第24話 パランク戦争の開始とリオン侯爵
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シケリア公国軍4個軍団はフィリップの指揮下でパランクのマルセイユに上陸後、パランク第6軍団に攻め込みました。
もともと南のプルターク伯爵監視のためおかれていた軍団であり、海からの襲撃を想定していなかったため、やすやすと上陸を許し、敵に包囲されてしまいました。
抵抗の意味なしとして降伏、将校たちは捕虜になり、兵下士官はシケリア軍に編入されました。
そのままプルターク伯爵軍と頼子の貴族軍の連合軍と合流、リオン侯爵領を目指しました。南部国境を守っていた第5軍団は我々の傘下に入り、ともにリオン侯爵領に攻め込みました。
伯父上が総指揮官となったプルターク伯爵連合軍とシケリア公国軍、国軍第5軍団の連合軍は、リオン侯爵領に侵入したところで、国軍第4軍団とリオン領軍の連合軍と接触、戦いが始まりました。
リオン侯爵軍は1個半軍団程度の兵力で立ち向かってきました。
自領での戦いで、地の利のある侯爵軍は徐々に撤退しながら我々の戦力を削っていきました。
しかしながら、約5倍の兵力差と武具、練度の違いから徐々に追い詰められ、ついには、屋敷に籠城することになりました。
屋敷は城砦のように整備されていましたが、完全に包囲され、魔法による連続攻撃に屋敷は見る間に破壊されていきました。
リオン侯爵邸にて
「もはやこれまでか」リオン侯爵は指令室になっていた大食堂でつぶやいた。
生き残っていた侯爵軍幹部たちは皆泣いていた。
「兵たちに伝えよ。全員投降しろと。皆もご苦労だった」と侯爵は微笑んだ。
「侯爵様はいかがされるのですか」
「これでもパランク王国建国以来の家柄だ。家の名に恥じぬようにするつもりだ」
「私たちもお供します」幹部たちは口をそろえて行った。
「お前たちは生きろ。そして新しいパランクがどうなるか見てくれ」
「侯爵様!」
侯爵は微笑んで自室に向かいました。
そこで一杯の葡萄酒をゆっくり飲んでから、爆裂石で自爆した。
リオン侯爵軍は降伏しました。
屋敷に突入すると、自害した侯爵が見つかりました。爆裂石で自爆しており、死体はバラバラになっていて、リオン侯爵本人であるか判断に迷いましたが、捕虜の話から本人であると確認しました。
第2皇子も見つかりましたが、すでにこと切れていました。彼は薬で安楽死させられていました。苦しまないようにしたのでしょう、その死に顔は非常に穏やかでした。
残りの家族は誰もいませんでした。どうも逃げだしたようです。
リオン侯爵家は事実上滅びました。
この戦いで、多くの味方を失いました。負傷者を後送し、戦死したものは次元袋に保存しました。遺族に返すのです。
プルターク連合軍と降伏した第6軍の残存兵を含めた国軍はそのまま首都パラスに向かい、お爺様のアッピア軍と合流するため移動を開始しました。
僕のシケリア軍はプルターク連合軍と別れて、西部の海岸部分を北上し、北に逃亡したリオン侯爵家の家族たちおよび配下の貴族たちを捕らえるために進軍を開始しました。
パランク王国第三軍団駐屯地にて
第3軍団長フランシスコ・リオンは軍の出動準備に忙殺されていた。軍団長はリオン侯爵の弟にあたり、当然のことながら領地貴族派の一員であった。
本日、突然リオン侯爵から使者が来た。
内容は南部のプルタークがエリトリアの援助を得て、攻め込んできた。家族や配下の貴族たちをプリッシュ王国に逃亡させたいので、彼らの護衛とプリッシュ王国までの移動を助けてほしいとのことだった。
そのため、配下の軍を動かすために準備しているところだった。
しかし、第3軍団の駐屯地はパランク北西部であり、隣国のベネルクス王国とプリッシュ王国に対応することを目的としており、中西部にあるリオン侯爵領とはかなり離れていた。
なので、先に足の速い騎兵と空を飛べる風魔法使いを先行させた。
とりあえず軍団の移動準備が整ったため、南部に向かって進撃した。
途中避難中のリオン侯爵家族たちの一団と出会うことができた。
みな、最小限の荷物をもって、北の港であるカレーに向かっていた。
追ってきている敵はシケリア軍らしく、すぐそばまで迫ってきているそうだ。
先行させた騎兵と魔法使いは、彼らを逃がすため敵を足止めして、すでに全滅していた。
