第126話 合流と戯事と
「よぉ、イリス。来たか」
連合軍に合流した僕を迎えたのは土方さんと高杉さん、それに他の皆もだった。
「お待たせしました」
「ああ。そこまでじゃねぇよ。それより、よく生き延びた」
土方さんが僕の肩に手を置く。
そのまっすぐな視線が僕を労わるように、僕の無事を心の底から喜んでいるようで、なんとも言えない充足感が僕の胸に広がった。
「土方くん。彼女の世界では、それは違法行為らしいよ。セクハラという、士道に背きまじきことのいの一番だと、イリスから聞いた」
「な?」
高杉さんが茶化すように言う。
それを受けて土方さんは顔をひきつらせた。
「え、てか勝手に触ってくるとか菊的には最悪です。本気で近寄らないでもらえます?」
「え、ちょ!?」
「あー、確かに分かるかも。旦那意外だったら雷三十連発だわ」
「誾千代、怖いよ!?」
「イリス……可哀そう」
「おい、マシューまで……」
「やれやれヒジカタ。君は女性の扱いがなってないな。仕方ない。このローマいちのモテ男である私がレクチャーしてやろう」
「ハゲジジイ、てめぇ切腹だ!」
なんだか色々騒がしいけど、なんだか戻ってきたって感じがする。
半年前からだいぶ減ってしまったけど。それでも、ここには明るさがあって。活気があって。生きる力を感じられた。
もちろん、その中に入らない人たちもいるけど、そっちはそっちでいるようだ。
「ふん」
と謙信さんは興味なさそうに鼻を鳴らしながらも、こちらを見てなんとなく眼が笑った気がした。
「なんかにぎやかですね」
「まぁ彼女が無事だというのが何よりの朗報なのだろう」
「ええ。私も良かったです」
「ふっ。小松よ。お主もあの少女に惹かれるのだな」
「そ、い、いえ。ただ因縁の相手というか、なんというか!」
関羽と小松。トンカイの2人は空気も独特だなぁ。
そんな和気あいあいな出迎えを受けつつも、あの人の話題になれば空気が重くなる。
「土方さん、琴さんは……」
「ああ。聞いたよ」
「その、すみません」
「なんでお前が謝る?」
「いえ、僕がうまくできなかったから……」
「イリス。お前ぇ甘えんなよ。そんな自分だけで世の中が回ってるみてぇなこと、そんなのありゃしねぇんだよ。あいつが死んだのはあいつの行動の結果だ。お前が何をしようがあいつは死んだし、その責任はあいつに帰結する。お前の責任なんかありゃしねぇよ」
「でも……」
「あいつは裏切った。切腹ものだ。だが最期はお前を守るために、なんと言われようとも再び裏切ったんだろう。そしてお前を守るために命を投げ出したんだ。それをお前はうだうだと。それは命をくれたあいつへの侮辱じゃねぇのか? どうなんだ?」
「…………」
それは、そうなのだろうか。
分からない。けど、琴さんが僕を助けようと動いたのは確かで。その結果に彼女の最期は、確かに微笑んでいた。
「だから謝んな。あいつのことで謝ったら、もうあれだ。切腹だ。士道不覚悟だ。そんなことを言ってる暇があったら剣を抜け、戦え、生きろ、諦めんな。それがあいつの望んだ、お前の未来だ」
「…………分かりました」
この人の言う言葉は重い。
彼も年来の友であった山南さんを自らの手で処断している。不仲だったとか、山南さんが裏切ったとか、組織のためだとか色々理由はあれど、彼は友の死を乗り越えて新選組という組織を巨大化させ、最後は幕臣取り立てにまで上り詰めたのだ。
まったく。この人は厳しい。そして、優しい。
僕のことを、将来のことを慮って、彼だって辛いだろうに、そんな素振りを見せずに僕を励ましてくれている。
本当にこの人には頭が下がる。本来は同年代のはずなのに、なんだかその器の差も思い知らされるものだ。
だから、僕もやめよう。泣いたり、嘆いたり。
それはきっと、琴さんのことを侮辱することだから。
だから生きよう。笑って。これから先の未来。
あと1カ月もないけれど。最後の1分まで。終わりの1秒まで。
それまで、生き続けよう。
そう、心に誓ったのだった。




