第十二話 入学への第一歩
〜あらすじ〜
アーチボルド団を倒し、新たな町へと辿り着いたリックたち。ーーだがそこには、あらゆる物を腐敗させる力を持った獣人族の男がいた。ピンチに陥ったリックたちの前にフードを被った謎の男が現れた。フードの男によってなんとか危機を脱したリックたちは、死なないよう強くなるために国立グラン冒険者学校に入学することを決めたのだったーー。
「国立グラン冒険者学校に入学することにはしたけど、どうやったら入学できるんだ?」
「えっ?! もしかしてリック、入学の方法を知らずに言ったの?」
「え、そうだけど……」
ヴィクトリアは小さくため息をついた。
「グラン冒険者学校は、基本15歳以上しか入れないの。15歳以下だと……推薦状か、スカウトしか道はないわ」
リックの目が輝く。
「スカウトって……?」
「10年に一度あるかどうかのチャンス。今の私たちには現実的じゃないわ」
「じゃあ、推薦の方か?」
「ええ、そうなんだけど国や冒険者ギルドにある程度顔が利く人からじゃないとダメだし、入学には大金がいるわ」
「大金ってどれくらいいるんだ?」
「……具体的には、入学金だけで金貨100枚。生活費を含めると、私たちが今すぐ稼げる額じゃないわ」
「ほらな。だから言っただろ。ストロント町でお礼、貰っとくべきだったんだよ」
ボルトはため息をつき、やれやれと言いたげに腕を組んだ。
「そんなこと言ったってさ……。もう終わったことだし、あの人たちだって困ってるんだぞ。そんなの、受け取れるわけないだろ」
「……確かに終わったことだしな。まぁ、お前なら受取らねぇとわかってたことだし」
「どうにか金を免除してもらう方法はないのか?」
「……あっ、そういえば成績上位10名は入学金を免除されるって聞いたことあるわ」
ヴィクトリアはそう言うと顎に手を当てて何か考え始めたようだ。
「成績上位10名かぁ。僕はなんとかなるだろうけど、ボルトはどうだろうな〜」
「リック! 俺をバカにしてんのか! 俺だって上位に入り込めるわ! そんなことよりヘレナの方が危ねぇんじゃねぇのか」
「はぁ〜?! 私?! そんなわけないでしょ!」
ヘレナは少しムッとした様子で言い返す。
「私なら余裕でトップ5くらいに入ってみせるわよ」
「……ねぇ、みんな。推薦を書けそうな人を考えたんだけど、ボーデンさんなら推薦状を書けるんじゃない?」
「確かに。でも、ヴィクトリア。アリシアさんだって推薦状を書けるんじゃないか? アリシアさんは首席で卒業したって言ってたし」
「アリシアさんに推薦状を書いてもらったとして、送られてくるのは随分先になるはずよ。それよりボーデンさんに会いに行く方が早いと思うの」
「そうか……」
「村を出て何日だっけ?」
「えっ、20日くらいだったかしら」
「20日か〜。次村に戻る時には、コールを生き返らせて……父さんも連れて戻りたかったんだけどなぁ」
「そうだけど、ボーデンさんもいつでも戻ってきて良いって言ってたことだし」
「確かにそうだな。これからの旅のために戻るのは別に悪いことじゃないよな」
こうして僕たちはサンタリア村へと戻ることになった。
そういえば、あいつは今どうなってるんだ……。
……数十分前 路地裏
リックたちが逃げた後もフードの男と獣人の男の戦いは続いていた。
獣人の鋭い一撃を紙一重でかわし、フードの男は懐に潜り込む。
次の瞬間、鈍い音と共に拳が叩き込まれた。
互いに一歩も引かない攻防が続く中――
「囲め! 逃がすな!」
警備隊と冒険者たちが一斉に間合いを詰める。
「面倒な連中が来やがったな」
獣人の男は足元を軽く踏み鳴らした。
「お前、只者じゃないな」
獣人の男はフードの男にそう言うと、地面に手の平を振り下ろし、石畳に触れる。
獣人の男の周辺が緑に光る。
次の瞬間――石畳が崩れ落ちた。
獣人の男は、ぽっかりと空いた穴へと飛び込む。
その姿は、そのまま地下の闇へと沈んでいった。
「待て!!」
追おうとした冒険者たちの足場も同時に崩れ、行く手を阻まれた。
――だが、その中で一人だけ動いていた。
フードの男は、崩れ落ちる地面の奥の暗闇を見つめながら言った。
「……厄介ごとを増やしやがって」
フードの男はそう呟くと、崩れた地面から静かに視線を外し、その場を後にした。
……現在
僕らはサンタリア村に向けて宿を後にした。
町中を進んでいると、建物から3人が飛び出してきた。
「何があったのかしら」
ヴィクトリアはそう言って、その人たちに近づいて行った。
僕たちもヴィクトリアのあとに続いた。
「何があったんですか?」
1人の女性が震えながらに口にした。
「……地下に繋がる穴から魔物が現れて家に入ってきたんです。2階にまだ、娘が……」
「……安心してください。僕が助けます」
僕はそう言って、家の中へ飛び込んだ。
「リック! ちょっと待って」
その言葉と共にヴィクトリアが、それに続いてロイド、ヘレナ、ボルトが飛び込んできた。
「私とリックは2階に行って子どもを見つけてくるからみんなは1階に魔物がいないか探してくれる?」
「わかった」
「わかったわ」
ロイドはそれに続いて親指を立てた。
僕はヴィクトリアと2階へ上がったが、そこにはゴブリンが複数体いた。
「ゴブリンか」
「リック。ゴブリンは魔物の中でも最低ランクに近いけど、油断しないでよ」
「わかってる」
ゴブリンの内、一体は子どもを持ち上げていた。
「その子どもを離せ!」
「リック! ゴブリンに言葉が通じるわけないでしょ!」
「……あっ、そうだった。じゃあ、力ずくでやるか」
僕は鞘から剣を抜いた。
その剣は刀身がほとんど残っていなかった。
「……」
僕はそのまま剣を鞘に戻した。
……情けないな。
剣が使えないなら!
