!」
知識が局所に寄ってるなぁ…。釘〇病?
あとみんな設定上地毛だろ。
「だから、成績が良ければ髪ぐらい自由でいいんですよ。」
「理事長がいいんならいいんでしょうけど。まぁ、先生方には怒られるだろうけど…。僕はこのままでいいんだけど。」
ちょっと長いかなーとは思うけど、不自由もないし。
「だーかーらー。華織クンはこれから雫ちゃんと行動を共にすることが増えるんですよ?」
まぁ一緒に暮らすわけだからそうだろうな。
「登校も一緒かもですし、休日も一緒かもしれません。」
想像したらちょっとむずがゆくなる。
「そこで一つ問題が。彼女めちゃくちゃ可愛いですよ。」
可愛いけど問題あるかな?可愛いは正義って聞いたことがあるぞ。
「彼女、めちゃくちゃ目立ちますよ?」
目立つだろうなぁ。
「その隣にいるのは華織クンですよ?」
だからむずがゆくなること言うなって。
…なるほどそういうことか!
「そんな可愛い女の子にいるのが普通の男の子だったら逆に目立つでしょうねー。」
それは確かに目立つだろうなぁ。
遠目に見ても彼女は可愛い。そんな可愛い彼女の隣が僕のような特に目立たない男だと逆に浮いてしまうだろう。
「まぁですので?そのお金で洋服とか買っちゃて下さい。華織クンは水仙ちゃんのお兄ちゃんなだけあって顔はそこそこ悪くないのです。髪も整えれば多少マシになるでしょう。」
余計なお世話だ…といいたいところだが言われてみれば盲点だった。
「あとはデート代ですかねー。エスコートしてあげて下さいね。女の子の友達は多い華織クンですが、恋愛慣れはしてなさそうですので、しっかり下調べするんですよー。でわでわー」
余計なお世話だ!!!
そんな軽い感じで向こうから電話を切られて、プープーという音だけが僕の耳に響く。
「……………まぁこれはいざという時まで取っておこう。」
手に持っていた封筒を自分の鞄に入れて、出そうになったため息を飲み込んだ。
「秋桜との買い物に僕の洋服選びも付き合ってもらおう。」
付き合うはずの買い物が僕メインの買い物になりそうだ。
「電話は終わったの?」
ビックリした!近いいい匂い近い近い!!
僕の顔を覗き込める距離まで彼女が近づいてきててめちゃくちゃビックリした。
「あ、はいごめんなさい、何度も待たせてしまって。お金は確かに受け取りました。ありがとうございます。」
「じゃあ行きましょう?荷物が多いなら私も持つわ。こう見えて私、力持ちなのよ。」
むんっと力を入れるポーズをとりながら彼女が言う。
あのジジイが変なこと言うから意識してしまう。
制服で女の子と一緒に帰るならまだしも、制服で二人で買い物に行くなんて柊と水仙以外とはないんじゃないか僕。
そんなことを考えるとむずがゆくなってきた。
鼓動も早くドキドキしている。
なんだこれ!!!