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共同作戦

 ようやくホテル内部に入ろうと行動に入ったところで、風来坊の田沢が声をかけてきた。

「君たちはどうするん?」

「例の場所を調査するつもりです」

 ミユキが答えた。

「あのラージニードルが出たって場所かい。こんなこと言って悪いとは思うけど、本当に出たの? 正直なところ俄かには信じられないんだけど……」

 田沢の言うことはミユキにはよくわかる。

 岡山県のワールドは、そんなに危険なウイルスはみられない。特にこの光の帝国ホテルでは、中型クラスのウイルスは出てくるが、大型は目撃例そのものがない。

「僕も信じられなかったです。でもあの大きさは間違いないと思いますよ」

 イツキは自信を持って言った。ミユキとともに目撃者だが、あの迫り来る恐怖は絶対に間違いないと感じている。

 武井のABS、サジタリウス2がミユキのシュトラールに近づいてきた。

「どうだい、ミユキちゃん。一緒にいかない?」

「トーマスとですか?」

「ああ、それに風来坊も。協力していこうぜ。俺もちょっと見てみたい。危険なウイルスなら、数が多い方が絶対に有利だ」

「そうですね。それじゃそうしましょう」


 東高三機、チーム・トーマス五機。チーム風来坊四機。全部で十二機という大所帯であの未踏のエリアを目指す。

 目的の場所までは、中ほどまで人類側の支配エリアになっており、ウイルスは基本的に出現しない。しかし、それ以降は手強いウイルスが徘徊するエリアになる。

 前に南高が入り込んで壊滅させられた辺りもそうで、実際その近くを通る。

 小型で大して強くないラビットやフロッグなどなら脅威ではないが、中型のクラッシャーなどは強敵で、油断するとあっという間にやられてしまう。

 今回はその辺りを通ることになり、この全部で十二機という多数のABSで進んでいけるのは非常に心強い。


 三チームは、大して手こずることもなく警戒エリアを通り、問題の場所に近づいていく。

「ここから、あの部屋に入ります」

「部屋? あの部屋から行けるのか?」

 ミユキの言葉に、田沢と武井は不思議がった。

「そうです。あの部屋の中に通路があったんです」

「マジでか……?」

 今まで見つからなかったエリアへの入り口、それは隠し通路の先にあるのだった。このホテルはあまりそういったギミックがこれまでなかったため、ありがちにもかかわらず、誰もそれを調べなかった。

 かくいうミユキたちも、付近で戦闘中にクラッシャーとの戦闘で手榴弾を使った際に部屋の壁が破壊されて、たまたま見つけただけだった。

 中にウイルスが潜んでいる可能性を考えて、ライフルを構えつつ、チーム・トーマスのメンバーで部屋への突入を行ったが、中にはウイルスはいなかった。

 安心して入っていくと、ミユキのシュトラールは、あまり大きくない壁に開いた通路への穴の前に来た。

「この先です。まだもう少しありますよ。それじゃついて来てください」

 シュトラールが先行して通路を進んでいく。一番後衛にいて、みんな部屋に入るのを見届けて部屋に入ったイツキのイェーガー2と大河のフェンリル。

 一緒に歩きながら、大河はイツキに話しかける。

「……なあ、そのラージヌードルってウイルス、出てくるかな?」

「ニードルだよ。ラージニードル。カップラーメンじゃあるまいし。確かに間違えやすいのかもしれないけどさ」

「あはは、そうだった。なんかすぐ間違うんだよなあ」



 狭い通路をしばらく進むと、急に大きく開けた。

「ここは広いな。……あれは吹き抜けか?」

 武井のサジタリウス2が、シュトラールに続いて入ると、目の前に大きな口を開けている吹き抜けに気がついた。

 近づくとかなり深い。何メートルあるだろうか、十メートルや二十メートルどころではない。

「ここです。ここから下の階――二階まで降りるんです」

「ここか……」

 武井のサジタリウス2は少し間をおいて、仲間から大型の照明を受け取ると、暗闇に沈む吹き抜けの底を照らした。

 下は、ホテルのフロアのような内装にはなっておらず、床も壁も金属板で覆われている、冷たく無機質な空間だった。上から見る限りウイルスは見当たらないが、通路からウイルスが出てきてもおかしくはない。

「かなりあるな。ミユキちゃん、どうやって降りたんだ?」

「ロープです。現状それくらいしかないですから」

「なるほど。そりゃそうだ」

 そんなミユキと武井の会話の後、イツキはイェーガー2の背負うバックパックを下ろし、中からロープを取り出した。こういった上り下り用に使えるような丈夫なもので、両端に固定用のクランプが取り付けられている。イェーガー2が部屋にある太い柱に、ロープをまわすとクランプで固定した。そして反対側を吹き抜けに落とした。

「準備できました。行きますか?」

「よっしゃ、俺から行くぜ!」

 大河のフェンリルが、後ろから周りのABSを押しのけて出てきた。

「待ちなさい。私が最初に降りるわ。安全を確認したらみんな順番に」

「えぇ、先輩かよ」

 大河は文句を言いつつ、素直に従った。

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