14頁目 雪かき
14頁目です!
よろしくお願いします
久しぶりの晴れだった。
数日降り続いた雪もようやく止み、蒸気街には眩しい冬の日差しが差し込んでいる。
工房の屋根には、まだこんもりと雪が積もったままだった。
「……終わらねぇ。」
工房主はスコップ片手に空を見上げた。
吐いた息が白い。
「まだ半分も終わってませんよ。」
弟子もマフラーに顔を埋めながら、雪を端へ寄せていく。
店先に積もった雪をどけないと、客も入れない。
もっとも、この天気で来る客がいるかは怪しいが。
「寒い。」
「寒いですねぇ。」
工房の前には、雪の山がいくつも出来ていた。
その横で、少女がしゃがみ込む。
「……できた。」
小さな雪だるま。
丸っこい頭に、小枝の腕まで付いている。
「お、かわいいですね。」
「自画自賛かよ。」
「かわいいでしょ?」
「遊んでないで雪かきしてくれ…。」
このままだと雪だるまが量産されてしまう。
「うわ!ルリ姉ちゃん雪だるま作ってる!」
通りの向こうから、子どもたちの声が飛んできた。
雪玉を抱えた悪ガキ軍団である。
「おはよー!」
少女は手を振ると、少年たちは元気よく走ってきた。
ビシャッ!!
「きゃっ!?」
一人が投げた雪玉が、少女の肩に直撃した。
「……お前ら。」
子どもたちは一瞬固まる。
お互いの顔を見合わせると、次の瞬間。
「逃げろーーー!!!」
一斉に逃げながら雪玉を投げ始めた。
「待てガキども!」
男は雪玉を作って反撃する。
しかし。
ビシャッ!
「ぐっ。」
ビシャッ!
「相棒!顔顔!」
ビシャッ!
「うわっ!」
子どもたちは人数も多く、四方八方から雪玉が飛んでくる。
「兄ちゃん遅ぇー!」
「こっちこっちー!」
雪の上では、大人の足は思うように動かない。
「……くそ。」
男は雪まみれのまま立ち止まった。
子どもたちは勝ち誇ったように笑う。
「おじさん弱ぇー!」
「もう降参かー?」
男は黙って工房を見た。
「……ふむ。」
「どうしたんですか。」
「ちょ、相棒?」
男は何も言わず工房へ入っていく。
中からは、
ガタン! ゴトゴト…… ギギギ…… カンカン!
と、怪しい機械音だけが聞こえてきた。
「……嫌な予感しかしない…。」
ルリがため息をつく。
その時。
バァーン!
工房の扉が勢い良く開いた。
扉の向こうから、大きな銃のようなものを担いだ男が、どこか得意げな顔で現れた。
「クックックッ…ガキども…覚悟しろよ!」
「うわー!なんだあれー!?」
男が自作したであろう機関銃のような機械は、周囲の雪を吸い込むと、銃口からいくつもの雪玉が飛び出した。
「いって!ズルいぞそんな兵器!」
「ズルくない、発明だ。」
良い大人が本気で子どもを追い回している姿が、なんともシュールだった。
「……雪かき、全然進んでないじゃないですか。」
「…あ。」
男はハッと我に返る。
子どもたちは顔を見合わせると、黙ってスコップを手に取った。
工房前の散乱した雪は、夕陽に赤く染められていた。




