44話 みんな、まだまだね
さて、午後の授業。
食べたのはいいけど、食後だから眠くなっちゃうかな……。
また、初めは座学らしい。
校庭に体育座りで話を聞く。
「今は木刀を使っていますが、実際の真剣は木刀の重さの3倍の重さがあります」
真剣が重いのはわかる。
私も持ってるから。
「木刀でできた技も、真剣を使うと実践では全く役に立たないことが殆どです」
真剣は重いから、いくら切れ味が良くても使えないとヤられちゃう。
でも、強化魔法が使えたら、真剣でも木刀と同じように使えるのになあ。
「しかし、ゴブリンの力は以前より進化しているため、今では成人した10歳のゴブリンならば腕力的には真剣を扱うことができます」
やっぱ、剣術って力がないと剣を振れないんだ……。
「皆さんには、この学校を卒業するまでに鉄の剣が使えるようになっていただきたいと思います」
人間を最低限倒せるようにしようってことかな。
きっと、私の銅の剣は鉄の剣より軽いんだろう……。
「銅の剣というのもあります。こちらは鉄の剣より重く、切れ味も悪いです」
重いの……? 何でまた私に重い剣を渡したの? カトリーさん。
「しかし、中には不思議な銅の剣もあります。戦闘能力がないものには持ち上がらず、戦闘能力があるものには軽く持ち上がるという不思議な剣です」
なにそれ?
「剣が最低限の力があると認めないと、構えることもできないという不思議な剣らしいですが、切れ味は普通の銅の剣と同じです」
普通の剣と切れ味は同じ……。
「軽いと思ったらそういう剣です。一応、出会った時に驚かないように言っておきました」
……なるほど。
私は戦闘能力が剣が求めるレベルまでないから、持ち上がらなかったのか。
この説明の後、実際の真剣の重さをみんなで体験した。
確かに重くて振れないけど、あの銅の剣みたいに持ち上がらないわけじゃなかった。
足運びや残心などの基礎知識を実技を踏まえてひと通りミゼル先生に教わった。
その後、ミゼル先生は二人一組になるように指示を出した。
9人しかいないから、1人は私。
「次は実際に模擬戦を行います」
別に私は仲間外れにされたわけじゃなくてローテーションで対戦していくらしい。
「やあ~」
「たあ~」
みんな掛け声を上げて、戦っていく。
一戦目はどんな感じか私は見学。
フフフ……みんな、まだまだね。
剣さばきも、足さばきも私の足元にも及ばないと思った。
私の番が来て、私も戦ってみる。
相手は女の子……。
私より随分大きいけど。
「えい」
掛け声とともに、私は地を蹴る。
防具で重いけれど、それでも足だけは誰にも負けないんだから。
私の素早い動き。
相手は驚いてる。
けれど、身体が少し当たっただけで、私は弾き飛ばされる。
倒れても、私は起き上がって向かっていく。
つばぜり合い……にもならず、木刀と木刀が当たるやいなや、吹っ飛ばされる私。
相手が悪かったのかな、と思った。
けれど、誰と戦っても同じ。
体格が違いすぎる。
腕力が違いすぎる。
そして、皮装備でも私には十分重い。
私の良いところが殺されている。
一戦一戦毎に、ミゼル先生から反省点やら改善点やら、良いところや悪いところを指摘される。
各々、技術的なところを指摘されているようだ。
私の戦いを見て、ミゼル先生はこう言った。
「剣さばきも、足さばきも大したものですが、好き嫌いせずに食べて大きくなりましょうね」
「……好き嫌いはしてません」
私が一番気をつけているところを言われて、流石に腹が立った。
「……筋肉を鍛えましょう」
筋肉……私ないかも……。
身体もペッタンコだし、身体の小さい私には……。
「…………はい」
力がないのは、否定できなかった。
力って、どうやったら付くんだろう。
この授業で私は、自分の力のなさを知った。
この後はゴブリン哲学の再テストがあった。
答えが分かっているようなものだから、意味は全くわからなかったけど、テストは大丈夫だった。
そんなことより、私は剣術でみんなを見返してやりたいと思った。
苛められたわけではないし、みんな私に嫌がらせをするわけでもない。
けど、それでも、悔しくて仕方が無かった。
悔しさで満たされた心のまま、学校が終わった。
私はこの前と同じ、校門のすぐ傍の樹の下で、カトリーさんを待つ。





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