第52章:二重生活 (Double Life)
日々は、ただ耐え忍ぶものとして過ぎ去っていった。
スネークは夜通し働き、毎朝シクストゥス(Sixtus)に自分を「再充填」させていた。毒牙が肉体に蓄積された疲労の負債を突き抜け、不自然なエネルギーを流し込む。筋肉の奥底が疼く。それは表面には現れない種類の、ひどく重い疲れだった。彼はホークがこれまでの戦い――ナジョやハンガイカ、そしてトーナメントの重圧――を肩代わりしてくれていたことに感謝していた。おかげで、彼はまだ自分の真価を露呈させずに済んでいた。
(いい女だな、あいつは)首元に巻き付いたシクストゥスが言った。
「分かってるよ」スネークは答えた。「あいつが疲れる方が、俺が死ぬよりマシだ」
フローラ(Flora)へと続く橋は、ファウナ側よりもずっと清潔だった。それは自ら選んだ清潔さではなく、維持することを「強制」された場所特有の綺麗さだった。ホークは彼を連れてそこを渡った。警備兵たちは彼女の顔を見ると、何の問題もなく道を空けた。
その屋敷は完璧に整えられていた。手入れの行き届いた庭園、石畳の道、古い富が持つ特有の静寂。彼らは庭の端にあるオークの木の下に座った。木漏れ日が、移ろいゆく断片となって降り注いでいる。
「お前の目」スネークが言った。「秋の落ち葉の色に似てるな」
ホークが微笑んだ。その頬の赤らみは本物だった。二人の会話は自然に流れ、いつしかお互いに「演じる」ことをやめた者同士の、心地よい周波数を奏でていた。彼女は彼の言葉に笑い、無意識に彼の肩に寄り添った。
二人が座っている間、彼の背中のタトゥーが動いた。インクの小さな蛇たちが、一匹ずつ彼の着物の下から滑り出し、音もなく芝生を横切って、開いた窓から中へと消えていった。
屋敷の中で、蛇たちは金庫や宝石箱を見つけ出し、飲み込めるものを飲み込み、再び床下を通ってそれを隠し場所へと運んでいった。
「どうしてモトの文字集めを手伝ってなんて言ったの?」ホークが尋ねた。「いつもは、お金のことしか気にしないくせに」
スネークは肩をすくめた。「あいつは、本物の何かのために戦ってるように見えたんだ。ただの称号のためじゃなくね」彼は頭上の木陰を見上げた。「どっちにしろ、最強の連中が揃った決勝が見たかったんだよ。弱い相手じゃ、時間の無駄だろ」
「ふーん」彼女は彼の肩に本格的に頭を預けた。「私には、あの子の『高潔な振る舞い』なんてよく分からないけど」彼女は彼を見上げた。「でも、あなたは私を手に入れたんでしょ? だったら、何か正しいことをしてるはずじゃない」
「……そうかな」
「私みたいな『泥の中のダイヤモンド』を見つけたんだから――あなたのセンスは最高だって証明されてるわよ」
スネークは笑った。それは本物の笑い声だった。背後の屋敷では、インクの蛇たちが淡々とその仕事を続けていた。
特訓
訓練場では、モトが爆発的な瞬発訓練を終え、自らの炎で焦げた服の煙の中に立ち尽くしていた。
リリーが脇で眉をひそめて見ていた。「あんた、自分の爆発に自分を巻き込みすぎよ。相手にチャンスを与える前に、自分自身を壊しちまうわよ」
「それが、この力の仕組みなんだ」モトは顔を拭いながら言った。「俺の力には、いつだって代償が伴う。……支払うのには慣れてるよ」
彼はグウェンのことを思い出した。彼女の足を掴むチャンスを得るために、あえて彼女に殴らせたあの感覚。入場料としての痛み。
リリーは少しの間、沈黙した。「私も、同じような状況だったわ」彼女は言った。「自分自身を切り裂くような剣を振るうために――ダメージを受けるよりも速く動く方法を、見つけなきゃならなかった」彼女は一拍置いた。「……答えを見つけた気がする」
「見せてくれ」
彼女は息を吸った。
文字通り、瞬きをする間に彼女の姿が消えた。そして次の瞬間、彼女はモトの胸元に立っていた。彼女が空気を押し退けて移動したその風を感じるほどの距離。動きは見えなかった。音も聞こえなかった。ただ、突如として彼女がそこに現れ、その顔が数センチ先にある。
彼らの背後から、ウィルとエイモンがフィールドに到着した。
エイモンはそれを見た――硬直するモトと、その至近距離にいるリリー。最悪の推測が、光景を正しく認識するよりも早く彼の胸に突き刺さった。
(ほら見ろ)グリレットの声が、滑らかに、満足げに滑り込んできた。(俺が言った通りだろ――)
