第10話 最後の修行です。
どうも、ぽむむんです。
この話を書いていたのですが、一回データが全て消えて絶望しました。
多分ですが、この次の次ぐらいには本編に入る予定です。
〔ケミーナの魔法講座〕
「この小説中に出てくる単語について説明しよう。」
不適正属性
適性属性の魔法が簡単に発動出来るのに対して、不適正属性の魔法はどれだけ頑張っても発動出来ない。
ちなみに、不適正属性でも適性属性でも無い魔法は、練習を積めば発動出来る。
〈プロミネンス〉
火属性の天災級魔法。
超高火力の焔による広域殲滅魔法。
大量の魔力を消費する。
〈フレアサイクロン〉
無属性魔法の〈ストーム〉系統の最上級魔法〈サイクロン〉に炎属性を付与した魔法。言葉で表すなら『炎の台風』。
イロアスが【チャージ】と【時間効果倍増】を全力で使用して発動すれば、一発で王国レベルの国が滅ぶ。
使用出来るのは、イロアスとケミーナぐらい。
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◇ クスィフォとの修行が始まって1年後
「じゃあ、今日はもう教えることが無くなったし、全力で稽古してみようか。」
いつものように、素振りをしているイロアスにクスィフォがそう言う。
「え、もう無いんですか。」
少し残念そうにするイロアスに、クスィフォは驚いたような顔をする。
「もうって、あれだけきつい修行だったのに、すごい意欲だね。」
実際は、あれだけで片付けてはいけないほど、きつい修行だったのだが。そもそも、イロアスのように強い精神力が無いと、途中で心が折れている。
「ところで、全力でっていう事は、持続魔法などの身体強化がありって事ですか?」
そう、これまでの修行は持続魔法による強化無しで、ひたすら筋力と精神力、持久力を鍛えていたため、持続魔法を使うのは久しぶりだった。
「ああ、これで最後だからね。あ、でも怪我だけは気を付けてね。」
入学前に怪我をしては、本末転倒だからだ。少しの怪我なら聖属性の治癒魔法で治せるが、あいにくと、ここいにる全員が聖属性が不適正属性だった。
「〈バリア〉は絶対にしとけよ。あと、できれば〈プロテクション〉も。」
それまで、何やら本のような物を必死に書き綴っていたケミーナが、2人に忠告する。
「ちょっと魔力量がたりないかな~。」
クスィフォは、〈プロテクション〉までかけられなかった。
「はい、分かりました。」
イロアスは、〈全加速〉をかけている途中だったので、返事に遅れた。
「じゃあ、準備は良い?」
クスィフォがイロアスに詠唱が終わったのを見て、声をかける。
「はい、準備万端です。」
ちなみに、イロアスが発動させている持続魔法は〈身体能力強化〉と〈ブースト〉、そして三段階持続の最高段階の〈全加速〉、〈全万力〉、〈全守護〉だった。
「よし、じゃあ攻撃してきていいよ。」
先行を譲るクスィフォ。しかし、いつしかのように後ろを向いたりはしない。
「行きますよ。」
真剣と魔剣が対峙する。
「はあっ。」
〈全加速〉による猛スピードでクスィフォに接近するイロアス。まばたきする間に、15mくらいあった距離を一気に詰めた。
キンッと音が響き、イロアスの剣撃がクスィフォによって弾かれる。
「あっぶね。」
予想外の素早さに、小さく呟くクスィフォ。
2人は間合いをとりつつも、攻撃のタイミングを計っていた。
「ふっ。」
先に動いたのは、クスィフォ。この行動はイロアスにとって少し予想外だった、なぜならクスィフォは相手に先に攻撃をさせてから反撃するカウンター型の剣術を得意としていたからだ。
しかし、それによってイロアスの判断が鈍るわけではない。
距離を詰めてきたクスィフォに立ち向かうように、イロアスも1歩前に出る。
その瞬間、イロアスの魔剣の柄の部分に魔素が集まったのを視認できたのは、2人を眺めていたケミーナと、本人のイロアスだけだった。
「おらぁっ。」
クスィフォが飛び出し、鍔迫り合いになる。
