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第13話 交差点

13


 狭山市駅から四五分ほどで、池袋に着いた。

 途中、所沢で西武池袋線に乗りかえた。平日の九時台。都内に近づくにつれ、車内は混み合う。千尋は下を向いたり、目を閉じたりしながら、人を見ないようにしていた。

 

 西武池袋駅。

 平日、土日、時間帯問わず、人が溢れている。改札を降りると、東口交差点。ドンキホーテが広がる。国道五号線を三〇五号線を自動車が走りぬける。そびえ立つビル。電気屋や消費者金融の看板。くすんだ匂いで千尋の注意が散る。

 慣れた光景だが、いつきても落ちつかない。しかし、少女が隣にいる。めぐみ。ぎゅっと握った手のひら。そのあたたかさが不安を和らげていた。


信号を渡り、東口駅前交番を通る。街頭のビラ配り。店舗のアナウンスが場外まで漏れる。千尋は動機がし始めるが、めぐみの体温に意識を集中させて、難を逃れる。


 六〇階通りへ続く交差点。信号を待つ。学校は目の前。「英明学園」と、大きな看板が眼下にある。交差点に立つ丸大ビルの四階から八階が学校である。校舎はない。生徒数は四百名以上いるが、全校生徒が集まることはない。スクーリングは学年やクラスごとに日にちが分けられている。毎日行われている授業はサポート授業という。この授業は、出席日数にはカウントされない。学習支援と、生活リズムの構築が目的である。よって、熱心に通う生徒は限られている。


 学園は、現役生徒のみで構成されている。通信制高校だが、大人はいない。英明学園は、不登校やひきこもりの生徒、あるいは、全日制生高校に馴染めなかったり、就業しつつ高校へ通う子供をターゲットにしている。


 千尋やめぐみもまた、そこに含まれる。この学校へ進学したのは琴音の口利きがあったからである。毎日、学校へ登校することが、社会への適合に役立つ。琴音の助言を二人は守っている。

 

 信号が黄色になる。交差点は四つの道へ続く。駅へ向かう道。南池袋へ向かう道。ジュンク堂へ進む道。千尋は下を向いている。めぐみは真っ直ぐに前を見つめている。


 瞬く間に青になった。千尋とめぐみは歩き出す。

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