第四話 魔力が最強ですと……!
やりすぎたかも……。
第四話 魔力が最強ですと……!
翌日、僕らはこれからどうするのかを宿屋で話し合っていた。
「冒険者になるべきだと私は思うな。白河たちはこの世界のことを知りたいのだろう? だったら冒険者が一番だ」
スフィアが昼近いのにまだ眠そうな顔をして言う。こころなしか僕への目がきつい。求めに応じなかったからってひどい。
「冒険者か。良いのう。わくわくするのう。白河君、スフィア君、さっそく冒険者になるのだ!」
博士は元気に叫ぶと巾着から新しい白衣を取り出して着た。白衣は博士の正装らしい。まずいぞ、このままでは冒険者なんて危険極まりない職業にされてしまう。
「あの、博士、スフィアはともかく一般人の僕が冒険者になるのは厳しいと思うのですが?」
僕の進言に博士は不適な笑みを持って答えた。
「なにをヘタレておるのだ! 男なら戦いや冒険にロマンを感じるはずだぞ!」
さすがに博士だ。人の意見はほとんど聞かない。この人と出会ってから一日ぐらいしか経ってないが、行動パターンが読めてきたぞ。
博士はその後宿屋のおじさんから冒険者になる方法を聞き出し、宿屋を飛び出して行った。
「見ろ、ここが冒険組合だ!」
博士はある建物の前で立ち止まった。
こじんまりとしていて、ヨーロッパの田舎の役場といった雰囲気の建物だ。僕はヨーロッパに行ったことないけど。
博士は建物の扉を勢いよく押し開け、中に威風堂々と入っていった。僕とスフィアも後に続く。
中では木製のカウンターに受付の人が座っていて、待合席のようなスペースにガタイの良い男たちがたむろしていた。
「いらっしゃいませ。何かご用ですか?」
受付の人が僕らに声を掛けてきた。赤い制服のよく似合う人だ。加えて目が大きくて全体的にかわいらしい。
「新しく冒険者としてこの二人を登録して欲しいのだが」
博士は僕とスフィアの方を示した。自分はならないらしい。ずるいぞ博士。
「わかりました。ではまずこの書類に必要事項を書いて下さい」
受付の人は書類を差し出して来た。困ったな、読めないぞ。スフィアを近くに引き寄せ耳打ちする。
「スフィア、代筆してくれないかな。字が書けないんだ」
「私も人間の文字は不得手でな。精霊文字なら書けるのだが……。すまないな」
精霊さんたち人間のことにもっと興味を持とうよ。
どうしよう、受付の人に素直に字が書けないと言うべきなのか。
「もしかして、あなたたち字が書けないんですか?」
ペンが動いていないことに気がついた受付の人が話し掛けて来た。僕とスフィアは恥ずかしげに小さく頷く。
「やっぱり。そういう人結構いるんですよ。最初から言ってくれればいいのに」
受付の人は笑いながら書類とペンを自分の手元に引き寄せた。
「名前と年齢、出身地を言って下さい」
出身地なんてどうすればいいんだ? 日本なんて言えないぞ。
「名前はスフィア、歳は十八、出身地はニカラ村だ」
「結構です。そちらの方もどうぞ」
スフィアはよどみなく答えた。どうしてそんなにすらすらと答えられるんだ。
参考にしようと思った僕は受付の人に少し時間をもらうとスフィアに話を聞いた。
「どうして精霊のスフィアが質問に答えられるんだ?」
「名前以外は全部出まかせだからな。なに、英雄クラスの活躍をしている者でも出身がよくわからないのがいるとさえ聞いたことがある。大丈夫だろう」
そうするしかないな。僕は受付の人に出まかせを言うことにした。
「用はすみましたか?」
「まあ、なんとか」
「では改めて。名前、年齢、出身地を答えて下さい」
「名前は白河、歳は二十歳、出身地はウルト村です」
受付の人は適当な地名を言ったにもかかわらず、疑問は感じなかったようだ。すぐに大きな水晶球を取って来る。
「次は能力の測定です。この水晶に触って下さい」
スフィアが水晶に触れた。水晶に文字が浮かび上がり、さらにどんどん変化していく。
「筋力百二十、魔力三百、知力百八十! すごい! 一般の平均を大きく上回ってますよ! これなら期待できます」
受付の人が満面の笑みでスフィア見つめる。スフィアは恥ずかしそうに顔を赤らめると僕を見てきた。測定しろと言いたいようだ。
僕はおっかなびっくり水晶に触れた。
「筋力八十、魔力測定不能?」
受付の人は顔を歪めると水晶を引っ込め、また新しい水晶を持って来た。先程の物よりも一回り大きい。
「すいません。さっきの水晶、調子が悪い見たいでして。これに触ってもらえますか?」
僕はもう一度水晶に触れた。受付の人は水晶に浮かんだ数値を見て顔をまた歪めた。
「これもだめなの! 困ったなあ。少し待ってて下さいね、すぐに戻りますから」
受付の人はカウンターの奥へと向かった。奥からガタゴト物音がしてくる。
やがて彼女は体の半分ほどもある水晶球を額から汗を吹き出しながら持って来た。そしてカウンターの上に置く。カウンターが嫌な音を立てた。
「はあ、はあ、これで測定しましょう。これでもだめだったら今日のところはあきらめて下さいね」
僕は測定できますようにと祈るような気持ちで水晶に触れた。
「筋力八十、魔力一万二千、知力百十……魔力一万二千ですってぇ!」
受付の人はカウンターに身を乗り出し僕を殺人的な目で睨んで来た。
「あなた人間ですか! 冗談は顔だけにして下さいよ! ふざけ過ぎです! 魔力一万二千なんてどこかの神さまですか。はっきりしなさい!」
そんなに睨まないでこっちもよくわからないんだから。
僕はスフィアに助けを求めようとしたがウインクで返された。助ける気なしですか。
「落ち着いて下さいよ! 僕は人間ですから。神とかじゃありませんよ」
僕は受付の人を落ち着かせようと肩を抑えつけた。これがいけなかった
「さわらないで! なんか悪いことするつもりですね! ああ、お父さん、お母さん、先立つことをお許し下さい……」
受付の人は意識を失ってしまった。
僕らの冒険者としての初仕事は冒険組合職員の看病をすることにだった。
感想・評価お願いします!