「黙れ」エイモンは心の中で、自分でも驚くほどの拒絶の意志をぶつけた。
グリレットが沈黙した。……本物の、沈黙だ。一瞬の間、その声は完全に消失した。エイモンは、自分の中で何かが今、確実に変化したのを感じながら、じっと立ち尽くしていた。
モトは顔を赤らめて一歩下がり、努めて平然を装いながらエイモンに不自然に手を振った。エイモンはぎこちなくそれを振り返した。
「今日はここまでよ」リリーが言った。
「まだ始まったばかりだろ――」
「ここでは、私のやり方に従ってもらうわ」
モトは呻いた。「せめて、今の動きが何だったのかくらい教えてくれよ」
彼女はため息をついた。「ダッシュ・ステップ(瞬歩)よ。あんたの脳は、怪我から身を守るために一度に出せる筋肉の出力を制限してる。私はその制限をバイパスするの――全身を同時に緊張させ、バネのように溜めを作り、それを一方向へと一気に解放する」彼女は歩き出した。「代償は筋肉の断裂よ。使いすぎれば、筋肉は二度と回復しないわ」
「毒を食らわば皿まで、か」モトは低く呟いた。
その夜、ナジョとエイモンが眠る中、モトは部屋の中央に立ち、全身の筋肉を一斉に緊張させた。顔が紫色に染まる。そして、解放した。
ダッシュはできなかった。痙攣し、誰にも説明したくないような奇妙な声を上げ、彼はそのままベッドに倒れ込んだ。
夜の帳
スネークが帰宅したのは、玄関から堂々と入る以外に選択肢がないほど遅い時間だった。
家の中は人で溢れていた――親戚一同、つけっぱなしのテレビ。キッチンカウンター越しに、母親が父親に向かって一方的な議論を展開しており、父親は「自分はこれまでもこれを生き抜いてきたのだ」と言わんばかりの角度で新聞を広げていた。スネークは部屋の隅を通り抜ける。
リビングから叔母の声が聞こえてきた。「あの子、ちっとも家にいないわね。人殺しがうろついてるってのに、誰かがあの子の行動を見張っておくべきじゃないの?」
叔父が笑う。「俺はそれより、あいつが女の子を連れてこないことの方が心配だよ。ブレイクはもう手遅れだ。誰がうちの家系を継ぐんだい?」
ドッと笑いが起こる。
スネークは寝室に滑り込んだ。
ブレイクは小さなテーブルでジャックス(Jax)と向かい合っていた。そこには、悪い知らせを聞かされてからしばらく経った後のような空気が漂っていた。ジャックスは両手でマグカップを握りしめ、いつもの冷酷さは完全に消え失せていた。
「もう一人の……気性の荒い方の奴が、昨夜ジェフリーにやられた。俺は見たんだ」彼はスネークを見上げた。「ここに置いてもらえないか? 今夜だけでいいんだ」
その顔に浮かんだ表情は、スネークにとって予期せぬ形で既視感を呼び起こした。ずっと昔の、ある記憶。五歳の彼がソファの後ろに隠れ、学校でいじめられていることを母親に泣きながら話すブレイクの声を聞いていた時の記憶。
ブレイクはいつだって繊細な方だった。スネークは「そうじゃない方」だった。翌朝、彼はブレイクを学校まで追いかけ、四年生の連中に彼らが理解できる言語で自己紹介をした。スネーク自身がその学校に入る頃には、なぜ自分たちがブレイクを「弱虫」だと思っていたのか、覚えている者は誰もいなかった。
だが、ブレイクは「自分は助けなんて必要なかった」ということを証明するために背伸びをして育った。その重圧が彼をジャックスのような連中の元へ、彼らに馴染むための自分自身へと追いやり……スネークは、これまでずっとそうしてきたことを続けた。――そばに居続け、静かに見守り、ブレイクが気づく前に脅威を排除する。
彼はジャックスという男の性質を責めるつもりはなかった。ただ、兄のそばに存在しているというその事実が、許せなかった。
「ブレイク」スネークが言った。「仕事の時間だぞ」
ブレイクがジャックスを見た。「でも、こいつは――」
「一刻も早く、どこか隠れられる場所を見つけるんだな。ここには置いておけない」
その後の短い言い争いの末、彼らは家を出た。
翌朝、カフェの壁には一枚だけ手配書が残されていた。
ブレイクの顔だった。
翌日、スネークは無意識でドックの荷運びをこなし、手だけを動かしながら、来たるべき夜のことを考えていた。待つことで事態が好転するシナリオなど存在しなかった。ジェフリーは順番通りに動いており、そのリストはほぼ完成しようとしていた。
