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閉話2 南スロベニアの崩壊の始まり

毎日18時に投稿しています。お読みいただければ幸いです。

南スロベニア王宮にて

 南スロベニアの王アレクサンダル三世は苦悩していた。3個軍が壊滅したため再建の必要があること、王都の王宮が破壊され、修繕が必要なことから、かなりの費用が必要であった。

 しかし国庫は空っぽ、王家の財産もすべて持ち去られ、第1回の賠償金は臨時徴税で何とか間に合わせたが、アドリア海の制海権を奪われた上、大きな港も2つ奪われたことで、それまで盛んだった貿易業が今までのようにいかず、国家の危機が訪れていた。


 「何かよい意見はないか」王は財務大臣ビスコビッチ・バラク―ラに問うた。ほとんどの臣下がまだ捕虜になっており、釈放された最低限の部下しかいない状態であったが、王国は緊急に打開策を必要とした。

 「現在、北部州が奪われ、北部州の直轄地は失われ、北部州の貴族たちをこちらに移動させるのに新たに領土を与える必要がありました。そのため、税収の中心であった農業からの税収は7割程度に減少します。また、さらにアドリア海の権利と交易の重要な港が奪われたことで、商人から徴収していた関税と商売税も予想では半分程度に減少することとなります。そこから導き出されるのは、これまで50億ブッシュあった税収は33億ブッシュほどに減少することが予想されます」財務大臣は資料を見ながら言った。

 「それでは、賠償金20億ブッシュを支払ったら13億ブッシュしか残らないではないか!」王はうめくように叫んだ。


 「貴族が捕虜になって俸給を支払う必要がない点を引いても、現状の維持だけで必要経費は20億は必要です。このままでは、財政破綻は間違いありません」そう財務大臣は言った。

 「打開策はあるのか」王はすがるように尋ねた。

 「次のことを提案します。一つ目、税を現状の7公3民から8公2民に変更します。これ以上は、民達の生活が成り立たなくなります。これで2億ブッシュの収入増になります。更に二つ目として商人たちの税を引き上げます。直接的な売上税を引き上げては商人たちの反発があるので、各地に関所を設け、そこで関所税を取り収入を上げます。そして現在領地貴族たちの取り分である5公から4公に減らし、その分国の収入にします。よくよく貴族たちに説明していく必要がありますが、計算上これで10億ブッシュ以上の税収が可能になります」財務大臣は言った。

 「でかした!これなら必要経費、賠償分を引いても3億ブッシュはある。先ず第一に王宮の修理を行え。合わせて軍団の整備を実施しろ」王は財務大臣に命じた。

 「御意」そう言って財務大臣は政策を実施するとともに、王宮の修理を実施した。

 

 財務大臣は各地に関所を設けるとともに、そこで関所税を取った。また、税率の引き上げも行った。

 貴族たちには、国の危機であることを説明し、俸給の一部を国に献納するよう懇願した。

 貴族たちの反発はかなり激しかったが、それまで負っていた軍役や賦役を当分免除することを約束に何とか同意を取り付けた。

 財務大臣や官僚たちの努力で何とか財政の再建に成功した、と思われた。


 王の意向で王宮は以前に増して立派につくられることとなった。その旨、宮内大臣から知らせを受けた財務大臣は青くなった。とても王の希望通りの王宮を建てる財政の余剰はなく、最低限の補修で済まそうと考えていた財務大臣は強く反対した。

 「王の意向である」宮内大臣は主張した。

 「この計画だと、12億ブッシュの費用が掛かることになっている。現状、そのような予算はない。とりあえず、必要最低限、ある程度体面が保てる程度の補修を行う。そうすれば、費用は20万ブッシュで済むこととなる。これで王には我慢していただきたい」

 「分かった。それでは王に申し伝える」と言って、あっさり宮内大臣は去っていった。


 また、王は失った軍団の再建も命じたが、とりあえず軍団の基幹部分だけを整備してお茶を濁そうと考えていた財務とちゃんとした軍団を整備したい軍部が鋭く対立した。

 「軍の再建は急務である。今、軍がいない東部の軍団の再建が緊急に必要である。そして、北部と直接会い対峙するようになった中部と東部に1個軍団ずつ新たに配備が必要である。できれば予備兵力としてもう2個軍団は欲しいところである」軍務大臣と軍の最高司令官である元帥が言った。

 「予算がない。国防の大切さはわかっている。基幹部分の整備をすることを考えている。そうすれば有事の際、兵を集めればすぐに軍団として戦えるようになる」財務大臣が抵抗した。