その時、イロアスの魔剣の刻印が起動した。魔剣は紅蓮の炎をまとい、じりじりとクスィフォの剣を溶かす。
(まずい。) 「はあぁぁぁっ。」
イロアスが、力任せにいや、〈全万力〉任せに大振りをかます。
その刃が届くより僅かに、クスィフォが後ろに避けた方が早かった。
「あっ。」
空振った大振りは、そのまま地面にめり込んだ。
体制を崩したイロアスにクスィフォが剣を振るが、何故か感触が軽い事に気付く。
クスィフォの剣は、イロアスの魔剣によって、5cmくらいの刃を残して熱切断されたいた。
「ええっ!?」
驚いたまま振り下ろされた剣、とも呼べない剣はイロアスの〈バリア〉をかすって落ちた。
「「・・・・降参です。」」
少し間を置いたあと、2人の声が重なった。
「ははは、とても面白いものを見せてもらったよ。」
空振って拍子抜けしたイロアスと、呆然と無くなった剣先を眺めていたクスィフォは、ケミーナの笑い声で我に返る。
「まさかクスィフォの剣を溶解するとはな。驚いたぞ。」
イロアスの面白い戦い方を褒めるケミーナ。
「俺が一番驚いたよ、だってなんか剣が軽いと思ったら、剣先が無くなっているんだもの。」
さっきのシーンを再現しつつ、説明するクスィフォ。
「あの剣って、なかなか強度があったよな。高そうだったし。」
ケミーナは最後に余計な一言を付け足す。
「あ、すみません。大事な剣を切ってしまって。」
申し訳なさそうに謝るイロアス。
「いやいや、大丈夫だよ。こんな剣よりも、君との稽古の方が貴重な経験になったし、魔剣使いと戦うことも、引き分けることも久しぶりだったから良かったよ。」
この発言にイロアスは疑問顔をするが、場の雰囲気を読んで質問はしなかった。
ちなみに、何を疑問に思ったかと言うと、何故魔剣を保管しているはずの王立騎士団の団長が、魔剣使いと戦う事が久しぶりなのか?という内容だった。
その疑問に答えるとすると、大前提にイロアスの持っている魔剣が他の魔剣達と比べると、はるかに性能が良いと言うのを説明しなければならない。そもそも、イロアスの魔剣(他の魔剣と混ざるので魔刀と呼ぶ)は、ケミーナが魔剣を製造している村を突き止め、オーダーメイドしたものでこの世界中で唯一無二の魔刀だった。原材料である、黒金特有の漆黒の刀身は、衝撃を吸収する構造になっていて、刃は切れ味が悪くならないように魔法がかけられていた。しかも、精錬と鍛錬によって造られた日本刀に刻印を刻んだのは、ケミーナ自身である。ケミーナは、魔剣を分解して刻印の構造を理解していたのだ。その刻まれた刻印は、改造型詠唱符をさらに改良化したものが使用されており、普通の魔剣が1つの属性にしか対応していないのに対して、この刻印は使用する人の適正属性に対応する仕組みになっていた。
さらに、普通の人というか、王立騎士団のメンバーは魔剣を使用する際には、持続魔法なんてかけていられないので、イロアスの魔力量にものを言わせた戦い方は到底まね出来ないものなのである。このような理由があって、クスィフォの思う魔剣使いのイメージにぴったりと当てはまるのがイロアスだった事を、本人は知らないのだが。
「お~い、2人ともボーっとしているんじゃねぇ。昼食の準備が出来たぞ。」
ケミーナの呼びかけに、突き刺さった魔剣を引き抜くイロアスと、切れた剣先を拾うクスィフォ。
「おっと、その前に〈ウォッシュ〉。」
ケミーナが振り返りながら洗浄魔法を2人にかける。
「ひっ。」
修行で身体が汚れた時は、毎回この魔法をかけられるのだが、魔法をかけ終わった後も濡れたような水の感触が残るのがイロアスは好きではなかった。しかし、イロアスのそんな気持ちなどケミーナは知らないし、便利なので毎回この魔法を連発するのだ。
◇ 午後の修行
今日もいつものように改造型詠唱符をただひたすら描き続ける。
一昨日まで3日間かけて火属性の天災級魔法〈プロミネンス〉を描いていたので魔力枯渇になり気味のイロアス。
「今日は〈フレアサイクロン〉な、この魔法は……まぁ、使う日が来ないことを願おう。」