「グロー……」
「リック! ここ木造の家なんだから、魔術使わないでよ」
「……あっ、そっか……。ごめん」
「……もういい、私がやるわ」
ヴィクトリアはそう言うと、レイピアのような剣を鞘から抜いた。
「風雅流 花霞斬」
ヴィクトリアは細やかでしなやかな足捌きと体の捻りを駆使して、連続で流れるように斬撃を繰り出した。
ヴィクトリアの攻撃で次々とゴブリンは倒されていく。
僕もこうしちゃいられない。
僕は拳でゴブリンを殴り倒した。
その時、僕の前に子どもを持ち上げたゴブリンが立ち塞がった。
僕はゴブリンに蹴りを入れると、ゴブリンは後ろの壁にぶつかった。
その拍子に、子どもが空いた窓から外に放り出された。
「まずい!」
僕も急いで窓から飛び出した。
指先が、あと少し届かない。
その時、どこからか現れたフードの男が子どもをキャッチした。
僕はというと、そのまま地面に衝突しそうなところを片手でキャッチしてもらった。
「……危ねぇな。ちゃんと子どもの面倒は見ろよ」
フードの男はそう言うと、子どもを家族のもとに返した。
「ありがとうございます」
「いや、礼には及ばない」
家族はそのまま近くの警備隊の基地へと向かって行った。
「すみません、助けていただきありがとうございました。何かお礼に差し上げたいんですが……」
「いや、お前に礼を言われる筋合いはない。……俺は俺の都合で動いただけだ」
「あのー、せめて名前だけでも……」
「ダメだ」
「わかりました」
その後、フードの男は何も言わず僕たちの側を後にした。
そして、僕たちは町を出た。
……2日後
「サンタリア村まであとどれくらいだっけ?」
「あと10日くらい歩いたら着くと思うわよ」
「あと10日も〜。……て、あれ? ボルトとヘレナはどこ行った?」
「えっ? うそ〜。ボルト〜! ヘレナ〜!」
その後しばらく探すと近くの森で喧嘩をしながら、水を汲んでいた。
「いや〜、探させちゃって悪いな」
「あんたがこっそりバレないか勝負しようって言ったんじゃない!」
「え? なら、1人ずつ行かないと勝負にならないんじゃないか」
「……」
「確かに」
「確かに」
「お前らな……」
その後、食料を探すためみんなで森へ入るとキラーラビットがいた。
「今晩はこいつになりそうだな」
ボルトがキラーラビットを倒し、ロイドが切り分けた。
僕は焚き木を集めて火をつけた。
その後、5人でキラーラビットを食べて眠りについた。
……4日後
「飽きた〜」
ヘレナは特に味付けのしていない肉に飽きてきたらしい。
「まぁ、確かに最近はキラーラビットばかりだったしな」
「ていうか、キラーラビットってあんなに弱いのか?」
「確かにおかしいわね」
「そんなことより僕も飽きてきたし、近くの村か町でなんか食べていこう」
「そうね」
「賛成〜」
その後、僕たちは近くの村の飲食店に寄った。
「タウルス・フェロクスのバターソテーで」
「おい、リック。焼いただけのは飽きたんじゃなかったのか?」
「バターついてるだけでも大違いだよ」
「生クリームのパンケーキで!」
「ヘレナ〜! え? これおやつとかじゃないんだよ?!」
「え、そんなのわかってるわよ。私はこれが食べたいから食べるの」
「あぁ、そう」
「俺はそうだなぁ。……ビッグホーンのコンフィで」
「じゃあ私は、ベーグルで」
しばらくすると、みんなが頼んだ料理が運ばれてきた。
肝心の僕が頼んだタウルス・フェロクスのバターソテーはというと、ほんのり香るバターの匂いと歯応えがあって非常に食べ応えのあるものだった。
こうして、僕たちは久しぶりにまともな食事にありついた。
僕らは食事を終えると再びサンタリア村へ向けて出発した。
……数日後
「……やっとだ」
目の前には、懐かしい丘と村の景色が広がっていた。
「また、帰ってきたんだな」
……強くならないといけない。
もう誰も失わず、家族を取り戻すために。
その思いを胸に、僕たちはサンタリア村へと歩き出した。
タウルス・フェロクス…牛のような魔物
ビッグ・ホーン…羊のような魔物
中々時間が取れなくて久々の投稿となりました。
次回は6日後の土曜日に投稿を予定しております。




