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ひょんなことから転生したおじさん、王子になって楽な人生を送れるかと思ったが、とっても大変な目に遭っています  作者: 信礼智義


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第19話 ジェームズの結婚式とエリトリア王の思考

毎日18時に投稿しています。お読みいただければ幸いです。

 ジェームズとリーニャさんの結婚式はエトルリア王家の主催の元行われました。急なことですが、エリトリア国内の貴族は大体集まってきました。当然僕達もお爺様達も出席しています。プルターク伯爵家の皆さんも駆けつけました。外国の大使も出席し、大変賑やか結婚式でした。

 ところがパランク王国だけはやってきませんでした。大使も欠席ということだったので、問い合わせたところ、たかが伯爵家の結婚式に出る気はないとのことでした。


 「おい、マイケル、戦の準備をしておけ。後、南のアラゴン王国を動けないように手を打っておく必要がある。南部の頼子たちにも通知していつでも参陣できるようにしろ。戦争が始まるぞ。王宮の連中、地方貴族を無視し始めている。こりゃリオンが黙ってないぞ」とお爺様が伯父上に命じていました。

 「ええ、私もそう思っていました。すでに第3皇子が皇太子のような態度で王宮の連中はそれに従っています。リオン侯爵の一派はそれに反発しております。第2皇子は今リオン侯爵領で療養の名目で匿われていて、厳重な警戒のもとで保護されているようです」伯父上はそう言ってお爺様の言葉に同意していました。


 「俺は北部で兵を集めておく。フィル、お前はシケリアを支配し、最悪の場合に兵をプルタークに派遣するのだ」

「了解しました。プルターク領とは海でつながっています。すぐに兵を派遣できるでしょう。でもいいのですか?エトルリアとパランクが戦争になりますが」僕は尋ねました。

「王には話をしておく。おそらくアリア王国も出てくる。プルターク伯爵領とその配下の者達が生き残るためには南部はエトルリアが抑える必要がある。最悪パランクは内戦の結果、アリアに併合される北部とエトルリアに併合される南部に分割されることになるだろう」そうお爺様は言い切りました。


 「出兵するにはプルターク伯爵救援だけでは弱くないですか?単なる内政干渉になりませんか?」

 「こっちには一つ旗頭がある。12歳の若さで公国を興した英雄で、本来正統な王国の後継者であるお前がな」お爺様はニヤリとしました。

 「可能なら、パランクを全部奪っても構わんぞ。わしの孫がパランク王と王妃というのも悪くはないな。エトルリアも養女が王妃の一人となり、自身の影響下にある王が立てば大変な国益になる」と悪い顔をしながら言いました。

 僕はその前にシケリアを完全に支配下に置かなくてはなりません。頑張ろう、と決意しました。


エトルリア王宮にて

 「ジョン・アッピアとその家の者3人にあそこまで特権を与える必要はなかったのではないですか」王の側近の一人が尋ねた。他の側近たちも同意するようにうなずいていた。

 「そなたが言う特権とはどういう意味か」王はとぼけたように尋ねた。

 「ジョン・アッピアに今回南スロベニアから奪った北部州の半分を与えたことと、その孫のフィリップにターラント準伯爵家とブリンディジ侯爵家を継がせ、更にシケリアと今回割譲を受けたアドリア海の都市を与えたばかりか、妻の一人を養女としたこと、さらに別の孫のジェームズという外国の伯爵家嫡男に、わざわざ婚約者を養女にして、王家として結婚式を執り行ったことです」新参者にそんなに与えず、自分たちに少しぐらい分けてくれてもいいじゃないかと、憤懣やるせないとばかりにその側近は一気にまくしたてた。


 「そなたは新規に得た領土を大過なく治めることができるか?当然わしの力添えなしに。失敗すれば処分するぞ?」と王は尋ねた。

 側近は黙ってしまった。その側近は子爵家の出だが、実家の力を借りたとして果たして新規の領土をうまく統治できるか不安があったからだ。

 領土経営のうまみは欲しいが、失敗の責任は取りたくないし、とれないと考えていた。


 「新規領土の統治は困難だ。住民や領内に残った土豪たちの反発も考えられる。まして今回得た北部州は南スロベニアが南に控えておるし、いくつかの国に囲まれている、いわば敵地の中にある小島みたいなものだ。更に王子のひとりを送り込んでサロ侯爵家を継がしたのだが、戦争での敗北責任を取らせ北部州東部に領土を異動させた。あの土地は南スロベニアや他の国がいつ攻め込んでくるかわからない。サロ侯爵の援護をするとともに自分の領土を守り、尚且つ円滑に統治していくなどという芸当ができるものは、ジョン以外に思いつかん」王は静かに言った。


