130「風間蓮二《かざまれんじ》」
「な、何なんだ、こいつら⋯⋯」
私は炎呪さんから「唐沢君と胡桃沢君の探索者レベルはB級ランカーに成り立てのレベル50前半程度だから」と聞かされていたが、実際に『新進気鋭』の唐沢君と胡桃沢君の実力を見て驚愕した。
炎呪さんに一杯食われたというのはその通りではあるのだが、しかし、私的にはすごく興奮していた。
しかし、何より凄かったのが、
「こ、これが⋯⋯新屋敷ソラ」
あの『探索者世界会議』の事件での活躍で、S級ランカーへと昇格した少年。現在は、唐沢君と胡桃沢君のフォローとして後ろについているだけだが、彼の動きはもちろん彼から漏れ出る『強者オーラ』を知覚するだけで、彼のただ者じゃないことだけではハッキリと理解できる。
「私と同等⋯⋯か? いや、それ以上かもしれんな」
蓮二はそう言ってニッと笑顔を浮かべる。
「す、素晴らしい⋯⋯! まだ10代の若者でここまでの強さとは! これならこの子たちが成人を迎える頃には、この日本の探索者も、日本のギルドも、世界に引けを取らないものになっているかもしれない!」
私たち『乾坤一擲』は、国内で数の少ないS級ランカーの探索者集団ということもあり、海外のギルドから『助っ人』という形で呼ばれることがあった。前回のアメリカの『魔物暴走』のときもそうだ。
一応、私たちは世界のギルドから認められているが、それ以外の日本の探索者や探索者集団は海外からは『ランク実力不足』と揶揄されてバカにされていた。
私はこの扱いがとても腹立たしかったが、しかし、悲しいかな日本は良くも悪くも昔から『平和ボケした民族』が理由なのかどうかはわからないが、優秀な⋯⋯というか、『本物の実力を持った探索者』がほとんど育たなかった。
唯一、私が認めているのは、ウチの連中以外では『不知火不師斗』くらいだ。
私はずっと日本の現状を変えたいと思っていた。そして、そんなときに知ったのが⋯⋯⋯⋯新屋敷ソラであり、この『新進気鋭』というクランだった。
そして、今日——この『新進気鋭』の力を見た時確信した。
「日本の探索者の未来は明るい!」
********************
結局、今日の探索は20階層で終了となった。
「「「ありがとうございましたー!」」」
「どういたしまして」
三人が私に元気に挨拶をする。⋯⋯ソラ君は、まークールな感じだが。
「じゃあ、明日からよろしく頼むよ。唐沢君、胡桃沢君!」
「「は、はい! こちらこそ、よろしくお願いします!!」」
ちなみに、20階層まで探索を行ったがそれまでに我々が『助っ人』で入るようなことは一度もなかった。
とはいえ、苦戦していなかったというわけではない。実際、唐沢君と胡桃沢君だけでは少し実力不足な場面が何度もあった。しかし、そんな時はソラ君が絶妙なタイミングでフォローに入り、二人の足りない分を完全に補っていた。
「⋯⋯ソラ君の本当の実力を見たい」
正直、私としてはソラ君の実力をもっと見たかったというのが本音だ。だが、彼は明日からは我々のクランに帯同するのではなく、単独探索者としてSランクダンジョンに挑戦するらしい。
「フフフ⋯⋯探索者デビューして1年経たない10代の少年が単独探索者でSランクダンジョンへ⋯⋯か。漫画でももう少し自重するぞ?」
私は新屋敷ソラの規格外の成長を一人ボソッと皮肉る。しかし、
「これは、私も負けてられないな。久しぶりに単独探索者として修行しちゃおっかな」
昔、まだC級探索者でB級昇格に手こずっていた頃、自分の限界を突破するために『単独探索者』になって自分を追い込んだ。そして、一人でいくつもの死線を潜り抜けて強くなった⋯⋯⋯⋯あの頃を思い出す。
「それくらいしないと、ソラ君にはすぐに追いつかれるだろうね。フフフ⋯⋯久しぶりに⋯⋯本当に久しぶりだよ⋯⋯こんな気持ちは!」
こうして、ソラ君との帯同を終えた。
「生活魔法で異世界無双〜クズ魔法と言われる生活魔法しか使えない私が、世界をひっくり返すまでのエトセトラ〜」
https://ncode.syosetu.com/n6900id/
毎日14時更新となります。
よかったら、こちらもお読みいただければと思います。
mitsuzo




