23話 少しホッとしたけど、一方でがっかりした
そんなことより、街と草原の境目へ行ってみよう。
強化魔法がないから、なんだかノロノロしているように感じる。
慣れって怖いなあ。
私も強化魔法使えればいいのに。
まあ、無理だろうけど……。
一生懸命歩く。
走ったりなんかしたら、目立っちゃう。
誰もいないけど、誰か見てるかもしれない。
念のためよ、念のため。
街と草原の切れ目についた。
結界はまだ張ってあるようだ。
何時から解除するんだろ?
昨日よりも時間が早いから、この後に解除するんだろうなあ。
スライムでも危ないから、とりあえず結界の中にいる。
昨日は考えてみたら、危ないことしてたのか~。
けれども、スライムは街の周りにはいない。
モンスターも実はそんなに争いたいわけじゃないのかもしれない。
知らないけど……。
辺りを見回しても、カトリーさんの姿はない。
まだ、来てないのかな。
何か頭上に変な感じがする。
なんだろう……アレ。
目の前の空中に何か光っているものが見える。
それが、徐々に線になってきた。
その線が繋がっていく……。
やがて空中に魔法陣のようなものが浮かぶ。
魔法陣のようなものが一層強く光って、くるくると回り始める。
更に光がボワッと強くなった。
そこから、何か出てくるようだ。
人?
おしりを下にして身体をくの字に曲げているような格好だ。
そこから、するっと手と足が抜けて……誰か降ってきた。
ドサッ。
見事におしりから落ちた。
「あいたたたた」
見覚えのある人が目の前で腰を打って痛がってる。
「カトリーさん?」
見た目はカトリーさんっぽい。
「あ。おはよう」
カトリーさんみたいだけど、なんか眠そう。
寝起きかなあ。
別人かなっていう位の感じを醸し出している。
別人っぽい人から、挨拶されたから、ちょっとすぐに反応できなかった。
「……え? おはよう」
とりあえず、挨拶は返しておいた。
「いやあ。神様は普通は寝ないんだけど、タナカミノルさんが寝たほうがいいって言うから、寝られる時に寝てるんだよ~、ふあ~あ」
寝るとそんな、寝ぼけた感じになるの?
それに、もうひとつ疑問ができた。
「え? 神様って寝ないの?」
普通は寝ない、というのが驚きだ。
「普通はね。でも、寝たほうがエネルギーは節約できるし、エネルギーの貯金もできるから効率いいんだって~」
タナカミノルという神様は、色々と特殊なようだ。
「それと、カトリーさんが落ちてきたのとは何か関係があるの?」
「学校に行くのに、ここに来るのはわかってたから、来たら魔法陣が働いてここに出るようにしておいたの」
「ああ~、時間表示がされない目覚まし時計なのね」
私が通ると、自動的にカトリーさんが転移されてくるというものらしい。
神様だから何でもありだ。
何でも、私のことをストーカーしてるわけじゃないのね。
少しホッとしたけど、一方でがっかりした。
「そうそう。そういうこと」
目は覚めてきたみたいだけど、カトリーさんの顔はひどい有様だ。





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