 「南部はもっと危険だ。シケリアは島国であるから、土豪たちの力が強いし、地元の小貴族たちも独立の気風が強い。まだ周辺の島々にもシケリアの残党がたくさんいる。さらにシケリア王家は現在虜囚としてとらえているが、あいつらを担ぎ上げようという勢力が出るかもしれん。南スロベニア王家や貴族の虜囚と一緒に処刑してしまうのがあとくされないが、南スロベニアはそんなことをすれば賠償金の支払いに支障がきたすばかりか復讐のため敵対するだろうし、シケリア貴族や土豪、そしてシケリアの残党どもがどう出るかわからない。そのため、生かしておいているのだがな」と王は言った。

 「わしはそんなシケリアを切り離し、最悪の場合でもエトルリアに害が及ばないようにしたのだ。その際はエトルリア半島にあるブッリャ州南部の領土はこちらで回収すればいいしな」と王は言った。


 「あとジェームズの母国パランクは現在第2皇子を旗頭にする領主貴族派と、第3皇子を旗頭とする宮廷貴族及びアリア王国派が双方ぶつかり合っている。プルターク伯爵は南部地域を取りまとめており、両派閥から距離をおいた存在だ。両派が衝突した時、王家の一員であるジェームズを守るために出兵することはおかしくないだろう?さらにこちらにはフィリップと言うカードも握っている。最悪でも南北に分割統治、うまくすればパランクの王にフィリップをおき、その側近としてジェームズ・プルタークをおければ、わしは二人の義父となる。まあ、傀儡とまではいかないが我が国にとって友好的、従属的な国ができてくれれば我が国にとって大変な利益になる」王はニヤリと笑みを浮かべながら言った。


 「まあ、ある意味すでに元は取っている。アドリア海の偽海賊たちは消滅したし、我が国の内患だった二つの侯爵家もその力を失って、その領土も大部分王家直轄地となった。小領主たちはわしに逆らう意欲も力も失い、こちらの言いなりだ。わしはこのエトルリアを直接統治した初めての王となったのだ」と笑いながら言った。


 「有力な後継者だった王子を二人とも放逐してよかったのでしょうか。ブリンディジ侯爵家はともかくサロ侯爵家にまで王子を養子に出してしまったのは問題ではないでしょうか。王の後継ぎがいなくなってしまいましたが」と別の側近が尋ねた。この側近はサロ侯爵家の縁者だった、いずれ処分しなくてはな、と王は思いながら答えた。

 「問題は何もない。わしには愛人に産ませた男の子がおってな。今まで侯爵たちに見つかると処分されかねないので隠しておった。現在、我が側近の一人に実子として育てさせている。今度我が子として名乗りを上げることとなったのだ。やっとわしも好きな女を愛人からきちんと妻にできるわい」と嬉しそうに言った。


 側近たちの中には、納得した顔、不満そうな顔、驚いた顔が見られた。不満そうな顔をしているものは後日何らかの口実を設けて処理しようと、王は内心考えた。


 側近たちとの対話を終え、自室に戻った王はほくそ笑んだ。

 フィリップの助言に基づき、シケリアの虜囚のうち子供のいない側室と女の子しか産んでいない側室は釈放している。側室には、小貴族や土豪の娘や姉妹たちが多くいて、彼らの懐柔に役立つだろう。

また、これもフィリップからの助言だが、シケレアや南スロベニアの虜囚の子供たちは皆そのために設けた学校に通わせ、我が国への忠誠を吹き込んでいる。

 そうやっておけば、いずれその子供たちが大人になった時、我が国に親近感やエリトリア王家に対する愛着や忠誠心をもってもらえれば、我が国益にかなうだろう。


 これらの提言をしたフィリップを王はとても買っていた。

 王は思った。

 フィリップ、あいつはジョンの孫だけあってかなり有能なやつだ。できれば我が家臣として手元に置いておきたい。いろいろな縁で縛っておくぐらいしかできないが、今度新しく皇太子になるだろう我が子に会わせよう。ジョンとわしの関係のような形に持って行けばいいのだが、と王はそう思いながら、シケリアから届いた高級ワインを、やはりシケリアから献上された珍しい東方からのガラスの酒杯に注ぎ、ゆっくりと飲んだ。そのうまさに王は舌鼓を打った。


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