 「兵は人を集めればいいというわけではない。普段の訓練が重要である。そのためにもきちんとした軍団が必要だ」軍務大臣は言い返した。

 「はっきり言おう。金がない。もしどうしてもいうならば、軍関係の人件費、補給品費用は半分にしてもらう。更に武器は在庫の物を活用してもらう」

 「それでは戦えないではないか!」

 「戦わない工夫をしてもらいたい。今の財政状況で戦費の調達は不可能である」

 激しいやり取りが続き、今年度は1個軍団の整備のみで落ち着いた。

 不満いっぱいの軍務大臣は王にこの件を報告した。


 「財務大臣、お前はわが意向を無視し、勝手に物事を進めている。本日をもってお前を解任する」王は怒った顔でそう財務大臣に言い放った。

 「お前の顔はもう見たくない。国外追放だ。さっさと立ち去れ」

 財務大臣は思わず何か言おうとしたが、その言葉を飲み込み、恭しく礼をした後、宮廷を後にした。

 元財務大臣ビスコビッチ・バラク―ラは単身、シケリアに向かった。シケリアは交易が盛んで、自分の財務知識ならばどこか雇ってくれるところがあると考えたからだ。

 そのことを知ったシケリアの公王に雇われ、その力を発揮し、財務の統括を任されるまでになった。虜囚となっていた家族も公王の力で解放され、残りの生涯をシケリアで過ごすことになる。


 王宮の整備、軍団の創設は最初の計画通り行われることとなった。軍団の整備はとりあえず人を集めることができた。兵士は身分に問わずかき集めた。農村から貧しさに耐えかねた多くの男が志願してきた。

 ただ、兵は集まったが、武器や制服の費用までは調達できなかった。

 同時に進められていた王宮の改修も止まってしまった。

 国庫が空になったからだ。宮廷貴族たちの給与も払われないばかりか、商人への支払いも止まり、そのため建材や品物の納品がされなくなった。

 工事のための職人も来なくなった。

 貴族たちが後から払うと言って仕事をさせようとしたが、今までの分を支払わなければ再開できないと商人や職人から突っぱねられた。

 何人か捕まえて、牢屋に放り込んだが、他の者は皆逃げ出してしまった。


 「どうすればよいか、誰か解決策を出せ」大臣たちや上級の官僚貴族たちが集められ、王は皆の前で解決策を出すよう要求した。

 「税を上げてはいかがでしようか」ある官僚が言った。

 「これ以上上げたら、民が皆逃げ出してしまうぞ。すでに税が厳しくて男たちは村を出て町に働き口を探しに来ている状態だ」別の官僚が言った。

 「外国から借りたらいかがでしょうか」外務官僚の一人が言った。

 「外国が貸してくれるのか?」

 「国内の利権を担保にすればいい」

 「返せなかったら、どうする?」

 「いざとなったら踏み倒せばいい」

 「よし、その案で、費用を調達しろ」王は言った。


 外務官僚たちは近隣国に借金の申し込みをした。

 東の北ロマリアと南ロマニアは東部州の割譲と引き換えに10億ブッシュづつ、20億ブッシュ出すと言った。

 南のマキニアは南部州と引き換えに10億ブッシュ出すと言ってきた。

 エリトリアは、西部州の割譲と引き換えなら20億ブッシュ出すと言ってきた。ただし、賠償金と相殺だとのことだった。

 それより遠方の国は、相手にされなかった。

 

 このことを王に伝えたところ、領土の売却はだめだ、とのことだった。

 どうしようもなくなった外務大臣は、国をこのような危機に導いた宿敵であるシケリアに行った。

 

シケリアの王は南スロベニアが有する鉱山の経営権及び新規鉱山の調査開発権、港までの道路の敷設及び管理権、さらにそれらを警備する武装兵の駐屯を要求、代わりに20億ブッシュを貸与することを提案された。

 その内容を聞いて、王は領土割譲でないのならば問題なしとして借款の契約を結ぶことを了解した。

 金利は複利で50%、3年以内に返還できない場合は、担保として上記の物を譲り渡すことで借款契約が結ばれた。

 

 この金を使って、王宮の改修が行われた。商人、職人は牢から解放され、今までの金を一割増で支払ったおかげで、逃げた商人、職人たちも集まり、工事や納品が再開された。

 王宮は15億ブッシュかかったが完成した。

 3個軍団の編成も何とか成し遂げることができた。


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