『使うとするのならば、世界滅亡の危機が迫っているときだな。』という言葉をケミーナは飲み込んだ。
しかし、それほど危険な魔法なのだろうか。
「まぁ、魔力回復薬もこれだけあるし今日中に描き終わるだろ。」
ケミーナは、両手で抱えていた大量の小瓶を机に置く。
それすべてが、魔力回復薬・極だった。普通の人が見たらその量と莫大な価値に驚くだろうが、イロアスはそれが物語る、〈フレアサイクロン〉の威力に驚いた。
「どれだけの魔法なんですか?」とイロアスの顔が引き攣る。
◇
「うぇ、気持ち悪い。頭痛が痛い。吐き気がする。」
極度の魔力酔いに耐えながら、必死に筆を動かして魔方陣を描くイロアス。
その横で、ケミーナも必死に本を書いていた。
「頭痛が痛いは、文法上おかしい。」
ケミーナが突っ込みを入れる。
「てか、師匠は何を書いているんですか?」
気になったイロアスがケミーナに尋ねるが、イロアスの魔方陣を描く手は止まらない。
「じきに分かる。」
短い返答のケミーナ。
「てか、明日で終わりですか?僕の修行は。」
「ああ、それを言うなら今日で終わりだ。それを描き終えたらな。」
イロアスが描いている〈フレアサイクロン〉の改造型詠唱符を指す。
「師匠、今までありがとうございました。」
イロアスの声は、涙に滲んでいた。
「どうした、いきなり。」
精一杯、冷静さを保つケミーナだが、内心では泣き出しそうだった。
「師匠と一緒に居た時間はとても楽しかったし、勉強になり、とても有意義でした。」
「そんな、大げさだっ「もちろん、すべてが楽しかった時間ではありませんでした。」
イロアスがケミーナの言葉を遮る。
「それでも、それでも師匠は何度でも僕を支えてくれ、導いてくれました。」
いつの間にか、ケミーナの頬には一条の涙が伝っていた。
「本当に、今までありがとうございました!」
イロアスの顔は、涙と鼻水でぐしゃぐしゃになっていた。
「バカ野郎、最後の別れじゃないんだから、ほら泣くなって。」
それを言うケミーナも泣いているのだが。
「師匠だって。泣いているじゃないですか。」
イロアスが反論する。
「これは、眼が乾燥しただけだよ。」
2人は、お互いに笑い合い、これまでの軌跡を反芻した。
◇
「師匠、終わりました。」
イロアスが描き終わった〈フレアサイクロン〉の改造型詠唱符を掲げる。
「そうか、これでお前は卒業だ。そして、もうすぐ魔法騎士養成学園に入学だな。」
ケミーナはそっと優しくイロアスの頭をなでる。
「まだ入学と決まったわけではありませんよ。試験もやっていないんだし。」
しかも、あと1ヶ月半はある。
「お前なら主席合格出来るさ。」
ケミーナは、我が事かのように自信満々に言う。
「今思ったのですが、主席で合格したら何が良いんですか?」
今頃になって質問するイロアス。
「お前、なんで刻印について知っているのに主席の特典を知らないんだよ。」
イロアスは、魔法学については同年代の誰よりも詳しいはずだが、一般常識には疎かった。
「主席で合格すると、学費と学生寮の費用が無料になるんだよ。」
ちなみに、どのぐらいの費用が浮くのかと言うと、一般生徒の1年分くらいの費用で3年間を過ごせるくらいだ。
「へー、良い特典ですね。」
「ああ、ちなみに私は金はあまり持っていないから、主席合格した方が良いぞ。」
実際は、金貨とかの貨幣を持っていないだけで、魔力回復薬とかの超高額品は多数持っているのだが。
「……そうなんですね。」
意外そうに目を丸くするイロアス。
まぁ、別にケミーナに金をせびろうとは全く思っていなかったのだが。
「イロアス……もしかしたら、〈フレアサイクロン〉を使う日が来るかもしれない。いや、その日は近いかも…まぁ、詳しくは明日話そう。」
歯切れ悪そうに、訥々と話すケミーナ。
その様子にイロアスは何かよくない事が起きているのを感じ取った。
本編では、ケミーナの出番は少ない予定です。
その代わり、ヒロインが登場します。多分、この次の次の話ぐらいに。




