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48話 大っ嫌い!(絵里SIDE)

 春翔なんて大っ嫌い!


 思わず言ってしまった一言に、あたしはスマホを片手に一睡も出来ず次の日になってしまった。


 大嫌いなはずがない…… だって中学の頃からずっと好きなんだから。 ただちょっと美紀と近江会長にヤキモキを妬いただけ。 いや、ちょっとどころではないんだけど。


 俺は人間じゃない


 アイツがあの状況で言うんだもん、多分本当のことだ。 でも昨日はあたしをはぐらかす嘘だと思ったし、美紀と近江会長の名前でカッとなってしまった。


 スマホの画面には飛島春翔の文字。 通話ボタンをタップすればいいだけ! なんだけど押せない自分がいる。


「絵里ー! 遅刻するわよー! 」


 お母さんの声にベッドからゆっくりと体を起こす。 足も痛いし、今日は休んじゃおうかな……


「いやダメ! 時間が経つほど気まずくなる! 」


 学校に行けばイヤでも顔を合わせるのだから、後はなるようにしかならないでしょ! たった一回の大喧嘩で、春翔を諦める事なんて出来なかった。




「おはよ 」


「おう…… 」


 昼休みまで、春翔と交わした会話はこれだけ。 あまりにも素っ気ないアイツの態度に涙が出そうになる。


「足痛いの? 大丈夫? 」


仲のいい真美(まみ)が声を掛けてくれるけど、そうじゃないのよ…… 


「ううん、大丈夫。 ありがとう心配してくれて 」


「違うってばまみ子、絵里ってば飛島が構ってくれないからいじけてるだけよ 」


 真美の後ろから出てきたのは、中学からの友達の夏希(なつき)。 周りの事情に妙に敏感なのよね、この人。


「違うわよ! 別にアイツの事なんか気にしてないし! 」


「ほら怒った。 無理しない無理しない! 」


「ちょっ! やめっ!? 」


 足を痛めてるのをいいことに、夏希はあたしの後ろに回り込んで胸を揉んでくる。 昔からこうなのだ…… この人なりのスキンシップなのだろうけど、あんまりおっきくもないんだからやめてほしい。


「あら…… ちょっと大きくなった? 揉んでもらった? 」


「大きくなってない! 揉んでもらってない! 」


 振りほどこうともがいていると、教室に戻って来た春翔がこっちを見ている事に気が付いた。 目線が合いそうになるとフッと目を逸らす。


 なんなのそれ…… っていうか、昨日の事やっぱり気にしてるよね。


 帰りまでには話しかけよう! と心に決めた瞬間、夏希の手が脇腹を張ってお尻に伸びてきた。


「こっちはどうかなー! 」


「ひあっ!? 」


「いい声で鳴くのぉ! ()いやつめ愛いやつめ! 」


「あはは…… いやぁー! 」


 誰も止めてくれないし、男子達には興味深々で見られてるし最低ー!




「はあ…… 」


 悶々としているうちに今日の授業は終わってしまった。 帰りに春翔に声を掛けようと思った時には、ミキにあっという間にさらわれてもういない。 追いかけようにもこの足じゃままならないし…… 机に突っ伏して、下校ラッシュの生徒玄関が空くのを待つ。


「そうだ…… 」


 春翔が言っていた空間転移能力。 運よく(・・・)助けられたという近江会長に話を聞いてみようと思った。 春翔とはあまり説明してくれないうちにケンカになっちゃったし、どんなものなのかは気になっていた。 彼女なら生徒会室に行けば会えるはず。




「どうぞ 」


 コンコンとノックをしてドアを開けると、カモミールの甘い香りが流れて来た。


「失礼します 」


 室内には幸い近江会長一人。 他の生徒会役員が来る前に聞かなければ。


「二年の高坂です。 あの…… 」


「淹れたばかりの紅茶ですけれどどうですか? 」


 飲まないといけない妙な雰囲気に、思わず『はい』と返事をしてしまった。 優しい口調なのに、従わなきゃダメなような威厳があるんだよね、この人。


 ソファを勧められ、言われるがままに腰を下ろすと『大丈夫ですか?』と足の包帯を見た彼女は心配してくれる。


「平気です。 会長、単刀直入に聞きます 」


「はい。 なんでしょう? 」


「春翔のこと、どう思ってるんですか? 」


 ちがーう! 喉が詰まるような感覚に負けないよう勢いに任せてそう口走ってしまった。 聞きたいのは空間転移なのに…… 全てをすっ飛ばして、これじゃヤキモチ妬いてるみたいじゃん!


「好きですよ。 とても 」


 あ…… この人には敵わないとおもってしまった。 サラッと本音を言えるのは自分に自信があるのか、それとももう春翔から…… 


「素敵な方ですよね。 フラれてしまいましたけど 」


 えっ? えっ!?


「高坂さんも彼の事が好きなんですよね…… 恋のライバルです 」


 ニコリと笑って握手を求めてきたその手を、思わず握り返してしまった。


「え…… と 」


「あなたが春翔君の正体を知った事はお昼休みに聞きました。 それでもあなたは彼を愛せますか? 」


 正直カチンときた。 出会って間もないのに、この人は春翔の何を見て、何を知っていて好きだと言うのだろう。 あたしの方が何倍も何百倍もアイツを見てきた!


「当たり前です! クローンだかケローンだか知らないけど、春翔は春翔です。 それ以外の何者でもない! 」


 彼女は途端に満面の笑みになる。 え…… なんかおかしなこと言った?


「全くその通りです! ですが彼、頑なに『人間じゃないから付き合えない』なんて言うんですよ? そういう問題ではないのに! 」


 握手した手を両手でガッチリと握られ、突然フレンドリーな雰囲気を見せる近江会長。 なんだかすっかり邪気を抜かれてしまった。 おかげですっ飛ばしてしまった事が聞けそうな気がする。


「会長、教えて下さい 」


 あたしは彼女に思いつくままの質問をぶつけるのだった。


  

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