プロローグ
プロローグ
彼の右腕が燃えている。
ぽつ、ぽつと、夕闇に混じって、細い雨が降り始めていた。冷たさを帯びたその滴は地面を濡らす一方で、彼の右腕に灯る炎だけは、決して揺らがない。
炎は雨粒を弾き、青白い光を放ちながら燃え続ける。濡れた地面から立ち上がる湯気さえも、その光に照らされて神々しく見えた。それは、ただの炎ではなかった。心の穢れを祓う光——そして僕にとっては“希望の灯火”だった。
「……俺と共に来るか?」
彼はそう問いかけてくる。その瞳はすべてを見透かすように深く静かだった。強制ではなく、選択を促すように。——自分の道は自分で決めろ、と。
その瞬間、僕は理解した。僕は彼が紡ぎだす"物語"の中にいたいのだと。
世の中には、無数の物語がある。 悲劇、喜劇、救いの物語。登場人物たちはその中で、恋をし、冒険し、絶望し、そして希望を見つけ出す。
でも、現実でそんなドラマチックなことが自分に起こるなんて思っていなかった。僕はほとんど平凡な中学生で、淡々と日々を過ごしていた。
——彼と出会うまでは。
彼と過ごす日々は、とても平凡とは言えない。それでも僕は後悔しない。自分自身の選択で、その道を踏み出したのだから。
様々な出会いと別れを繰り返してきた。その果てに僕が辿り着いたのは——彼との出会いだった。すべては、あの日から始まった。
これは、彼と僕の物語だ。




