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45話 お客さん…… だと?

 突然の告白に、俺も美紀も動揺を隠せない。 本條先輩の存在は伏せておくつもりだったが、彼女の事だから上手く説明するのだろう。 その様子を黙って見守る。


「その方は女性でして…… 」


「女!? ストーカーが女なんですか! 」


「おとなしく聞け! 」


 美紀と二人で後頭部に蹴りを入れてやる。


「とても恩義のある方なんですが、少し危ない目に遭ったんです。 あなたのような逞しい方が側にいれば、彼女も一歩引いて冷静になるのではと。 それで春翔君にあなたを紹介して貰ったんです 」


「逞し…… い…… 」


 ボソッと呟いた蘇我はピクリとも動かない。 どうした? 壊れたか?


「放課後、生徒会の仕事があって遅いのですが、校舎を出るまでで構わないんです。 見守ってもらえますか? 」


「もちろんです!  お任せください! 」


 間髪入れずに答えた蘇我は、俺に振り向いて親指を立てた。 さっきまでの疑いの念はどこ行ったんだよ!


「ありがとう! 早速なんですが、今日からお願いしてもいいですか!? 」


 手を取って上目遣いで見上げる彼女に、蘇我は一撃で昇天してしまったらしい。 彼女も彼女で、それを狙ってやってないのだからタチが悪い。


「それじゃ失礼します 」


 俺と美紀は魂が抜けた蘇我を両脇から抱えて、生徒会室を出る。 仰々しく頭を下げて見送る彼女に苦笑いを向けると、彼女はフッと顔を上げてウインクをしていた。 確信犯でした…… 先輩もやるな。




「なぁ飛島、近江先輩とお近づきになれたのは嬉しいんだけどよ。 何でお前じゃないんだ? 」


 教室に戻る途中、復帰した蘇我がそんなことを聞いてくる。


 本條先輩の牽制が目的なのだから、チカラがバレた俺や可愛らしい美紀がいるより素性の分からない強面の男が適任。 そうゆかり先輩と今朝に話し合ったのだ。 ゆかり先輩は無関係な人を巻き込みたくないと言ったが、また一人を狙われた後では遅い。


「お前が頼りになるって思ったんだよ。 俺、格闘系じゃないし 」


 蘇我は中学時代から少しヤンチャだったようだから、万が一の時にも対処出来ると思ったのだ。 それにこの男、やることは雑だが根は真面目。 愛するゆかり先輩の為なら死んでも守り抜くだろう。


「お前…… 」


 蘇我は少し目を潤ませながら、俺の肩を掴みユサユサと前後に揺する。 お約束なんだなこれは!


「おー!  心の友よー! 」


 どこかで聞いた懐かしいセリフだが暑苦しいのですぐに振りほどいてやった。


「あっ! やっと帰ってきた! 」


 教室に戻ってくるなり絵里に声をかけられた。


「さっきあんたにお客さん来てたよ。 名前聞かなかったけど 」


「お客さん? 」


 珍しい…… というか、このタイミングで来るならあの人しかいない。


「うん、ちょっと暗そうな女子。 三年生かな?  あたしは見たことない人だったけど 」


「春君 」


 美紀も勘付いたらしく、ひとつ頷いて走り去って行く。


「ちょっ、ミキ! 待ちなさいよ! 」


「またね絵里ちゃーん! 」


 逃げるように出て行った美紀は、ゆかり先輩にこの事を伝えに行ってくれたのだ。 こんな時、ゆかり先輩のスマホが壊れてなければと悔しくなる。


「何よあれ…… 最近付き合い悪くない? 」


「そうか? あいつは昔から気まぐれじゃん 」


 『まあね』とため息をついた絵里は、次に蘇我を見て顔を歪める。


「キモっ! なんで鼻の下伸びてんのよ! 」


「あぁ!? お前にゃ関係ねぇよ! 」


 そう怒鳴りつけて自分の席に戻っていく。 お前、絵里も気に入ってたんじゃなかったのか? ゆかり先輩に頼られてからこの態度の違い…… 蘇我にはもう他の女子など眼中にないらしい。 これなら本條先輩相手でも問題ないか。


「なにあれ! ねぇ春翔、あいつ会長と何話してたの? 」


「さあ。 俺は連れて行っただけだし…… おふっ!? 」


 思いっきりボディブローを入れられてしまった。 最近こいつ暴力的になってない?


「ねぇ春翔…… 教えてよ…… 」


 前屈みになったところに絵里は俺の首に腕を回し、キスしそうな勢いで迫ってくる。 少し潤んだ瞳にドキッとしたが、俺はすかさず脇腹を突っついてやった。


「ひあっ!? 」


 可愛い叫びと共に絵里は飛び上がる。


「んふ!? 」


 やめておけばよかった…… 絵里の胸に顔を埋めてしまったのだ。


「おー! こんなとこで始めるなんて大胆だな飛島! 」


「いけー! 絵里ー! キャー! 」


 違うわ! 女子達の『いけー!』ってなんだよ!


 その後、絵里にタコ殴りにされたのは言うまでもない。

 

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