フランシスコ・リオンは、1個大隊を彼らの護衛に就け、敵を足止めするため、簡易ではあるが陣地を建設した。
陣地構築の途中、敵軍が接近していることが斥候から知らされ、戦闘配備を取った。
シケリア軍にて
僕の軍はひたすら北上を続けました。しばらくして、騎兵隊と魔法使いの一団が襲ってきました。
いきなりだったので、やや混乱したが、兵士の数が違いすぎたので、人海戦術で敵を包囲・せん滅しました。最後まで誰も降伏しませんでした。
さらに北上していくと、今度は軍団旗を掲げた兵士たちが待ち構えていました。
軍団旗から第3軍団のようです。陣地を作って待ち構えています。
まずは定石どおり、最初は魔法の打ち込みあいから始まりました。魔法の打ち合いでは、こちらが勝利しました。敵の魔法兵と弓兵隊をいくらか削ることができました。そのあと、矢や槍を打ち込み、更に敵の戦力を減らしていきました。
すると、敵が突入してきて、一挙に乱戦状態となりました。
こちらは敵を包囲し、敵に四方から攻め立てました。
敵は猛烈に抵抗してきました。なかなか勝負が決まらず、こちらの被害が増えていきました。
業を煮やした僕は単独で敵陣に進攻し、指揮官らしき男に襲い掛かりました。
男は僕の槍の攻撃を受け止めると、槍をたたき切り、ニヤリと笑い言いました。
「わしは、フランシスコ・リオン。第3軍団長を務めておる。おぬしはフィリップ・ブリンディジか」
「そうです」
「兄、リオン侯爵はどうした」
「立派な最後でした。部下は降伏させ、自身は自決しました」
「そうか、兄らしい」と言って苦笑した後、「さて、殺るか」と獰猛に笑った。
「殺りましょう」僕も笑って答え、剣を抜きました。
打ち合いは10数合にもわたりました。僕は魔法も使いましたが、ことごとく剣により打ち消されてしまいました。
「強いですね」
「お前こそ」
「これで最後にしましょう」
「そうだな」
僕は風魔法を使い、更に身体強化を二重にかけ敵に向かっていきました。
何合かは受けられましたが、剣をまともに受けて隙ができた瞬間を狙い背中に切りつけました。
ざっくりと切れた背中から血が噴き出し、軍団長は膝をつきました。
そして、僕は首をはねました。
僕自身、無理をしたせいか、僕の体のあちこちから血が噴き出し、気絶しました。
次に気が付いたのは、ベッドの上でした。妻たちが取り囲んで心配そうに僕を見ていました。
「戦争は嫌だな」僕はつぶやきました。
軍団長が戦死、そして大隊長クラスが次々と戦死していくと、軍団の抵抗が徐々に止んできて、ついには第3軍団は降伏しました。
捕虜にした兵士から、逃げ出した一団は北のカレーを目指していることが分かりました。1個大隊が護衛に就いているとのことです。
シケリア軍は貴族たちを捕らえるべく、カレーに向かって猛追しました。
カレーの町に着くと、敵が町の前に防御陣地を作って待ち構えていました。おそらく貴族たちが逃げ出すまでの時間稼ぎをするつもりなのでしょう。
かなり厄介な敵です。最初から目的と達成時間が決まっていて、陣地の構築もできています。被害を無視して、力押しをすればそんなに時間がかからないでしょうが、まだ首都攻略が控えていますし、すでにかなりの損害を出しています。これ以上の被害はシケリアの兵たちの反感を買いかねません。
なので、被害を最小にすべく、爆裂石を詰めた砲弾を大砲で飛ばし、敵陣地に打ち込みました。持っている砲弾をすべて打ち込みました。
その後、陣地に向かって突入しました。生き残った敵は盛んに矢を放ってきました。
こちらは盾で矢を防ぎつつ、前進していきました。
敵兵は槍や剣で突っ込んできました。兵達には5対1で当たるよう指導して、敵を討ち取っていきました。
戦いは半日近く掛かりました。
敵は壊滅し、重症者が何人かいたほかは生存者はいませんでした。わが軍がカレー市に突入しましたが、すでに貴族たちはすべて船に乗って逃げ出していました。
町の民に聞いたところ、かなりぎりぎりで最後の船が出たのが、我々が突入する直前だったそうです。
貴族たちを捕らえることができず残念です。とりあえず、負傷兵とそれを警備する兵約500名をカレーの町に置いて、首都パラスに向かいました。
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