第十四話 第二十九部 二人にかける思い。
亜弓「ふぅ…ランニングは何処までいく?」
由紀「迷わない程度だね。」
私と由紀は夜、二人でランニングをしていた。由紀の足取りはかなり軽やかだ。私はゆっくりと走っていくと一人の女性が同じくランニングしていた。
亜弓「あ、どうも…。」
目の前にいたのはあの瑞華だった。私と由紀はペースを落として歩くと瑞華も歩いてペースを落としていた。
瑞華「試合…見てた?」
亜弓「はい。…ホームランすごかったですが…残念でしたね。」
瑞華「…私の力が足りなかったから勝てなかったのよ。」
由紀「瑞華だけが理由じゃないよ。」
そういうと瑞華は上を向いてため息をついた。
瑞華「甲子園ってこんなに厳しいところなんだね。私少し甘くみていたのかもしれない。全力で戦ったのは間違いないわ…。でも…最終的には力と気持ちで負けていた。」
そして瑞華は私と由紀の手を握ってじっと見つめてきた。目からは涙が流れ落ちている。私は思わず胸が苦しくなった。
瑞華「あなたたちは私みたいな思いを絶対にしないでね。」
由紀「瑞華……わかった、私にまかせて。」
亜弓「私も…甲子園で最高のプレーをして…勝ってみせる!」
そして瑞華は手を離すと再び走り始めた。しかしすぐに立ち止まり、振り返った。
瑞華「武士山高校を…倒して。」
そういい残して瑞華は帰っていった。倒して…か。
由紀「なら…勝ち進まないとね。」
亜弓「うん。」




