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帰国
それから数年たったある日、彼から電話があった。
「実はニューヨークで捕まったが、保釈中なので、今のうちに日本に帰る。着いたらまた、連絡してもいいかな。」
アメリカの裁判のシステムがわからなかったので、なんのことだかよくわからないまま、帰国したら会う約束をした。
待ち合わせは恵比寿。
何年かぶりに現れた彼はショートカットにパーマをかけ、エスニックな服装で何人だかわからない風貌だった。
私と別れた後、チャイニーズ・マフィアに仲間入りし、数々の犯罪を犯したこと。
それで捕まったが、保釈中に仲間が用意してくれた『他人のパスポート』で帰国してきたこと。
イメージを変えるため、白いポロシャツに革靴などでツアー客のように装ったこと。
どんな犯罪かは詳しくは語らないものの、毎日が楽しかったと。
彼はとても紳士的な態度で私には優しい。
けれども彼の話は飛んでいて、本当なのか嘘なのか・・・。
とても興奮して話す彼は、犯罪が自慢のようにも感じられた。
暴力的な犯罪を悪びれない彼が少し怖いなと思った。




