episode9
この回の話を考えて書いている時ふと気がついたことがあります。こういうシリアスな話苦手みたいです。
不屈のHERO episode9
大神を倒し、千道と言う師匠に匹敵する程の男に出会った次の日。俺は師匠に頼み込んで修行することにした。ちなみに学校は休んだ。
episode9
「取り敢えず修行をつけてやるがまずは、春ちゃんを鍛えてやれ。」
「えっ?私ですか?」
「そうだよ。春ちゃんには接近戦にはナイフでの攻撃しかないだろ?ナイフを取られた時の春ちゃんはただの身体能力の高い女の子だ。だから凌に体術の基本ぐらい習っておいて損はない。」
「確かにそうだよな。それより俺なんかで良いのか?」
「ああ、俺は冬月ちゃんの修行を手伝わないとけないからな。刀相手なら俺の方がいいだろ?」
「うむ、頼むぞ綾鷹!」
「任せておけ、それなりには強くしてやる。」
そういうことで俺達の修行(主に春と冬月の)が始まったのだった。
「ところで春って人を殴ったことある?」
「ないですよ。蹴ったことはありますけど……。」
「なら一回俺を殴ってみろ!」
「ええっ!?」
「大丈夫大丈夫。気にしなくていいからほら。」
と俺は仁王立ちで待つ。春はぎこちなく構える。
「えいっ!」
そして掛け声と共に目を瞑ったまま殴った。春の拳は俺の腹に当たるが全く力のこもっていない拳だった。
「春、目を瞑っちゃだめだ、そんなんじゃ拳に力が入らないだろ。まずはそれから直すか。」
「はい。よろしくお願いします、凌くん。」
俺による春の修行が始まった。初めはみんなこんなものだ。俺もそうだった。そしていつもこうやって教えてもらっていた。
「まずは力を入れるのは目じゃなくて下っ腹だ。目を閉じて相手を見失うのが1番怖いんだからな。それじゃあもう一回な。」
「うん。それじゃあ行くよ!」
「おう!」
春は拳を作り大降りではあるが力のこもった拳だった。
「なかなかのパンチだったぞ春!それじゃあどんどん行こうか!」
その後、俺の知っている全ての基礎を教え込んだ。
同時刻冬月と綾鷹は……。
この男は何故こんなにも強いのだ……と考えてしまうほどに綾鷹は強かった。私の刀術も全くと言っていいほどに通用せず、私は心が折れそうだった。
「そんなに落ち込むな冬月ちゃん。俺と冬月ちゃんとは違うんだぞ?」
「それはわかっている!だが何故それ程までに強いのだ綾鷹。私だって今まで春のためにこの身を鍛えてきたというのに!」
「待て待て。そんなに焦ることはないぞ冬月ちゃん。」
そう言ってその場に座り込んだ。
「いいかい冬月ちゃん。人それぞれ成長するスピードは違う。それに……冬月ちゃんは何の為に強くなりたいんだ?」
「私は……今の私には強くなりたい理由がわからない。少し前までは春のために強くなって守ってやらないとダメだと思っていた。けどこの前の戦いの時……春は自分の体を張って凌を助けようとしたあの姿を見て私はもう必要ないと思ってしまった。」
体の力が全て抜けて糸のきれた操り人形のようにその場に座り込んでしまった。
「自分の戦う理由がなくなり、守るべき人が自分の手を離れていった。……俺にもその気持ちは分かるよ。でもなその答えが見つからないのであればそれで終わりなんだ冬月ちゃん。」
「…………私はどうすれば良いのだ。」
「俺が言えるのは一つだけだ。それはとても簡単でとても難しいことだ。……自分と言う存在と向き合いわかり合う事だ。この意味が理解出来るまで修行は中断だ。」
「私は………まだここで終われない。だから今はそれしかないんだったら私はやるよ。」
「そうか。………ならこれが一番だろうな。座禅だ。自分の心と向き合うならこれが一番。」
「わかった。」
そして自分と言う存在と向き合う修行に入った。
3時間ほど経った凌と春。
俺は春の才能が少し怖くなった。教えたものをすごい勢いで自分のものにしていく。この3時間で俺が学んだほぼ全てのことを身につけたのだ。
「どうだこっちの様子は?」
そこに師匠が腕を組みながら歩いてきた。
「あれ?冬月の修行は?」
「今はちっとばかし休憩中だ。それよりも俺がみたところ春ちゃんすごいスピードで成長してるみたいだな。」
「そうなんだよ!教えたこと全部自分のものにしていってるんだよ。」
「そうか。んじゃちょっと待ってろ凌。ちょっと俺は春ちゃんと話がある。後で呼びに行くからお前は冬月ちゃんのところ行ってやってくれないか?」
「別にいいけど。」
そして師匠は春に近づいて何かを話していた。その会話の内容に少し興味をそそられながら俺は寺の前にいるであろう冬月のところへ向かった。そして冬月を見つけ呼びかけたのだが………。
