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「いよいよ学園祭が明日に迫りました。各クラス招待状を送ったり、準備は万全ですね。」
「勿論です。今年の学園祭は生徒達の取り組みが素晴らしく、理事長先生が満足する事、間違えありません。」
学園祭が前日に迫った夜、先生達は最後の打ち合わせの為に職員室に集合していた。その中には、ソフィア達の担当であるサラの姿もある。
「そうですか。所で、Bクラスで妙な噂を耳にしたのですが、問題は無いんですか?」
「ご安心下さい。噂は所詮噂です。私の名に置いて、不正は一切ないと証言しましょう。」
理事長の目が揺らいだことに、誰も気が付かない。理事長はどんな噂が流れていると、明白に言ったわけではない。
(不正は一切ないですか。幾つもある噂から、その噂を選びましたか。まあ、噂が真実かどうかは明日には明らかになる。焦る必要はないでしょう。)
心の中で溜め息を吐きながらも、理事長はこの問題を放置することに決めた。
「それとサラさん。貴女の担当するAクラスにも面白い噂があるわね。」
「私も聞きましたよ。一人の生徒が女王様のように振る舞い、他の生徒達を扱き使っているとか。」
「そんな事実はありません。ソフィアさんと言う名の生徒の持つ才能を、他の生徒達が慕っているだけです。」
「お止めなさい。」
理事長のひと言に、一触即発だった雰囲気は霧散する。Aクラスに関して、理事長が聞きたかった情報が得られなかったが仕方ない。それより今は、この状況を解決する方が先だ。
「本日の会議はこれで終了します。先生方も明日は準備があると思うので、早く就寝すること。分かったら解散。早く部屋に戻りなさい。」
もう話し合う内容はない。先生が気まずい顔をしながら、一人また一人と部屋に戻る。サラも少し熱くなりすぎた自覚があるのだろう。小走りで部屋から出ていった。
「私がいない間に色々と変わってしまったのね。」
理事長が自分の机の引出しを開けると、3枚の封筒が出てきた。その内のライトブルーの封筒を手にすると、理事長はゆっくり封を開ける。中には丸っぽい可愛らしい字で、学園祭への招待状が書かれていた。
「私も早く彼女に会いたいわ。…お休みなさい。貴女達も早く寝るのよ。」
理事長は机の上にそっと招待状を置くと、自分の寝室へ向かった。部屋の中に黒い影だけが2つ残る。影は招待状を見付けると、そっと自分の胸に抱き寄せた。
(ソフィア・ルリアミーナ。)
もうじき会えるのだ。招待状の送り主の名を手で撫でながら、影は外を見上げる。彼女との再会を祝福するように満月がキラキラと輝いていた。
(俺の気も知らずに、彼女は呑気だな。俺はあの野望の為に利用できる物は何でもする。イオ・ヒカフル。リオ・ヒカフル。お前達を利用させてもらう。)
もう1つの影は不気味に微笑む。引出しから残りの封筒の送り主を確認すると、封筒を握り潰した。2つの影の思いが交錯しながら、時間だけが過ぎる。学園祭開始ののカウントダウンが始まった。
閲覧ありがとうございます。
<オマケ>お手伝い
イ「ん~。」
リ「どうしたんだ?」
イ「実は最近他の班の連中の手伝いをしているんだが…。」
リ「だが?」
イ「何故か野菜や肉を切る仕事しか回ってこない。他の生徒は忙しそうなのに、どうしてだ。」
リ「まあ気にするな。」(他の人はイオみたいに一瞬で野菜や肉を切れないからな。)
仕事が早いことに気が付かないイオを暖かい目で見つめるリオだった。




