第14話
「この青緑色の光苔が密集している場所には、採取リストに載っている清水花が生えている事が多いです。ありましたね、これが清水花です。光苔の色と似ていて、さらに花が小さい為見つけにくいですが、分布が重なる光苔を知っていれば見つけやすくなります」
『これが清水花なんだ。この世界はほんと綺麗だな』
清水花はサファイアで出来た花弁のルリハコベみたいな花だ。
青緑色に光る苔の中に清水花が混ざる様は水の波紋が広がっている様に見える。
ほとんどが戦闘や暗がりの中での探索などばかりで気が滅入るダンジョンだが、たまに幻想的な異世界の景色を楽しむことで、この世界を冒険したいと思ってしまう。
アルテは最後の採取項目の清水花を採取し、最後の試練となる試験官の居る門の前に来た。
「この扉を開けたら、最後の試練ですよ」
目の前にはなぜか地獄の扉然とした悪魔の様な彫刻がされた石造りの門がある。
いや、本当になんでこんなに凝った扉を造ってんの?
「さて、最後の試練はⅭランクの冒険者チームが相手ですよ。この先の広間は、防御を破り生身の部分に攻撃が当たった場合、広間の端に転送されるようになっています。ですので戦いでは死ぬことがほぼありません。なので、全力で戦って大丈夫ですよ」
『分かった』
「それでは行きましょうか」
アルテが門の前に立ち、手を翳すとゆっくりと扉が開いていく。扉の先は道中の洞窟と違い、上から光が差し、人工の石壁に囲まれた広間になっている。
「おお、ここまで来るなんて凄いじゃねーか」
広間に入ると槍を肩に乗せてこちらを面白そうに眺める青い髪をした男が、楽しそうに声をかけてきた。その隣には此方を厳しい目で見つめてくる、両手に盾を持つフルプレートのがっしりとした男がいる。他にはいかにも魔女といった姿の女性と神聖な気配のする法衣に身を包んだ女性が、アルテを見つけられず困惑していた。
「気配が全くしない。目を離したら直ぐに見失ってしまうな」
「扉が開いたのだからそこに居るんでしょうけど、私には見つけられないわね。リーンはどう?」
「私も分かりません。すみませんが私達にもわかる様にして頂いてもよろしいでしょうか?」
「これでいいか?」
アルテは僧侶の頼みに応えてフードを取り、幽闇の衣の効果を切った。これで、彼女達にもアルテを認識出来る様になった。
「おほー、こりゃスゲー女だな。仕事が終わった後、一緒に食事に行かねーか?」
「おお」
「凄いわね」
「とても奇麗な方ですね」
アルテの素顔を見た彼らはそれぞれ感嘆の声を上げている。だけどそんな中、槍の男はもう既にアルテに口説きに掛かっている。
色々と凄いなこの男。
「早く試験を始めてくれ」
アルテの若干嫌そうな雰囲気が滲みでている。
「はは、そうだな。さっさと仕事を終わらせて、心置きなく話したいよな」
「どう見てもお前の相手をするのを迷惑がっているだろう。いい加減にしておけ」
「すみません、彼は腕は確かですけど恋多き方なので。ですが、基本は良い人なので今後もよろしくお願いしますね」
手慣れた感じで盾の男が槍の男に注意し、僧侶がアルテに謝ってくる。
ケッ、イケメンが。ぜってー泣かす。
「そうか。試験はお互いが防御を突破された攻撃を被弾せずに、先に全滅させた方の勝ちで良かったな?」
「ええ、そうです。試験はこの魔道具の音が鳴った瞬間に開始です。この魔道具は起動してから6秒以内にランダムのタイミングで音が出ます」
「分かった。この試合ではこの魔道具を使わないで戦おう。では始めてくれ」
アルテがローブを手で広げながら使わない事を宣言したおかげで、準備を整え布陣を終えていた相手の目つきが鋭くなりやがった。
「はっ、凄い自信じゃねーか。でも良いのか?この試験は結果が全てだ。本気じゃなかったなんて言い訳はきかねーぞ」
槍の男が無表情に言い放ってくる。
飄々としていた奴が無表情になるとかなり迫力がある。
「構わない。これを使わなくても私が勝つ」
「本当に凄い自信ね。遠慮なく全力で潰させてもらうわ」
「あまり感情的になるな。冷静にいくぞ」
だが、アルテは何ともない様に更に挑発していく。それを受けて相手方は更に戦意を高めていき、俺は無理矢理上げた戦意が気圧されて下がりそうになる。
本当に勘弁してほしい。
「では、起動しますね」
僧侶はそんな俺たちの事など関係ないかの様に魔道具を起動させた。
さっきの反応から実力的には槍の男が一番強そうだけど、リーダーと副リーダー的ポジションはこの二人が担っているんだろうな。
魔女はなんか我関せずでずっとアルテを観察してるし。
僧侶が魔道具を起動した事により、全員音が鳴った瞬間に行動を起せる様に構え、数秒後に開始の音が鳴り響いた。
「死ね」
槍の男がその一言と共に一瞬で距離を詰めてくる。
俺が開始直後に決め打ちの雷の範囲魔法を放ったが、槍の男は雷を切り裂きながら何事もなく10メートル程の距離を詰めて、その勢いのまま槍を突き出してきた。