「よお!冬月…………?」
冬月はすごい集中力で瞑想していた。俺の呼びかけにも耳を傾けない。っと言うよりも聞こえていないようだ。
「これは……邪魔しない方がいいな……。」
俺は冬月の邪魔にならないように少し離れたところで腰をおろした。
凌が冬月のところへ向かったあとの2人。
「なあ、春ちゃん?」
「何ですか綾鷹さん?」
「ちょっと聞きたいんだが春ちゃんが戦う……この修行する理由を教えてくれないか?」
俺は、春ちゃんに問う。そして春ちゃんは迷いも曇りもない眼で俺にこういったのだ。
「強くなりたいからです!強くなって私の事を守ってくれたお姉ちゃんを、今私の事を守ってくれている凌君を……逆に守ってあげれるぐらい強くなりたいからです!」
春ちゃんの戦う理由、その想いが伝わった。彼女がどれだけあいつらの事を想いその答えを導き出したのか。だが俺はあえてその理由を聞いてみるのだ。
「どうしてそう思うんだ春ちゃん。」
「私は弱いです。身体も心も。そのせいで私はお姉ちゃんに迷惑をかけてきたと思うんです。苦労をかけてきたと思うんです。だから私は強くなりたいと想ったんです!私のこの弱さを強さに変えて…私の大切な人たちの為に!」
やはりそうだった。いや……俺の想っていた以上の事を想っていた。春ちゃんは、身体だけじゃない心も良い方向に強くなっているのがわかった。
「良い答えだよ春ちゃん。それじゃあ凌を連れてくるその間少し休んでおくといいよ。」
「はい。」
凌も春ちゃんも俺の知らないところでどんどん強くなって行ってる。あとは、冬月ちゃんだけだ。さて、自分の戦う理由を。その想いを見つける事が出来るかな。
瞑想に入ってすぐの冬月。
私の中のもう1人の私を探す。それがどれだけ難しいことなのかやってみてわかった。私の中は広く深い。真っ暗で何もなかった。こんなに何もない空間に少し不安が広がり暗闇が濃くなっていく。その中で自分という存在を創り出してみた。自分とは一体どんな人間でどんな人生を歩みどうやって生きているのかを。すると、周りの景色が一変した。広く綺麗な湖。透き通った穏やかな空。そしてそこに立つ彼女。
"『やっと会えたね』"
そう言ってにっこり笑う彼女。
"私はそんなに可愛く笑う事はできないと思うのだが。"
"『そんな事ないわよ。やれば本当は出来るのよ。だって私は貴方なんだから。』"
彼女は私を指差し笑う。その笑顔が私に何かを伝えようとするだけど私にはまだわからない。
"『貴方がここに来た理由はわかってるわ。でもねそれは私と向き合う事でわかることじゃないわ。だってそれは貴方の想いなんだから。私にはその想いがわかるでもねそれを伝えてしまっても貴方は理解することも納得することもできないのよ。』"
"何故?私はお前で、お前は私なのだろ?だったら………。"
"『それは自分で気づかないといけないものなの。私を見つめ直すことで貴方自身で気づかなくては意味がないものなの。だから私は今から貴方の全てを映す鏡になってあげる。この鏡は貴方を惑わせて誘惑して混乱させるかもしれない。でもねそれにも負けないで貴方は見つけることが出来るわだって貴方はその答えを知る為の鍵をもう持っているのだから。』"
そうゆうと彼女は消え周りの風景も変わる。そして見えたのは私の幼い時の情景。仲間達と苦しい実験も耐えて我慢していた頃。その頃は仲間達がいるだけでどうな実験でも我慢出来た。そしてそんな中でも仲間達と笑い合った自分がいた。そしてすぐに情景が変わる。次は今までお世話になってきた人達と笑う自分だった。今までとは違い仲間達と仲良くしていた時以上に楽しかった。そして今へと情景が変わる。そこにはみんなと笑い合い助け合っている私がいた。どの私もいつも笑っている。彼女のように。そして彼女が私の前に現れた。
"『何かわかった?』"
"少しだけ。わかったような気がする。"
"『それを私に教えてくれる?』"
"ああ、いいとも。私は施設にいた頃の仲間達が大好きだ。私が追手から逃げている時に親切に助けてくれた人達が大好きだ。そして私を今助けてくれる綾鷹や凌や春が大好きだ。こうやって笑いあえる今が私は大好きだ。だから私はこんな悲劇を作り出すあいつらを倒したい。私みたいな悲劇を産まない為に。みんなが笑顔でいる為に。みんなと笑いあえる未来を私は作りたい。"
"『うんうん。それでこそ私!その想い………絶対に忘れないでね。そろそろ戻ったら、貴方の笑顔にしてあげたい人が待ってるよ。』"
"ありがとう。お前のおかげで私は見つけることができた!本当にありがとう。"
"『もう!そんなこと言わないでよ恥ずかしいじゃない!さあ、早く行ってあげて。』"
"ああ。また会おう!"
