第三話 街に着きました
すいません!主人公が強くなるのはもう少し後になります
第三話 街に着きました
僕らは街の前まで来ていた。森の近くの草原にある街で、周囲を大人の背丈より高い塀で囲まれている。
「あれがこの辺りで一番大きな街、リンドンだ」
「まさにファンタジー! 素晴らしいぞ!」
博士は顔を真っ赤にして心臓に悪そうなほど興奮している。
そういう僕もテンション上がっているけれど。
スフィアはお上りさんのような僕らに苦笑しながらも、街の入口のところまで案内してくれた。
「ここが街の入口だ。門番に顔を見せて犯罪人かどうか調べてもらえば通れるぞ」
スフィアは門の横にいる大柄な門番の男を見て言った。
「精霊なのにずいぶん詳しいですね。
何かあったんですか?」
「いや、暇だから時々街を覗くんだ。人間の街は退屈しないからな」
この世界で犯罪なんて犯しているはずのない僕らは無事に門を通り抜けて街の中に入った。街には二階建てぐらいの石造りの建物が建ち並び、道路には石が敷き詰められている。もう夕方なのだが人通りは多く、中には酔っ払いのような人もいた。
「うおおっ! 中世の町並みそのままではないか。」
博士、叫ばないで下さい。周囲の人の視線が冷たいです。異世界に来て早々、変質者扱いされたくありません。
「さっきからあの御仁は叫んでばかりだがご主人様たちはよっぽど田舎からきたのか?」
「なんというか、うーん……。そのうち話しますからとりあえずご主人様はやめてください。白河で良いです」
そのうちとは言ったが話すべきだろうか。異世界なんて現実的でないしなあ……。
「そのうちと言わず今教えてやれば良いだろう。スフィア君、わしらはわしのスーパーな科学力で異世界からきたんだ」
博士? いきなり爆弾発言はやめて下さい! スフィアだっていきなりのことに引いてますよ……。あれ、どうしてスフィア目を輝かせているの?
「すごい! 異世界から来るなんてあなたは大賢者なんですね!」
スフィア適応力高いのですね。博士のテンションについて行ってますよ……。
「ははは! わしは知能指数四桁だからな! 尊敬したまえ」
あの、知能指数四桁って人間じゃないと思いますよ?
「知能指数ってよくわからないがすごいんだな!」
スフィア、博士をのせたらダメですよ。何をするかわからないんだから。
「そうだろそうだろ。よし、わしのすごさを分からせてやろう」
博士は怪しげな銃みたいな物体を取り出した。博士の目が不気味に光る。
「特別にわしが最近開発したこの波動銃の威力を見せてやる!」
博士は波動銃の部品をいじった。銃口に光が集まってくる。銃が澄んだ金属音を発し始めた。やばい気配がする!
「博士! やめて下さい! そんなやばそうな武器使わないで下さい!」
「そ、そうだな。すごさは十分わかったから使わなくて良い!」
「なんだ、つまらん」
博士は残念そうに波動銃を巾着にしまった。世界の危機は救われたようだ。
「あ、危なかった。とにかく宿へ行って今日のところは休みませんか?」
早く落ち着けるところに博士を連れて行かないと危険だ! 危険すぎる!
「それもそうだな。宿を探すとするか」
博士は納得したようで、僕らは宿を探すことになった。
★★★★★★
僕らはベッドのマークの看板のかけられた大きな建物の前に着いた。
「そう言えばお金どうするんですか? 円しか持って無いですけど」
僕はここに来てお金が無いことに気がついた。スフィアも困った顔をする。
「私もすまないが金は持って無いなあ……」
「大丈夫だ。わしが貴金属を一通り持っておる。どれか価値があるだろうて」
博士は巾着から大量の金や銀を取り出して見せると宿屋のドアを開けて入って行った。
僕とスフィアもついて行く。
「いらっしゃい。一泊一万ルーツだよ」
髭を生やしたおじさんが愛想よく挨拶してきた。ルーツと言うのは通貨単位らしい。
「これで足りるか」
宿屋のおじさんは大量の財宝を前にして目を丸くした。
「こ、こんなにいらねえよ! ちょっと待ってな」
おじさんはカウンターの奥から天秤ばかりを持ってきた。そして金塊をわずかに削り、重さをはかる。
「こんだけで十分だ。じいさん、悪いことは言わねえから両替屋でルーツに換金してもらうんだ。そんで銀行に少しあずけるといい。このままだと無用心すぎるぜ」
「ふむ、ありがとう。そうするぞ」
「部屋は二階の左はじだぞ」
親切な宿屋のおじさんに感謝しつつ、僕は階段を登った。部屋の内装は質素だったが、家具はしっかりとした作りになっていて、ベッドはきちんと三つある。うん……?
「スフィアさんと僕たち同じ部屋じゃまずいですよ! 別に部屋取って来ます!」
「いいじゃないか。私の覗いた冒険者たちはだいたい男女一緒に泊まっていたぞ。それに私と白河の仲じゃないか」
スフィアは部屋のドアをしっかりと塞いで動こうとしない。しょうがないな。
「着替える時はちゃんと言ってくださいよ。窓の方をむきますから」
「照れなくてもいいのに」
スフィアは一緒にいられるとわかって安心したのかベッドに腰を下ろした。僕も腰を下ろす。
やれやれ、やっと落ち着いた。
「さて、落ち着いたことだし、質問良いかの?」
博士が待ってましたと言わんばかりの口調でスフィアに尋ねる。
「ああ、私の知っていることはさほどないが、できるだけ答えよう」
「まずこの世界とこの国の基本的なことを教えてくれんか?」
「まずこの世界の名前はルーセリアと言って、約三億人の人間とその他たくさんの種族が住んでいる」
その他ってエルフとかなのかな。会ってみたいものだ。
「ほうほう、続けてくれ」
「この国の名前はハイランド王国。大陸にたくさんある人間の国の一つだな。私は他の国に行ったことがないからよくわからないが商業で栄えているらしい」
王国だったんだなこの国。ということは王様がいるわけか。どういう人なんだろうか。
「私は人間ではないからこれぐらいしかしらないな」
スフィアは意外というか当然というかほとんど世間について知らないらしい。
「かまわんぞ。他は自分の手で調べるからな。ところで先程から思っておったのだが、どうして言葉が通じるのだ?」
そう言えばそうだ。今までどうして言葉が通じたんだろう? 異世界パワーのおかげなのか?
「それは私の加護のおかげだな。契約してよかっただろう白河?」
スフィアがいきなり僕を押し倒す。
やめて、理性が飛ぶから!
「わしは空気が読める男だから下の酒場に行ってくるぞ」
変なところで空気読まないで! 普段は読まないくせに!
「ふふ、夜は長いぞ♪」
スフィア落ち着いて! 抱きしめないで!
こうして異世界で最初の夜は更けていった。
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