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ワタクシ。Ritaであります!  作者: リノキ ユキガヒ
第四章「天気明朗なれど…」
22/47

「いつからですかねぇ…。MA-1が冬の定番アイテムになったの…」

 フッティングの合間に私は思わず呟いた。

「ん?」

 と、一言いって大城さんが私の方に振り向いた。

「もう、俺がこの業界に入る頃にはあったからねー…」

 彼は天井を仰いだ。

 私は自分の肩にかけられているMA-1に視線を落とした。

 何となく触れてみる。ザラザラとしたナイロン生地の感触。布とは違ったその雰囲気は工芸品から工業品へと進化を遂げた軍用品の…。いや、繊維素材そのものの進化を伺わせる。

 まぁ勿論、革製品もフェイクレザーというものがあるがそれとはまた違うあからさまな、合成繊維がもつ無機質な感じは、より過酷な条件下の使用を暗示させる。

「あ、これアルファなんだ」

 右肩にあるペンホルダーに縫い付けられたタグを見て呟いた。

「似せて作られたやつじゃないから暖かいッスよ」

 大城さんはフッティングで使用した衣装を畳みながら私の呟きに答えてくれた。

「ふうん」

 と、その辺りにあったパイプ椅子に腰を落としながら、相づちを打った私は、その流れで床に視線を落とした。

 もはやフライトジャケットの代名詞となったMA-1。

 まぁどちらかと言うとパイロットが着用するより搭乗員が着用する用に開発されたものだ。

 しかし、広義の意味で軍服がファッションの定番になったのはトレンチコート以来ではないのではなかろうか?この、フライトジャケットと いう物は。

 世の中、軍用品からのフィードバックは色々ある。

 細かい事は省くが、電子レンジ、コンピューター、ティッシュペーパー。

 目に見えるものではないが、統計学、現在の運輸業の概念なども兵站からの軍事技術の応用だ。

 ロジスティックという言葉の真の意味は兵站に由来する。

「あれ?リタさんそういうのに興味あるヒト?」

 大城さんは作業の手を止め私に話しかける。

「いや、そういう訳ではないんですけど、戦争のおかげで私達の生活が便利になったかと思うと何だか複雑な…」

 伏せぎ目がちに私は呟くように答えると、その何とも曖昧な返答を誤魔化すかのように、つま先とつま先をこすり合わせた。

「ふうん」

 彼の返事は一言だった。少し間が空く。

「実は俺の弟がそういうの好きで、あのーエアガンで撃ち合うヤツ?サバイバルゲームとかいうの?いい歳こいて未だにやってるンすよ」

「へー、そうなんですか。何だか意外」

「ですかねー。学生ならいざ知らず、社会人にもなってまで続けてるなんて思いもよらなかったッスよ。しかもテッポウ結構いい値段するし」

「ハァ」

「こういう愚痴っぽい話しイヤですよね」

 大城さんは私が気のない返事をしたので気を利かせてきた。

「そんな事ないですよ」

「んじゃ、ま。遠慮なく」

「ふふっ」

 大城さんが何か言おうとした瞬間だった。なんの前触れも無く会議室のドアがノックも無しに開いた。

 そこにいた全員の視線がドアに集中すると同時に。

「ヤダ~、久我山編集長居ないじゃなぁ~い」

 と、高飛車な声が室内に響いた。

 声の主はロングのブロンドをなびかせ、ハイヒールの踵を響かせると、入り口に程近い所にいた、私と大城さんの前で止まった。大袈裟なまでに付けられたアクセサリーの類がガチャリと鳴る。その音に引き寄せられる様に顔を私は上げた。

 それと同時に鼻腔を刺激する強烈な香水の匂い。

 私は思わず表情を歪めそうになったが寸前のところでこらえた。

「あンら~?。誰かと思えばリタ先輩じゃありませんか~」

 尻上り、語尾上がりの言葉使い。明らかに私とは世代も世界も違う人種。

 そう、それは彼女は私が心の中で密かに


辻正信


と、呼ぶ留意する人物だ。

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