1 異世界で嫁ができました。
ジャンルをファンタジーにするか悩んでとりあえず恋愛に・・・
ほのぼの系です。
「おお!成功か!」
目を開けると見知らぬ場所にいた。
目の前には神官のような服装の人物や甲冑を着た騎士みたいな人・・・あと、ドレスを着たいかにもお姫様みたいな人がいた。
コスプレかな・・・
ってか、あれ?ここどこ?
困惑しているとお姫様らしきドレスを着た美少女が一歩前に出て頭を下げた。
「突然のお呼びだし申し訳ありません。私は、フィオネス王国第二王女のリリシア・フォン・フィオネスと申します。あなたのお名前をお聞きしても?」
「あ、えっと・・・佐藤雄二です。」
丁寧な挨拶に状況を忘れて思わず頭を下げてしまった。
そんな俺をみて、お姫様はニッコリと微笑んだ。
「サトウユウジ様ですね。では、ユウジ様。まずは突然こちらにお呼びしてしまったことをお詫びいたします。申し訳ありません。」
「あ、はい・・・えっと、それよりもここは・・・しかもフィオネス王国って・・・」
現代日本・・・いや、現代社会において、王国どころか王女なんて肩書きもなければ、フィオネス王国なんて場所も知らない。
しかも、さっきまでいた公園から一気に別の場所へのワープというあり得ない現象。
まるで夢物語のような出来事に困惑している俺に王女様は答えた。
「ここフィオネス王国は5つの大陸の中でもっとも大きな大陸の首都にあたる場所です。そして・・・あなたたちの言葉で言うとここは『異世界』にあたる場所になると思います。」
「異世界ですか・・・」
正直そう言われてもピンと来なかった。
確かにいきなり移動させられて見知らぬ場所にいることとか、さっきから上空になんか見知らぬ生き物がいることとか、目の前の超絶美少女を見ればなんか納得は出来そうなんだけど、なんていうか・・・
「俺の妄想力半端ねぇ・・・」
「もうそう・・・夢のことですか?でしたら夢ではありませんよ?ほら。」
そう言ってお姫様・・・リリシアは現実逃避しようとした俺の顔に触れた。
頬に触れた感触は柔らかく、女性的なしなやかで綺麗な肌をしており、そこから伝わってくる体温は紛れもなく人間のものだった。
現実だと認識すると俺の意識は覚醒して恥ずかしさからふいに頬が熱くなってくる。
「え、えーと・・・王女様・・・」
「あ、ユウジ様。私のことはリリシアとお呼びください。」
「そ、それは・・・」
初対面の美少女を名前呼びしろと?
どんだけハードル高いんだよ。
言葉を濁す俺にリリシアは悲しげに表情を曇らせた。
「嫌・・・ですか?」
「よろこんで呼ばせてもらいます。リリシア様。」
無理だよ。こんな美少女に悲しげな顔させるなんて俺には耐えられない。
そう思って呼んだけどまだ少し不満そうな表情のリリシア。
「まあ、いいです。それでですねユウジ様。私逹は今回あなたをお呼びした理由なのですが・・・」
「あ、えっと、まさか魔王を倒せとか・・・」
異世界転移、王女と来れば、勇者として魔王を倒せとかそんな展開が王道だよね?
とか思って発言したけど、俺の言葉にリリシアは首を傾げた。
「魔王ですか?いえ、魔王はいますが倒して欲しくはないです。そもそも、倒したら国際問題になりますから。」
「え?国際問題?」
「はい。魔王は魔物と呼ばれる生き物や魔族と呼ばれる存在が多くいる、魔界を納めています。魔物は本来は野生の動物と同じような本能で生きているのですが、それを抑えているのが魔王なんです。」
「抑えているって・・・」
「魔物の本能とは生存本能。魔物は人間を襲うこと・・・食べることが本能的に決まっています。それを魔王は魔界という魔力が満ちた場所を作ることで抑えて、人間と魔物両方を守っているのです。」
「魔力っていうのは?」
「生物がもつ生命力みたいなものです。もともと魔物は人間にある魔力を食らうことで生きますから。魔界では魔力が満ちているのでその心配はありません。」
「なるほど・・・じゃあ、なんで俺は呼ばれたんですか?」
正直、こんなファンタジーな場所に魔王倒す以外で呼ばれる理由が分からない。
さっきの話だと魔王はどうやら普通に王様・・・とういうか、人間と敵対はしてないようだし、本気でどうして呼ばれたんだ?
不思議に思っているとリリシアは「それはですね・・・」と少し間をおいてから笑顔で言った。
「私と結婚して欲しいんです!」
・・・・・・・えっ?
「えっと・・・・・」
「私と結婚して欲しいんです!」
「いや、聞こえてはいます。ただ理解ができなくて・・・」
結婚・・・って、あれだよね?男と女が夫婦になるあれだよね?えっと・・・なんで俺は異世界召喚されて求婚されてんの?しかも美少女に。
「えっと・・・リリシア様はなんで俺なんかと結婚したいんですか?」
これだけの美少女なら俺みたいな普通の物件を異世界から呼ばずとも他にあるだろうに・・・
そう思っているとリリシアは笑顔で言った。
「それはですね・・・ユウジ様は私の理想の結婚相手として召喚されたからです。」
「えっと・・・理想の?」
「はい。詳しくは後で話しますが・・・どうですか?私と結婚してくださいますか?」
分からない・・・けど・・・
「俺はですね・・・ここに呼ばれる前に彼女と別れたんです。理由は彼女が浮気していたから。しかも何人もの男と関係を持ってて・・・おまけに最後の言葉をなんて言ったと思います?『みんな同じくらい好きだから許してね』ですよ。前は俺だけを愛してるとか言っていたのに・・・」
別れを切り出した時に彼女は悲しげな顔を見せたが、俺が無理だとわかるとこちらに欠片も興味をなくした表情をしてあっさりと去っていった。
おまけに、『雄二はダメか・・・じゃあ、他のルートにするしかないかな』なんて呟いて・・・
まるでゲームでもやってるかのように・・・あっさりと・・・だから・・・
「あなたは・・・リリシア様は俺を裏切らないと誓えますか?俺だけを愛せると・・・俺だけを見れると言えますか?」
そう真剣に問いかけるとリリシアは慈愛に満ちた表情を浮かべながら言った。
「勿論です。逆にこちらからも聞きますが、あなたはどうですか?私を愛せますか?」
「それは・・・」
正直会ったばかりの初対面の人間にいきなり好意を向けるのは難しい。だけど・・・
「リリシア様が俺だけを見てくれるなら・・・愛せます。」
「では、大丈夫です。私は前からあなた一人を愛してますから。」
気になることは多々あるけど、リリシアのその瞳の真剣さや優しげな表情に俺は・・・
「よろしくお願いします。リリシア様。」
思わず頭を下げていた。
そんな俺にリリシアも笑顔で言った。
「こちらこそ、よろしくお願いいたします。ユウジ様。」
かくして俺は、よく分からないままに、異世界召喚されて嫁が出来てしまった。