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燦光伝  作者: sanpo


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*47

     


 深更、急遽召喚された丞相以下、沙嘴国廷臣たちは〈王の間〉に慄然として立ち竦むばかりだった。

 自身、血の染みた巾を巻いて隻眼となった帝国征夷派遣軍総帥紂謖(ちゅうしょく)は言い放った。

「御覧の通りだ! 湖鬼と通じた謀反人・須臾(しゅゆ)王子の成敗は(あけひ)王、御自らの御手によって為された!

 そして、それは取りも直さず今後、王が我等派遣軍──()いては島帝国に全面協力なさるという明白な意思表示である!

 明日以降、私、紂将軍は王の忠実なる股肱(ここう)となって、ここ沙嘴国における一切を(・・・)取り仕切る所存である。皆の者、これに異存は……ないな?」

 臣下諸官、一斉に玉座を仰ぎ見た。

 そこに陽王はいた。

 玉座も、その下の玉段も、後ろの壁も、天井に至るまで、凄まじい血飛沫──

 座している王自身が、また血塗れだった。

 王の顔貌は月のように白く、死人のように静寂。

 虚空に向けて見張られた双眸には何の感情も映ってはいない。

 抜け殻のごとく、ただそこに座っているだけの若き王だった。

 〈王の間〉の一隅には血の海の中に横たわる弟王子の(むくろ)が放置されていた。

 廷臣たちが視線を逸らせて、なんとか見まいと努めている、それ(・・)……

「では、おまえたちはもう下がれ!」

 紂謖はきっぱりと申し渡した。

「ここは──」

 と言って、〈王の間〉を眺め渡しながら醜悪な笑みを浮かべる。

「今夜一晩、何者も手をつけることを禁ずる」

 心の中で紂は続けた。

 我々帝国人の(・・・・・・)勝利の証に(・・・・・)

 そして、この俺様、帝国征夷大将軍紂謖(・・・・・・・・・)沙嘴国完全制圧・・・・・・・・の記念に(・・・・)……!

 この血を洗い流し、あの死体──美しい湖鬼め!──が取り片付けられる(あした)には、

 沙嘴国(ここ)は俺のものだ!


 〈王の間〉を退出する廷臣たちのヨロヨロと心許無(こころもとな)い列を見送った後、今一度、紂は玉座の沙嘴王に話しかけた。

「事実上そこに(・・・)座る最後の夜を心置きなく過ごさせてやるぞ、陽王? 我が盟友よ!

 せいぜいゆっくりと、水入らずで、弟を弔ってやるがいい。我々はこの血を肴に飲み明かすとしよう!」

 例の心身を凍らせる凶々(まがまが)しい笑い声とともに紂将軍と配下の将兵は去って行った。

 

 王は一言も発さなかった。

 その身に散華した弟の血を拭おうともせず、死のような沈黙の中、一人座している。

 


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