第11話: みんなで守る街
掲示板。
【普通とかつまらん】
1:
このゲームの楽しみ方は現実でやれないことやることだろ
2:
NPC殴ってストレス発散して何が悪い
3:
お咎めなしだから楽しかったんだわw
4:
普通のゲーム求めてねーんだよ
5:
掃除NPCマジでクソ
スレは伸びる。
賛同は少ない。
だが声は大きい。
⸻
その投稿者が現れる。
名前は《BreakMan》。
装備は強い。
過去にNPC狩りでレベルを上げたタイプ。
町へ入る。
コメント欄。
「やめとけ」
「まだ分かってないのか」
「消えるぞ」
BreakManが笑う。
「BANされないんだろ?」
広場へ。
俺は掃除をしている。
BreakManが叫ぶ。
「お前のせいでつまらなくなった!」
周囲のプレイヤーが距離を取る。
新人が震える。
ARIAはいない。
今日は配信もない。
BreakManが続ける。
「ゲームなんだから好きにやらせろよ!」
剣を抜く。
「現実で出来ないことやるのが楽しいんだろが!」
振り下ろす。
赤い線が走る。
一瞬。
SYSTEM MESSAGE
CLEANING PROCESS START
BreakManが笑う。
「ほらな、どうせ——」
言葉が途切れる。
HPは減らない。
だが。
装備が消える。
「は?」
インベントリ空白。
スキル消失。
「ちょ、待て」
周囲のプレイヤーが見ている。
誰も助けない。
BreakManが叫ぶ。
「ふざけんな!」
俺が言う。
「逸脱」
赤い線が胸元を通る。
BreakManの名前が揺らぐ。
「俺は悪くねぇだろ!」
俺は一歩近づく。
「現実で出来ないことをやりたいのなら」
視線が合う。
「現実でやれ」
白く弾ける。
BreakMan、消滅。
ログアウト表示なし。
静寂。
⸻
掲示板。
【BreakMan消えた】
【配信なし即死】
【言い訳しても無駄】
誰かが書き込む。
「ストレス発散したいならモンスター殴れ」
いいねが大量につく。
別のレス。
「ゲームだから何してもいい、は違うよな」
それがトップに固定される。
⸻
町。
新人プレイヤーがモンスター討伐に向かう。
笑い声。
依頼完了。
レベルアップ。
誰も消えない。
俺は掃除を続ける。
赤い線は出ない。
静かな町。
逸脱者はいなくなった。
掲示板。
【提案】町を守るプレイヤー自警団作らないか?
1:
また逸脱者出るだろ
2:
NPCが掃除する前に止められたらよくね?
3:
普通に遊びたい人多いし
4:
昨日の見て決めた
5:
賛成
スレは荒れない。
静かに伸びる。
⸻
別スレ。
【自警団参加希望】
・初心者歓迎
・PKしません
・依頼手伝います
・逸脱行為は止めます
コメント欄。
「入る」
「俺も」
「町好きになった」
集まる人数が増えていく。
⸻
町の広場。
数人のプレイヤーが立っている。
武器は構えない。
腕章をつけている。
“Town Guard”
新人に声をかける。
「困ってることある?」
「依頼手伝うよ」
門の前では一人が立っている。
攻撃的な装備のプレイヤーが入ろうとする。
自警団が前に出る。
「この町、攻撃NGなんで」
「モンスター狩りなら外どうぞ」
トラブルは起きない。
挑発しない。
煽らない。
ただルールを伝える。
攻撃する前に、空気で止まる。
⸻
掲示板。
【自警団普通に有能】
1:
荒れない
2:
初心者増えた
3:
依頼回転率上がって草
4:
町が賑わってる
5:
なんかMMOっぽくなったな
⸻
広場。
依頼掲示板の前に列。
パーティ募集の声。
笑い声。
俺は掃除をしている。
ARIAが歩いてくる。
「すごいね」
俺は答える。
「知らない」
ARIAが笑う。
「君が何もしなくても、こうなるんだね」
自警団の一人が新人を連れて出発する。
夕焼け。
赤い線は出ない。
必要ない。
もう町は守られている。
⸻
掲示板の最後の書き込み。
「最強NPCが守る町、じゃなくて」
一拍。
「みんなで守る町になったな」
いいねが積み重なる。
伸びない。
でも消えない。
町は今日も動いている。
静かに。
健全に。