"『私は貴方。貴方は私だよ。いつでも一緒だよ。』"
私は目蓋をゆっくりと開く。その時目の前にいたのは凌だった。
「やっと戻ってきたか!何時間瞑想してんだ冬月。」
「心配してくれるのか?」
「そりゃあな。それより俺もそろそろ春の修行の続きしないとダメだから行くな。冬月も来るか?師匠もそこにいると思うけど?」
「うむ。一緒に行こう。綾鷹にも話があったからな。」
私と凌は綾鷹と春の待つ場所に向かった。自分の想いを胸に秘めて。
「ん?冬月じゃないか。もう良いのか?」
「私にも出来たよ私の戦う理由。」
「聞かせてもらえるか?」
「私の中の私と同じ事を聞くのだな。まあいい。私の戦う理由は…それは私悲劇を生まない…みんなが笑顔でいられる未来を作る為だ。」
「うん!合格だ冬月ちゃん!なかなか良い答えが出たみたいだな。」
「私1人では無理だったよ。私の中の私のおかげだ。」
「それじゃあ戦う理由が出来たところで俺と手合わせ願おうか!」
綾鷹が構えた。私も刀を抜いた。
「手加減はできないぞ。」
私はすぐさま刀を地に走らせながら綾鷹に向かう。勝負は一瞬。綾鷹の凄まじい速さの拳を紙一重で避け首元に刀を置いた。
「………良い反応だな。」
「どうも。」
「でもまだまだ俺も負けてはいないぞ。」
そう言ってにっこり笑う綾鷹。お腹のあたりに何かが当たる感触があった。それは綾鷹の手刀。そして片方の手はもう私の刀の鍔の部分においてある。このまま私が斬りかかったとしても刀は綾鷹に届く事もなく、手刀で私はやられていたと言う事になる。
「だがさっきまでと動きが全然違うぞ!自分でもわかっているだろ?」
「そうみたいだ。体が軽く思いどうりに動いた。これが戦う理由を見つけた結果なのか?」
「そうだな。やはり目的がない奴に強くなる資格なんてないんだよ。それだけの信念と想いがあるからこそ強くなれると俺は思っているよ。」
そう言うと構えを解いて私の頭に手を置いた。
「ありがとうございました。これからもよろしくお願いします!」
私は初めて綾鷹に頭を下げた。この男は、私を強してくれる。この男にはそれだけの力があると思えた。
春と凌の休憩中。
「ねえ、凌君?」
「ん?何だよ春?」
「ありがとうね。」
「何だよ改まって。」
「だって私は凌君にいっぱい助けてもらってるから。お礼ぐらいしてあげられないから。」
「別に良いのにそんな気にしなくて、俺も春達には感謝してる。俺は今まで平穏すぎるこの世界が退屈で仕方がなかった。春達がここにきてくれた事で俺の人生が世界が変わったんだよ。こっちこそ感謝してるよ。ありがとう。」
そう言って俺は頭を下げた。深々と本当の感謝を込めて。
「ねえ、聞いても良い?何で退屈な世界が嫌だったの?」
「それは、俺はさ、ただ何の転機も訪れず過ごす生活が物凄く嫌だったんだ。じいちゃんも言ってたよ。昔はもっと人が人らしく生活し活気に溢れた世界だった。けど今はみんなが下を向いて上をみようともせず作られたレールを何の感情もなく進んでいる。俺はそんなの嫌だ。誰かに決められたレールなんて歩いて行きたくなかった。自分で創る、掴み取るそんな明日が俺は欲しかったんだ。」
「すごいね凌くん。」
「ん?ああっ!ごめん!熱くなって!けど俺は今春達に出会って自分で自分の未来を、明日を掴み取っているようで好きだよ。」
「私も好きだよ。凌くんにこうやって出会えたこの世界が。」
春は俺に微笑みかける。俺はこれをこれを守って行きたいのだ。
そう俺は今春や冬月を本気で救ってあげたいと思っている。いや、救ってみせる。春や冬月が幸せに笑顔でいられる為に。
続く。




