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第18話 大学休学と押しかけ女房

毎日18時に投稿しています。お読みいただければ幸いです。

 大学に行って休学の手続きをして、学部に挨拶に行くと、お世話になっていたメリッサさんがいました。この学部で助手をしている方で儀式や聖書の解釈などを教えていただき、大変お世話になっていました。

 「今度休学することになりまして、今までお世話になりました」

 「ああ、お会いしたかったのです。シケリアに行かれるのでしたね。私も連れて行ってくださいませんか?」

 「えっ、どうしてですか」

 「決まっています。玉の輿狙いです。フィンさんの妻にしてください」堂々と言いました。

 「ええと、もう妻が二人もいるのでこれ以上は結構です」

 「もう一人ぐらいいいじゃないですか。絶対役に立ちますよ。というか、絶対に逃がしません」目が殺気立っていました。

 「ごめんなさい、それじゃお世話になりました」僕はその場から逃げ出しました。すごく穏やかで、清楚な方だと思っていたのですが、本当にびっくりです。


 屋敷に戻ると、メリッサさんが居間でお茶を飲んできました。足元には荷物を入れたバッグがありました。

 プリシラさんに聞くと、「フィンの妻になりに来ましたと言って屋敷に入ってきた。あまりに堂々としていたので、フィンが帰ってきたらどういうことか聞くつもりだった」と言います。

 

 「メリッサさんどういうつもりですか?」

 「ですから妻になりに来たと言っています」

 「いりません。不要です。帰ってください」

 「もう大学も辞めてきました。借りていた部屋も解約しました。追い出されたら行くところがありません。この家を追い出されたら路上生活しかありません。そうしたら私の美貌に惑わされた悪人が私にあんなことやこんなことをしてきて、私は抵抗もできずおもちゃにされ、ぼろ雑巾の様に捨てられます。フィンさん私がこんなになったら、あなた良心が痛みませんか?仮にも神の教えを学ぶものとして許されますか?」


 僕はすごく違和感を覚えました。確かに公王となったことで、僕の側室になれば玉の輿と言われるのは間違いないと思います。でも、なんかおかしいです。

 もともと、こんな強引なことをするような人ではなかったですし、物静かで冷静な方だったはずです。ここまで強引な手法を取る意味が解りません。

 「メリッサさん、僕についていきたい何か訳があるのではないですか?正直に言ったら、同行を認めてもいいですよ」と僕は真剣な顔で聞きました。

 

 「そんなことはないですよ、本当に玉の輿狙いですってば」メリッサさんはごまかすように笑って言いました。

 「あなたは嘘を言っています。正直に話してください。もしお話しいただけなければ、こちらで勝手に調べさせていただきます。そしてそれ相応の措置を取らせていただきます」と真剣な顔で伝えました。


 メリッサさんは一瞬驚いた顔をして僕を見つめた後、うなだれたように言いました。

 「ごめんなさい。正直に言います。だから私の家族には手を出さないで」そして彼女の目的を話し始めました。


 彼女はシケリア王国の小貴族の娘を母に持つ王女だったのです。

 シケリア王は大の女好きで、国内外の貴族の娘、大概は準貴族かよくて男爵クラス、はては外国の商人の娘まで手当たり次第に女を集めて、ハーレムを築いていたそうです。さすがに農民の娘を手籠めにしたり、奴隷を購入してということはなかったそうですが、単に差別意識が強かったからという話みたいです。恐ろしいことに自分の娘まで手を出そうとしたという噂まである外道です。


 その数多い愛人の中にシケリア南部の男爵の娘であったメリッサさんの母親がいたそうです。王が南部を巡行中、目に留まり、ほぼ無理やり愛人にさせられたとのこと。

 そうして生まれたメリッサさんですが、関係は一回きりということもあり、王もそのまま放置していたようです。

 男爵家では、とてもかわいがられて育ったのですが、母の自分を見る目に哀愁とわずかに憎悪があることに気づいていました。

 王による無理やりな行為の結果、自分が生まれたことを知ったメリッサさんは、自分の存在が母親にとって苦痛の源になることを危惧して、神官になることを志し、8歳で見習いとして教会に入ったそうです。

 そして努力の結果、大司祭まで昇格し、大学で助手のポストを得たそうです。

 ところが、シケリアとエトルリアの戦争の結果、シケリアが滅び、新しい王が生まれたことを知りました。更にシケリア王家に連なる者は皆捕まり、王都に幽閉されていると聞き、母や家族の身が心配で、僕に身をささげても家族を守りたいと思い、無茶な手段に出たそうです。

 

 「そうですか。それならば最初から言ってくれればよかったのに」僕はメリッサさんに言いました。

 メリッサさんは悲しい顔をして、「こんなこと言えるはずないわ。第一、これを言えば間違いなく私の母を捕らえるでしょ?フィン君は大学では優しくて紳士な感じだけど、この戦争ではそうとう人を殺しているうわさがあるわ。それも普通じゃない方法で。虐殺鬼、八つ裂き公という二つ名がついているぐらいよ」と言いました。

 どうも僕の悪いうわさが世間に伝わっているみたいです。

確かに車で人をひき殺したり、幼い子供に手をかけたり、魔法で多くの人を虐殺したりで、悪名が轟くのもわからないではないです。でも虐殺鬼、八つ裂き公は無いと思います。


 プリシラさんと相談して、プリシラさん付きの侍女としてついてきてもらうことにしました。本人に聞いたところ、そっちの方がいいと言われたので、侍女にすることとなりました。

 「よろしくお願いします、プリシラ様」

 「普段はプリシラでいい、堅苦しいのは苦手」

 「えっでも、プリシラ様は王の養女なのですよね。ご出身もかなり上級の貴族なのではないですか?」

 「私はもともと平民、冒険者をやっていてフィルと知り合った」

 「冒険者?でもプリシラ様、どう見ても13、4歳ですよね」

 「私は今年19歳」

 「えっ、私と同い年!」

 嵐の予感がしたので、僕は巻き込まれるのが嫌で、その場からこっそり逃げ出しました。

 

 あとで聞いたところ、少しばかりケンカになったそうですが、そのあと和解したそうです。

 プリシラさん、その後にメリッサさんが僕のことが好みかどうか尋ねたそうなのですが、「いくら何でも7つも下の12歳の子供にちょっかいかける気はないわ。子供に欲情する変態ではないもの」だそうです。

 ちなみにメリッサさんは長身のスレンダー体形で、かなり美人です。


 この二人がケンカした部屋は、壁が吹き飛ばされたため、まるごと全部修繕することになりました。備品もすべて買いなおすことになりました。


お読みいただきありがとうございました。もし少しでも気になりましたら星かブックマークをいただければ大変ありがたいです。

星一ついただければ大変感謝です。ブックマークをいただけたら大大感謝です。ぜひとも評価お願いいたします。


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