表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サイアスの千日物語  作者: Iz
第三楽章 夜明けの運び手たち
607/1317

サイアスの千日物語 五十四日目 その三

普段通りといえば普段通りな、

表情の薄いサイアス。

そして残念ながら

普段通りといえば普段通りな、

如何わしいものを見やる皆の視線。


それらを受け、

場を包む沈黙を押しのけて


「……や、そりゃ外れるっちゃぁ

 外れるでしょーよ。なぁ?」


とシェドは隣へ問いかけた。


「俺に訊くなっての」


「右に同じ。君の面のことじゃないか」


ラーズとランドは肩を竦めた。


「まぁそりゃそうか。

 メンごメンご、

 なんつってなんつって!」


どうやらこれが言いたかったらしいシェドは

ご機嫌でカタカタと小刻みに小気味良く揺れ、

居室広間に集う10を超す者らの

なにか如何わしいものを見る視線は

とても汚らわしいものを見る視線へと変じた。


「んな目で見んなって!

 まぁ全治七日って話でさ。

 お面くれた人は治るまで付けっぱで

 問題ナシって言ってたんだよ。

 大体あと二日くらいか?

 

 そして医者の言いつけは

 必ず守るのが俺っちのジャスティス!

 用法用量を守って正しく使うべし!」


シェドは得意げにそう言った。


「健康オタクか。

 引き篭もりにしちゃ良い趣味だな」


とラーズ。シェドは


「ばっかお前、健康じゃなきゃ

 そもそも引き篭もれねぇっつの」


と呆れ顔だった。だがランドの


「んー、まぁ一理ある。でもさ。

 そのお面くれた人って医者じゃないよね」


との指摘を受け、シェドは


「あー…… ほんまやな。

 でもまぁ、いいんだよ! 

 今うっかり外して痕見られちったら

 恥ずかすぃぃジャン。御嫁にいけぬぁぃジャン」


と胸前で両手の人差し指を付き合わせ

モジモジくねくねとした。


「ビンタ痕に関わらず、

 君はとても恥ずかしい人間だよ」


「良いこというじゃねぇか」


「良かねぇわ! ったくよぅ……

 っと、どら、よっ、っと…… ぁれ?

 ……なんか引っ掛かるな…… なんでじゃ」


「えぇ……」


「大将、これぁ一体……」


テンポよく掛け合う三人衆は彼らの主たる

サイアスへと救いを求めた。


「ふむ」


とサイアスは思案げであった。そこに


「提案があるのだけれど」


とサイアスの傍らに突如湧いて出た

ニティヤがサイアスに訴えた。


「? どうぞ」


「食事にしましょう。冷めてしまうわ」


「賛成!」


この主張に対し三人衆含む

全ての者が声を揃えて賛意を示し、

まずは昼食を楽しむことになった。





サイアスが起きたことを喜んだデネブや

デネブが平素から入り浸って手伝いに励む

厨房の特段の厚意によって、昼食はたいそう

豪勢なものであった。一同はそれを大いに

喜び堪能たんのうし、堪能しつつも横目でシェドを

というより面を眺めていた。


驚くべきことに

シェドは面を付けたそのままで

まったく不自由なく食事をしていた。


口元に食べ物を近づけると火男面の尖った口が

ぐぱりと開き、むしゃりと食物を取り込んだ。


飲み物についても同様で、杯を近づけると

尖った火男口がぎゅるりとうごめき、

ストローのようにのびて杯から中身を

チューチューと吸い上げていた。


「……」


その余りにも余りな光景に、

それでもめげることなく

たっぷりと食事を堪能した後に、

面々はめいめいに感想を漏らした。





「何故今まで気付かなかったのかしら。

 ……いえ、判っているわ。

 気付きたくもなかったからね」


「あー、右に同じ。

 極力視界に入れないようにしてたわ」


ニティヤとロイエが的確に自己分析を行った。


「なんでしょうね。

 怖いという感情より

 気持ち悪いという感情が勝ります」


プライド高い、潔癖症、男嫌いと三拍子揃った

ディードは心底冷えた視線をシェドに送った。


そうしたサイアスの嫁御衆の反応に

うんうんと深く頷いて、ランドは


「シェドの人徳だねぇ」


としみじみ語り


「どこが人徳やねん!」


とシェドは悲痛なるツッコミを入れた。


一方、覚醒した軍師の目にて

他とは異なる知見を得たサイアスは


「そのお面、魔力を持ってるね。

 シェド本体に魔力がないから際立っている」


と得た情報の一端を口にした。


「魔力がない、って言われるとぉー

 なんか劣等生みたいでぇー

 気分悪いんですけどぉー」


聞き手が気分悪くなるような口調で

シェドはそう語った。

これに対してはラーズが


「その通りじゃねぇか……

 まぁ心配すんな。お前もう24だろ。

 すぐにいっぱしの魔法使いだぜ」


と笑い、シェドは


「ごるるぁあっ! 

 縁起でもねぇごというなや!」


と大いにうろたえ、そして吠えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