赤い星
翌日。今日は土曜日で学校は休みだった。
昨晩、ミユキのもとに藤堂から連絡があり、話したいことがあるからということで、一緒に昼食でもと誘われていた。ミユキは大河とイツキ、トーコにも連絡し、来れたらくるように伝えていた。
「大河はまだ来ないの?」
ミユキは少しイライラしていた。
大河が待ち合わせの場所に、まだ来ないのだ。イツキはミユキより先に来ており、トーコは途中ミユキと会って一緒にやってきた。
「大河くん、朝が弱いからなあ」
「まったく、困ったヤツねえ」
梅雨が近位六月の上旬は、暦としてはもう夏で朝晩はともかく昼間などは明らかに暑い。よく晴れた晴天の下、暑さで少し汗が滲む。
その度にミユキのイライラは募っていった。
「イツキ、電話して」
「は、はい……もしもし、大河くん?」
『イ、イツキッ! もう先輩は来てるのか?」
大河の慌てふためいた声が聞こえる。一応起きていたみたいだ。
「椎名先輩はもう来てるよ。……大河くん、早く来ないと先輩の顔が怖いよ」
『ま、まじでか? ヤベェ!』
声の向こうでドタドタと音がする。大河はすぐに駆け出したようだ。
イツキが耳からスマートフォンを離すと同時に、ミユキが大きくため息をついた。
「いやあ、すまねえ! 寝坊したぜ」
「まったく、寝坊したぜ、じゃないでしょうが。藤堂先生を待たせてるのよ」
ミユキは大河の頭にゲンコツをいれた。予想以上に痛かったとみえ、大河は殴られた頭を涙目で抑えている。
「でも大河くん、今まで寝てたの?」
「まあな。やっぱ休みなら寝るだろ」
「いくら寝てるっても、もう十二時だよ」
「寝過ぎ……」
藤堂と会うのは、ABSオペレーターがよく利用するレストランだった。店長や従業員もオペレーターで、それぞれがどこかのチームに所属していたりする。
「すいません、お待たせしちゃって――」
ミユキは、目の前の席に座る藤堂と、北高の生徒二人に向かって頭を下げた。
「いいのよ。突然だったし、ごめんなさいね」
しかし藤堂は特に気にするわけでもなく気さくに笑っていた。
藤堂の隣に座る二人の北高生は、昨日藤堂に率いられていたチーム3とチーム4の隊長だ。
それぞれ、チーム3の川島恵介と、チーム4の七瀬瑞穂という。
「まず昨日、この二チームとも、あなたたちが解除したドアの向こうに入ったの。何度か曲がり角を曲がったのちに階段があってずいぶん下まで降りたわ。その先に広いホールがあった。この辺りまでは、他のチームが侵入して情報が伝わっているだろうから、あなたたちも知っているわね」
「はい。私たちはそこまで行ってはいないですが、話には聞いています」
「その先、チーム四に援護させて、チーム3にその向こうにあった通路を突入させたわ」
藤堂の目つきが急に緊張感を帯びたものに変わった。そして、隣に座る川島がその後を引き継ぎ口を開く。
「……その通路はそう長くはなかった。すぐにまた広い部屋に出てきたんだ。僕たちはそこで見た」
「見た? 見たって、何を?」
大河は言った。
「ヤツだよ。ラージニードルさ。遠目に見ても、さすがに震えたよ。あの巨体に噂に聞く俊敏さ。かなり危険なウイルスだと直感したんだ」
「や、やっぱり……あれは凄まじいですよね」
イツキも、前に見たあの威容を思い出し首をすくめた。
「監督はすぐに退却を指示した。これは総力をあげないと、とても立ち向かうことは無理だとの判断だ」
ふたたび藤堂が話を引き継いだ。
「私は、チーム4に殿を任せてチーム3を先に退却させたわ。それで――七瀬」
「はい。私のチーム4は、チーム3を先行させて、弾幕を張って防衛しつつ退きました。その際にチームの一機がラージニードルに狙われ餌食にされました。その怪物が屈んだその瞬間、私は見たのです」
「……な、何を見たんだ?」
大河は身を乗り出して聞いた。
「――頭頂にルビー……『赤い星』を見たのです」




