第9話 [剣聖]と剣術の修行をしつつ、ひたすら改造型詠唱符を描く日々です。
どうも、ぽむむんです。
更新が遅くなってすみません。
受験期入ったので、更新が遅くなるかもしれません。
〔ケミーナの魔法講座〕
「この小説中に出てくる単語について教えよう。」
〈マジックバリア〉
無属性の魔法攻撃防御魔法。
魔術師の前に魔法を無効化するバリアを弧を描くように張る。
〈イージス〉
魔法攻撃防御魔法の〈マジックバリア〉の上位魔法。
〈マジックバリア〉よりも広い範囲を守れて、強度も増している。
〈バリア〉
無属性の物理攻撃防御魔法。
魔術師の前に物理攻撃を無効化するバリアを弧を描くように張る。
しかし、〈マジックバリア〉に比べて、強度が弱い。
〈エレメンタル〉
物理攻撃防御魔法の〈バリア〉の上位魔法。
〈バリア〉よりも広い範囲を護れて、強度も増している。
しかし、〈イージス〉と比べると、強度が劣る。
「以上で講座は修了だ。」
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「やぁ、イロアス君。ケミーナから話は聞いているよ。ケミーナに勝ったらしいね。」
30代ぐらいの茶髪翆眼の男性が、『魔女の森』にやってくる。
腰には、立派な剣が帯剣されていた。(ちなみに、刀では無い。)
この人物が[剣聖]のクスィフォ・アレスマキア・マフォースなのだろう。
「こんにちは、イロアス・エスティアスです。」
イロアスも返事を返す。
「イロアス・アレスマキア・エスティアスでも良いかもしれないけどね。」
クスィフォが冗談を言う。しかし、冗談っぽくない口調だったので、本当に冗談なのかが疑わしい。
「いえいえ、まだまだ未熟者ですよ。」
いくら魔力量が世界一だろうと、所詮は子供だ。と考えているのか、へりくだった言い方だった。
「そうかなぁ?謙遜しすぎじゃない?」
クスィフォが疑うが、イロアスが子供なのは事実だし、剣術自体は、まだ技術が整っていなかった。魔法は別だが。
「そもそも、『戦神』の前で自慢出来る事自体が凄いんだがな。」
ケミーナが口を挟む。確かに、普通の子供ならそもそも『戦神』と話す機会なんて無いだろう。
「ましてや、子供だし。」
子供のレベルで、『戦神』に勝つと言うのは、考えられない事だった。まぁ、[大魔導師]に剣術となると専門分野ではないが、魔法無しにしても、ケミーナの剣の技術は高いものだったので、凄いことに変わりはなかった。
「何だか、照れますね。」
誉めまくられたイロアスは、照れたように顔を赤くする。
「まぁ、手加減はしないけどね。さあ、剣術の訓練と言う名前の荒行をしようか。」
クスィフォは笑顔と共にそう言った。
◇
「じゃあ、準備できたね?」
今回の修行(荒行)では、真剣を使うが持続魔法による強化等はしなかった。あくまでも、剣術の修行だからだ。
「はい、大丈夫です。」
身体に張った〈バリア〉を再確認し、頷くイロアス。
ちなみに、イロアスはこっそりと〈守護〉を自分にかけていたが、ケミーナには魔素でバレていた。
「じゃあ、いつでもいいよ。攻撃してきて。」
そう言って、クスィフォはイロアスに背を向ける。
しかし、背を向けた相手に斬りかかるというのも、イロアスにとって実践的ではなかった。
「えっ。」
当の本人は困惑していた。そりゃそうだろう。いきなり背後から攻撃して来いと言われても、そう簡単に実行出来ることではない。
イロアスは、ケミーナにどうすれば良いのか尋ねる視線を送る。
「かかって来いって言ってんだから、攻撃すればよいだろう。」
視線の意味を受信したケミーナが、率直に言う。
「行きますよ?」
不安げな声だが、きちんと刀を構える。
イロアスは精神統一をした後、クスィフォとの距離を詰めて刀を振り下ろそうとする。
しかし、
「ふんっ。」
下されつつある刀身は、振り返ったクスィフォの一凪ぎによってはじき飛ばされた。
「へ?」
あまりにも速い一撃に、訳も分からず声を上げるイロアス。
しかし、敵は待ってはくれない。丸腰となったイロアスに次の攻撃が飛んでくる。
避ける暇さえなく、イロアスの〈バリア〉は砕け散った。
「痛たた。油断しました。」
起き上がったイロアスは反省の意を表す。
「さっきの時に、力を抜きすぎかな。刀を振るときは、当たる寸前までは緩やかな力加減とスピードが良いらしいけど、それでも少しは力を入れとかないと、さっきみたいに弾かれてしまうよ。」
的確な指摘に感心するイロアス。すぐさま修正に取りかかった。
「じゃあ、素振りをしてみて。」
クスィフォに言われるまま、上段構えから刀を振り下ろす。
「うーん、もう少し右手を上にしてみて。」
言われたことを意識して、もう一度刀を振り下ろす。
「肩に力が入りすぎ。」
今度もまた、言われたことを意識して、刀を振り下ろす。
「足元がおろそかになっているよ。」
また別の所を注意され、そこを改善しようとするイロアス。
「ちょっと待って、イロアス。君は1つの事に意識しすぎだよ、もう少し型の全体をとらえてやらないと。
魔法だって、多重術式は全ての術式に意識を向けて展開するだろ。」
クスィフォの例えは、魔法の修行ばかりしてきたイロアスだからこそ理解出来た。多分、普通の子供なら多重術式なんて発動したこと無いだろうし、そもそも出来ないだろう。
「何となく分かりました。ありがとうございます。」
魔法の威力は魔術師の熟練度と想像力に左右される。
イロアスの豊富なイメージが、剣術にもヒントを与えた。
「あー、そうそう。さっきよりも全然良いよ。」
このあとも、延々とクスィフォによる型の修正が行われた。
◇
「ふぅ、疲れた。」
ようやくクスィフォとの修行が終わったのは、すでに日が高く登った正午近く。昼食はケミーナお手製のサラダと魔物のシチューを味わった。
「さて、腹も膨れた事だし、午後は改造型詠唱符をひたすら描くぞ。」
そう、午前はクスィフォと剣術の修行。午後からは改造型詠唱符を描く時間と決まっていた。
改造型詠唱符とは、詠唱符が普通サイズの魔法に対して、改造型の場合は余分に魔力を注ぐ代わりに、イロアスの放つ魔法みたいに規格外の威力や効果を発揮するものである。
「は~い、分かりました。」
多少、嫌そうに返事をするイロアス。イロアス自身も、ひたすら緻密な魔方陣を描く作業には辟易していた。
「そんな顔をするなよ。いつか絶対に役に立つからな。」
ケミーナは毎回そう言うが、イロアスにはいつ使うのか分からなかった。
「今日は、〈イージス〉と〈エレメンタル〉の魔方陣を改造型で描くのが目標な。」
盛大な目標を掲げるケミーナに、『本当に出来るの?』と疑わしい視線を送るイロアス。
「出来るか出来ないかじゃない、やるんだよ!」
ケミーナの熱い台詞により、無理矢理描かされるイロアス。
しかし、この後にこの苦労が活躍する時が来るのをまだイロアスは知らなかった。
もう少しで本編です。
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