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第123話 無双の仇

 呂布を殺す。

 そう思った時に、どうやってという思いは出てくる。

 なにせ三国志最強の男だ。一騎討ちでは誰も――あの関羽さんでも倒せなかった。

 武力の面で言えば、あの項羽に匹敵するとも言われるほど。


 そんな男に、1人でどうやって勝つのか。


 けどそれはもうなしにしよう。


 勝てないとかどうやってとか、そんなことはどうでもいい。


 ただ殺す。

 死んでも殺す。


 それだけを心に刻んで戦えばいい。


 その果てに無事目的を達成しようが、その前に僕自身に何が起きようが大した差じゃない。


 だからとりあえずの問題は寿命。

 残り60日もない寿命。その“どこまでを削る”か、だ。


 あのなんとかV2とかいうのは100日を消費するとあのクソ自称死神は言っていた。

 けどその100日消費をすることができるなら。その消費量をコントロールすることもできるのでは。瞬間瞬間で消費すれば、あのチート武力の呂布をおも上回れるのでは。

 そう感じた。

 軍神の勘だ。


 決着は一瞬。

 そこにすべてを賭ける。


「はぁっ!!」


 呂布の一撃。赤煌しゃっこうで受ける。馬ごと弾き飛ばされた。


 はっ。やっぱ呂布だ。これが呂布だ。


「殺意はよし。だが腕が伴わなくてはな」


「ぬかせ」


 強がりを言った。

 さらに呂布が方天画戟を振って間合いを詰めてくる。得物の長さも手足の長さも相手が上。しかも馬はあの赤兎馬。軍神を発動してやっと互角どころじゃない。なんとか瞬殺されないよう耐えるだけだ。

 ただそれも限度がある。


「どうした。引きこもっているだけでは勝てんぞ!」


「っ!!」


 それはそう。手を出さないとじり貧だ。

 けど手を出せばその瞬間を待ってましたといわんばかりに突かれる。


 だからここはけん。耐えきることにする。

 殺すと言っておきながら守りだなんておかしな話だけど、それが一番の、唯一の勝機。耐えて耐えて。その一瞬を見逃さない。それまで怒りと殺意を胸の奥にしまい込め。


 さっと離れる。そして近づいて守る。

 その繰り返し。

 地に足をつけてゼロ距離で殴り合う歩兵の戦いじゃなくて良かった。馬ならすれ違いざまに一息つける。それが大きい。


 それを繰り返し、軍神の力を刹那に込めて温存しながら戦うこと数分。


「いい加減に――」


 勝機が来た。

 守り一辺倒の僕にごうを煮やしたのか、呂布が、赤兎馬が文字通り飛んだ。


 スキルだ。


 張遼はこれを真っ向からぶつかり、その結果、呂布に傷を負わせたものの自身は致命傷に近い傷を負って今は後方だ。


 それも当然かと、今実物を見て思う。

 馬が天馬ペガサスみたいに飛んでいるという、冗談みたいな現象に見える。だが実際はメルヘンほど笑えない。

 あの巨体と巨馬。その2つが1つの砲弾として突っ込んでくるのだ。その速度と質量、方天画戟が伸ばされなくてもただそこにいれば跳ね飛ばされて五体満足でいられない必殺の技に違いない。

 例えれば減速なしに通過していく特急列車の前に立つようなもの。


 だが――


「それを、待っていた!!」


 馬を走らせる。呂布に向かって、その反対側。呂布から距離を取るように。背を向けて駆ける。

 当然、あちらの方が速い。すぐに追いつかれる。けどそれでいい。欲しかったのはほんの数秒。


 目的の場所につくと、呂布がこちらに向かって狙いを定めているところ。次の瞬間には猛スピードで突っ込んでくる。

 僕はそこで馬から飛び降りた。左足が地面につくと同時、くるりと回転を加える。呂布に背を向けている状態から正面きって向かい合う形。

 そこから右足を地面に突き刺すように踏みしめる。そうやって地面から上に向かっての反動の力を得る。さらに腰を回転させてその力を倍化。右手には逆手に持った赤煌しゃっこう

 それを地面を踏みしめた右足からの反発。腰の回転。右腕を鞭のようにしたて、力を漏らすことなく全てそこにつぎ込む。


「はぁぁぁぁぁぁ!!」


 やり投げのフォーム。

 軍神の力を込めて放たれるのは赤煌しゃっこうの弾丸。

 それは超高速で突っ込んでくる呂布に向かって飛ぶ。


「しゃらくさい!」


 反応した。

 相手は超特急の速度。そこに全力のやり投げが来れば、何が起きるか知覚する前に頭部がはじけ飛んだはずだ。


 常人なら。


 それに反応するのが呂布。それを弾くのが呂布。


 舐めていたわけじゃない。少なくとも


 呂布の方天画戟が赤煌しゃっこうを斜めから斬り上げた。半ばほどから両断された赤煌しゃっこうは先端は呂布を外れて飛んでいく。だが後ろが呂布の右肩をえぐり、弾かれて後方に飛んでいった。


 だが呂布はその傷をものともせずに突っ込んでくる。

 しかも切り上げたままの方天画戟を、振り下ろすようにして突っ込んでくる。空気抵抗も馬鹿にならないだろうに、とんでもない力だ。

 それによって呂布の砲弾は格段に攻撃力を増した。


 そしてそれが地面にいる僕に着弾するのはもはや2秒を待たない状況。


 直後。全てを破壊するような、とてつもない衝撃が周囲を襲った。

 吹きすさぶ突風。

 吹き荒れる土埃。


 その奔流に巻き込まれながらも、僕は考える。


 生きている。

 ギリギリ回避できた。

 それも赤煌しゃっこうのおかげ。呂布が赤煌しゃっこうを迎撃した瞬間に、その意識は一瞬僕から外れた。そして赤煌しゃっこうを斬り捨てた呂布は、僕の回避運動に気づいただろう。

 だがその時には地面に激突寸前。そこから目標を再び設定することはできず、停止も出来ず、そのまま僕が元いた場所を吹き飛ばしたのだ。


 それでもわずか数秒で逃げるのは、直撃を避けるレベルの話。

 爆心地グラウンドゼロを外したものの、その衝撃は避けられない。


 けどそれでいい。

 生きていれば。


 ここだ。

 ひたすらに呂布の攻撃を耐えたのも。

 呂布のスキルを引き出したのも。

 この場所に誘い込んだのも。

 赤煌しゃっこうを犠牲にしたのも。


 全てこの一瞬のため。


 地面に転がるそれ――琴さんの薙刀。それを拾い上げる。


 同時、軍神を解放した。

 通常の軍神ではない。V2とかいうのでもない。

 今までの軍神より強く、かといって100日も消費するような完全燃焼でもない。これまでの2倍ほど。自分の中にある何かを燃やすようにして解放した。

 これまで百回と使って来たスキルだ。なんとなくコツは分かった。


 だからその力でもって、呂布に向かって薙刀を切り上げる。


 超高速から一気に停止した時間の差。

 武器を失った僕へのわずかな油断。

 赤煌しゃっこうによる傷。

 完全に死角からの奇襲。


 それらが一致した。


 呂布の眼。合致する。

 見られた。迎撃される。いや、行け。このまま一気に振り切る。


 そして薙刀の刃が呂布に食い込むその直前。


「見事だ、貂蝉ちょうせん


 そう、小さく呂布が笑った。気がした。

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