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結婚のためにもらった1週間の休暇は、こんな感じで過ぎていった。
休暇を終えて出社すると、高等部からの友人であり同僚のアイリスが声をかけてきた。
「おはよう!今日から出社かぁ。休んでたって割に顔が疲れ切ってないか?」
「おはよう。疲れてなんかないわよ。公爵家ではのびーりと過ごさせてもらったんだから。今日からまた、バリバリ働くよ!」
「うえっ!お手柔らかに頼むよ~。って、そんなことより、お前が休んでいたせいでエマに全然会えなかったんだからな!また俺にも幸せを分けてくれよ~」
「そんなことって。エマに自分から声をかけて、会えばよかったじゃない。いい機会だったと思うよ。」
「俺だって、何回か手紙を送ったりしたさ。でも、レイナがいないんじゃ行かないって断られてばっかりで、全然相手にしてもらえなかったんだよ。」
「あら、それは残念ね。じゃぁ、今日もまたいつものお店でランチの約束をしてるけど、あなたも来る?」
「行く!!ありがとう女神様ー!!」
エマは私の初等部からの幼馴染であり親友である。
高等部のころ、同じクラスにいたアイリスにエマを紹介したところ、アイリスがエマに一目ぼれをしてしまったのだ。
しかしエマにはその気がないらしく、アイリスとは決して1対1で会う事をしない。
ただ、私たちの勤務先とほど近い会社に勤めているため、私とエマは週に数回ランチを共にしている。
そこには可能なかぎりアイリスも参加してくるのだ。
今回は休暇が終わる前にエマにランチのお誘いの手紙を出しておいた。
アイリスが一緒に来るであろうことも併せて。
私は母が経営している商会で、経理の仕事をしている。
海外に行くことの多い父に付いて、母は世界のあちこちから珍しいものを仕入れ売っている。
母は商売の才があったのか、なかなかのやり手である。故に、キビキビと働く様は周りに怖がられることも多く、実際、母は仕事になると娘である私へも厳しくなる。そんな母にものを言える社員はごく少なく、そんな少数に属する私は一部の社員たちから重宝されてる。
「レイナ、おはよう。休暇明けすぐで悪いんだけど。。。」
と声をかけられ振り向くと、領収書と報告書を持ったリンがいた。
「あー、また社長の報告書が違うのね。わかった、言ってくる。」
「ありがとう!助かります。」
そう、頭を下げながら恭しく束を渡される。
トントンとノックすると、どうぞ~という返事が返ってくる。
「おつかれさまです。休暇、ありがとうございました。」
「いいえ、戻ってくれて助かるわ~。でも新婚さんなんだから、仕事はほどほどにね。ダービンを大切にしなきゃ!」
「はいはい、善処します。と、社長。この報告書と領収書、金額が合わなくて担当者が困ってましたよ。」
「え!見せて。あーほんとね。これくらいの間違いなら、直接言ってくれればいいののに。」
「無理でしょう。社長、仕事中は殺気でてますもん。まぁ、直したら担当者に提出しておいてくださいね」
と告げ、私は自分の業務に戻った。