区画の反対側にある豪邸で、ホークは絹のソファに横たわり、最近のスネークがどれほど疲れた顔をしていたかを考えていた。賞金の自分の取り分は、彼にあげよう。それに自分の貯金も上乗せして。彼をニルヴァーナへ連れて行こう。一週間、二人きりで、ビーチのあるどこかへ。彼女は天井を見つめて微笑んだ。
彼女は立ち上がり、オークの木を見るために窓辺へと向かった。
白いカーペットの上に、かすかな茶色の跡があった。泥。彼女はそれを辿り、壁にある金庫の絵画を横にずらし、扉を開けた。
空だった。
その夜。ブレイクが目を覚ますと、暗闇の中でスネークがベッドの端に座っていた。
「……仕事か?」ブレイクが尋ねる。
「いや」スネークの表情には、滅多に見せない何かが宿っていた。「コンサートに行くぞ」
ブレイクが凝視する。「人殺しがうろついてるって時にか?」
「その通りだ」スネークが言った。「人が多い方が安全なんだよ。あれだけの群衆の中じゃ、あいつも動けない」彼は立ち上がり、フーディーを被った。「チケットはないぞ」
「スネーク――」
「お前、ギャングスターだろ?」一瞬だけ、いつものニヤリとした笑みが戻った。本物の、素早い笑み。「……大丈夫だ」
野外の巨大な円形劇場。クジラ男の歌手の声は、建物など必要としないほどの残響を伴って響き渡っていた。ソウルフルで、深く、一生をかけて練習してきたかのような流麗さでバラードが繋がれていく。兄弟は群衆の外縁に立ち、耳を傾けていた。
スネークの肩で、シクストゥスが身構えた。その威嚇音は警告だった。
スネークはすぐにそれを見つけた――茶色の犬が、赤い目を低く光らせながら外周を嗅ぎ回っている。そしてその背後。外縁の茂みの中に、ジェフリーが立ち尽くしていた。長年これに従事してきた者特有の、静かで忍耐強い佇まいで。
「ブレイク」スネークが言った。「変身しろ。今すぐだ」
「ここでか――」
「今すぐだ!」
ブレイクの体がくの字に曲がり、変化し、長く細くなっていく。やがて草むらに、一匹のありふれたアオダイショウが横たわった。蛇はスネークの脚を這い上がり、フーディーの下、彼の肩に落ち着いた。隠蔽。
スネークは群衆をかき分け、ステージへと向かった。犬が音もなく、鼻を地面につけて後を追ってくる。
彼はステージに飛び上がった。観衆が息を呑む。音楽が止まった。クジラ男の歌手が、巨体を揺らして不機嫌そうに振り返った。「貴様、何を――」
スネークは彼を無視してドラムセットへと歩み寄った。タトゥーを見たドラマーが逃げ出す。スネークは椅子に座った。
彼は叩き始めた。
「音を全部切れ!」歌手が叫んだ。照明が消える。アンプの電源が落ちる。円形劇場は静寂に包まれ、一万人もの観衆が一斉に黙り込んだ。
暗闇の中で、スネークが光り始めた。タトゥー、瞳、ドレッドヘアの先――そのすべてが、シクストゥスの光である深い緑色に輝く。両腕の蛇がリズムに合わせて動く。『ヒスッ、ツッ。ヒスッ、ツッ』。生きているインクが生み出すビート。複雑で、荒々しく、その場所が自分でも気づいていなかった欠落を埋めていく。
クジラ男の歌手はステージの端で、じっと聴き入っていた。
スネークは身を乗り出し、生きているマイクに向かって言葉を紡いだ。流れてきたのは、彼がこれまでにラップしてきたどんな曲とも違うものだった。
守るべき弟のこと。誰かの重荷を背負い、それでも自らそれを選ぶこと。決して表に出ることのない、特有の愛について。
フーディーの下で、ブレイクは微動だにせず聞き入っていた。
歌手が音響ブースを見て、手を振った。――『音を戻せ』。
照明がステージを埋め尽くした。バンドがビートに加わる。スネークがバースを終えると同時に、歌手がステップを踏み出し、天候のように群衆を揺さぶる強烈な力でコーラスを歌い上げた。
外の通りからも、その音に惹きつけられた人々がなだれ込んできた。群衆は密度を増し、広がっていく。ステージの上から、スネークはその全容を見渡した。――そして、はるか後方の暗がりに、杭のように立ち尽くすジェフリーの姿を。
動いていない。
群衆が多すぎる。あまりにも公の場だ。ジェフリーは計算のできる男だった。
スネークは手が血に染まるまでドラムを叩き続けた。ライブは一晩中続いた。
翌朝。彼はホークに会いに行った。
彼女は待ち合わせ場所で待っていた。その手には空の宝石箱。そして、その秋の落ち葉のような瞳には、彼がこれまで見たことのない、冷徹で、明確な「拒絶」の色が宿っていた。




